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犬の変形性脊椎症症状から治療まで飼い主の完全ガイド

犬の変形性脊椎症とは

犬の変形性脊椎症の基本知識
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変形性脊椎症の概要

脊椎の骨に突起や架橋ができる病気で、神経や椎間板を圧迫することで症状が現れます

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発症の傾向

中高齢犬に多く見られ、特にジャーマン・シェパードなどの大型犬で発症率が高い傾向

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初期の特徴

多くの場合無症状で進行するため、定期的な健康チェックが重要です

犬の変形性脊椎症の基本的なメカニズム

変形性脊椎症は、脊椎を構成する椎骨に骨の突起(骨棘)や隣り合う骨同士を結ぶ架橋が形成される病気です。脊椎は首からしっぽまで30個以上の骨が連なって構成されており、これらの骨に変形が生じることで、椎間板や神経を圧迫し様々な症状を引き起こします。

この病気は強直性脊椎症脊椎外骨症変形性脊椎炎などとも呼ばれることがあります。骨の変形が進行すると、隣り合う椎骨の突起同士がくっついてブリッジ状態となり、脊椎の可動域が制限されてしまいます。

変形性脊椎症の特徴的な点は、初期段階では症状が現れないことが多いということです。多くの場合、検診時や他の疾患の検査時に偶然発見されることが一般的で、症状が出現した時にはすでに病気が進行している可能性があります。

犬の変形性脊椎症の主要な症状と進行段階

変形性脊椎症は段階的に症状が進行していきます。初期段階では無症状のことが多く、飼い主が気づかないうちに病気が進行していることがほとんどです。

中期段階になると、以下のような症状が現れ始めます。

  • 歩き方の異常(後ろ足がすり足になる)
  • 歩行時のふらつき
  • 抱き上げた時に嫌がる様子を見せる
  • 階段の上り下りを敬遠する
  • 腰を曲げた際の痛み

進行期では症状がより深刻になります。

  • 背中や腰部の持続的な痛み
  • 四肢の麻痺症状
  • 自力での立ち上がりが困難
  • 排泄困難

重症期に至ると、四肢が完全に動かせなくなり、呼吸機能の低下を引き起こすことがあります。この段階では生命に関わる状況となる可能性があるため、早期の発見と適切な治療が極めて重要です。

痛みのサインとしては、特に激しい運動後や寒い時期に背中を丸めたり、足を上げるなどの仕草が認められることが多いです。

犬の変形性脊椎症の原因と好発犬種

変形性脊椎症の原因は完全には解明されていませんが、複数の要因が関与していると考えられています。主な原因要因として以下が挙げられます:

加齢性要因

  • 加齢に伴う骨の不安定性
  • 椎間板への栄養を送る血管の減少
  • 骨質の低下と変性

物理的要因

  • 脊椎に対する繰り返される微小な外傷
  • 交通事故や段差の上り下りなどの強い衝撃
  • 過度な運動による脊椎への負担

体型・生活習慣要因

  • 肥満による脊椎への慢性的な負荷
  • 脊椎に負担のかかる姿勢の継続

遺伝的要因

特定の犬種で発症率が高いことが知られています。好発犬種として以下が報告されています。

これらの犬種では遺伝的素因により変形性脊椎症を発症しやすく、近年の研究では遺伝子変異が発症に関与していることも明らかになってきています。短足や短頭である犬種では、骨格の特徴により脊椎への負担がかかりやすいため、特に注意深い観察が必要です。

犬の変形性脊椎症の診断と検査方法

変形性脊椎症の診断には複数の検査を組み合わせて行います。診断プロセスは段階的に進められ、まず臨床症状の確認から始まります。

神経学的検査では、痛みや麻痺の確認のため、足や皮膚の反応・反射を詳しく調べます。具体的には足のつき方や歩き方の様子を観察し、神経系統の機能を評価します。

画像診断検査が診断の中核となります。

レントゲン検査

  • 骨の変形や脊椎間の隙間の確認
  • くちばし状に骨が伸びている所見の検出
  • 脊椎間の隙間が狭まっている場合は病気の悪化を示唆

CT検査

  • レントゲンでは投影できない脊椎や椎間板の詳細な状態確認
  • 変形した骨が椎間板や神経に触れているかの精密な評価
  • 三次元的な骨の変形状況の把握

血液検査は、背中の痛みを引き起こす他の疾患(感染症、炎症性疾患など)を除外するために実施されることがあります。この検査により、変形性脊椎症以外の病気を検出・排除することができます。

多くの症例では症状を示さないため、定期健康診断時やその他の疾患でのレントゲン検査時に偶然発見されることが一般的です。早期発見のためには、特に好発犬種や中高齢犬において定期的な画像検査を受けることが推奨されます。

犬の変形性脊椎症の治療選択肢と療法の実際

変形性脊椎症の治療は症状の程度や犬の年齢、体力を総合的に考慮して選択されます。治療の基本方針は完治を目指すのではなく、痛みの緩和と生活の質の向上です。

無症状または軽症例の管理

多くの症例では症状が出ないため、特別な治療は必要ありません。定期的な経過観察と生活環境の調整が中心となります。

内科的治療

症状がある場合の第一選択治療として以下が行われます。

  • 薬物療法
    • ステロイド剤による炎症と痛みの軽減
    • 鎮痛剤による疼痛管理
    • 症状に応じた用量調整
  • 理学療法
    • 適度な運動による筋力維持
    • 関節可動域訓練
    • 温熱療法による血行促進

    外科的治療

    外科的治療が必要になることは稀ですが、以下の条件で検討されます:

    • 若く体力のある犬
    • 骨の変形により強い痛みが継続する場合
    • 内科的治療で症状が改善しない場合

    手術の目的は痛みの原因となっている神経に触れている骨成分を取り除き、痛みを緩和することです。ただし、外科的手術は犬の身体に負担がかかるため、高齢や体力が落ちている犬には推奨されません。

    革新的治療法

    近年では、半導体レーザーによる低出力レーザー治療(LLLT)の臨床的有効性も研究されており、従来の治療法に加えて新しい選択肢も検討されています。

    日常管理における注意点

    治療と並行して、脊椎への負担を軽減する生活環境の整備が重要です。段差の解消、適切な抱き方の実践、体重管理などが症状の悪化防止に寄与します。