バーニーズマウンテンドッグのかかりやすい病気と寿命
バーニーズマウンテンドッグの平均寿命と短命な理由
バーニーズマウンテンドッグの平均寿命は6~8歳と、他の大型犬(10~12歳)と比較しても著しく短いことが知られています。アニコム「家庭どうぶつ白書2022」によると、犬全体の平均寿命が14.1歳であるのに対し、バーニーズマウンテンドッグの平均寿命は8.7歳となっています。
原産国のスイスには「生後3年で若犬、3年経過で成犬、その後3年で老犬、その先は神様の贈り物」という諺があるほど、この犬種の短命さは古くから知られていました。
短命な理由として以下が挙げられます。
- 体格の大きさによる内臓への負担:大型犬は体に対して臓器が小さく、日常生活での負担が大きい
- 細胞の老化スピードの早さ:負担の大きさが細胞の老化を早める
- 気候への適応困難:涼しい地域原産のため、日本の温暖な気候がストレスとなる
- 遺伝的要因:近親交配により遺伝的多様性が低い
興味深いことに、最高齢記録は25歳という個体も存在しており、適切な飼育環境と健康管理により寿命を延ばすことは可能です。
バーニーズマウンテンドッグの胃拡張・胃捻転症候群の危険性
胃拡張・胃捻転症候群(GDV)は、バーニーズマウンテンドッグにとって最も緊急性の高い病気の一つです。この病気は発症から数時間で死亡することもある危険な疾患で、大型犬に多く見られますが、バーニーズマウンテンドッグでは特に発症率が高いことが報告されています。
症状と特徴:
- お腹の異常な膨張
- 空嘔吐(吐こうとするが何も出ない)
- 大量のよだれ
- 落ち着きのなさ
- 呼吸困難
驚くべきことに、生後5か月という若齢での発症例も報告されており、子犬の時期から注意が必要です。通常は成犬以降に発症することが多いとされていましたが、この症例は獣医学界でも注目を集めました。
予防策:
- 食事を1日2~3回に分けて与える
- 食後2時間は激しい運動を避ける
- 早食い防止用の食器を使用する
- ストレスの軽減
バーニーズマウンテンドッグ専門犬舎の報告によると、この犬種では鼓腸による死亡率が異常に高く、手術や死亡率も他の犬種より高いという特徴があります。
バーニーズマウンテンドッグの悪性腫瘍(がん)の実態
バーニーズマウンテンドッグの死因の約60~70%を占めるのが悪性腫瘍(がん)です。この犬種は他の犬種と比較して、がんの発症率が異常に高いことが大きな問題となっています。
主要な悪性腫瘍:
組織球肉腫・悪性組織球症
- バーニーズマウンテンドッグの全体の25%を占める最も多いがん
- 急速に進行し、転移を起こす悪性度の高い腫瘍
- 播種性組織球肉腫の亜型である血球貪食性組織球肉腫は特に致死性が高い
- 皮膚腫瘍の約20%を占める
- 中高齢で発症することが多い
- 体幹部に多く発生し、発赤や腫脹を伴う
悪性リンパ腫
- リンパ系組織から発生する悪性腫瘍
- 高齢犬でよく遭遇する悪性腫瘍
- 血管内皮細胞の悪性腫瘍で、致死率が高い
近年の研究では、組織球肉腫に対してロムスチンという抗がん剤が効果を示すことが報告されており、早期発見・早期治療により比較的長期延命が可能になっています。
バーニーズマウンテンドッグの股関節形成不全と関節疾患
バーニーズマウンテンドッグは大型犬特有の関節疾患にかかりやすく、特に股関節形成不全の発症率が高いことが知られています。大型犬は短期間で身体が大きく育つため、成長期は骨の成長と筋肉形成のバランスが崩れて関節が不安定になりやすいリスクがあります。
股関節形成不全の症状:
- 足を引きずる歩行
- 痛みと関節の硬直
- バニーホッピング歩行(うさぎのような跳ねる歩き方)
- 活動性の低下
- 階段の昇降を嫌がる
その他の関節疾患:
- 肘関節形成不全:前肢の跛行や痛みを引き起こす
- 骨軟骨症(OCD):関節軟骨の発育異常
- 前十字靭帯断裂(ACL):膝関節の不安定性
興味深いことに、バーニーズマウンテンドッグの健康委員会の報告では、大半の犬が股関節や肘関節の検査を受けているにもかかわらず、これらの疾患の発症率が依然として高いという問題が指摘されています。これは遺伝的要因が強く関与していることを示唆しています。
予防と管理:
- 成長期の適切な栄養管理
- 過度な運動の制限
- 体重管理の徹底
- 定期的な関節検査
バーニーズマウンテンドッグの遺伝性疾患と意外な健康リスク
バーニーズマウンテンドッグには、一般的にはあまり知られていない遺伝性疾患が複数存在します。これらの疾患は飼い主にとって予想外の健康問題となることがあります。
フォン・ヴィレブランド病(VWD)
血液凝固に関わるフォン・ヴィレブランド因子の異常により、血が止まりにくくなる遺伝性疾患です。3つのタイプがあり、タイプ3は稀ですが重症度が高く、手術やケガの際に大量出血のリスクがあります。
症状:
- 歯茎や口からの出血
- 突発的な鼻血
- 女性犬のヒート時の過剰な出血
- 小さな傷の出血が長引く
進行性網膜萎縮(PRA)
目の網膜が徐々に萎縮し、最終的には失明に至る遺伝性疾患です。5歳で失明した症例も報告されており、早期発見が重要です。
バーニーズマウンテンドッグで多く見られる内分泌疾患で、代謝の低下により様々な症状を引き起こします。
麻酔に対する異常反応
この犬種特有の問題として、麻酔に対する拒否反応が他の犬種より多く報告されています。手術を行う際は、経験豊富な獣医師による慎重な麻酔管理が必要です。
肝葉捻転
非常に稀ですが、6か月齢のバーニーズマウンテンドッグで肝葉捻転の症例が報告されています。この症例では左外側肝葉と左内側肝葉の両方に捻転が発生し、緊急手術が必要となりました。
予防と対策:
- 遺伝子検査による事前スクリーニング
- 定期的な血液検査
- 眼科検査の実施
- 信頼できるブリーダーからの購入
バーニーズマウンテンドッグの健康管理には、これらの多様な疾患リスクを理解し、予防的なアプローチを取ることが不可欠です。定期的な健康診断と早期発見により、愛犬との時間を少しでも長く、質の高いものにすることができるでしょう。