へそヘルニア 犬
へそヘルニア 犬 原因
犬のへそヘルニアは、胎児期に母犬の臍の緒とつながっていた部分が先天的な異常により閉じなかったことが主な原因です。この先天性の疾患は遺伝性が関与していると考えられており、特に小型犬には頻発する病気として知られています。
臍ヘルニアの発症メカニズムは、本来であれば出生後に閉じるべき臍輪(へその穴)が完全に閉じずに開いたままになってしまうことです。この開いた部分から腹腔内の脂肪組織や時には臓器が皮下に脱出し、おへその周りに膨らみを形成します。
先天性の原因以外にも、後天的な要因として事故などの強い衝撃が腹部に加わった際に、臍の部分の腹壁が開いてしまうケースも報告されています。しかし、これは比較的まれなケースで、大部分は生まれつきの先天性疾患として発症します。
遺伝的要因が強く関わっているため、ペキニーズやバセンジーなどの特定の犬種では発症率が高くなっています。また、避妊手術後の筋膜縫合が不十分な場合にも臍ヘルニアを引き起こす可能性があるため、手術時には注意深い縫合技術が求められます。
へそヘルニア 犬 症状診断
犬のへそヘルニアの症状は、ヘルニア内容物の種類と大きさによって大きく異なります。最も多く見られるのは脂肪組織の脱出で、この場合はほとんどが無症状です。
軽度な症状の特徴:
- おへその周りに柔らかい膨らみがある 📍
- 仰向けに寝ると突出が目立たなくなる
- 膨らみを軽く押すと腹腔内に戻る(還納性)
- 痛みや不快感はほとんどない
重篤な症状(嵌頓ヘルニア):
嵌頓ヘルニアとは、脱出した臓器が元の位置に戻れなくなった状態で、緊急性が高い危険な状態です。
- 激しい痛みを示す 🚨
- 食欲不振や嘔吐
- 膨らみが急に硬くなる
- 皮膚の色が変色する
- 腹部を触られるのを嫌がる
診断方法では、触診によりヘルニア内容物が腹腔内に戻るかどうかを確認することが基本です。押しても腹腔内に戻らない場合は嵌頓の可能性が高く、即座の処置が必要となります。
さらに詳しい診断のため、レントゲン検査や超音波検査などの画像診断により、ヘルニア内容物が脂肪組織か臓器かを判断していきます。特に超音波検査では、脱出した内容物の性質や血流状態まで詳細に観察できるため、治療方針の決定に重要な役割を果たします。
へそヘルニア 犬 手術治療法
犬のへそヘルニアの治療選択は、症状の有無、ヘルニアの大きさ、年齢などを総合的に判断して決定されます。
経過観察を選択するケース:
- 無症状で小さなヘルニア
- 脂肪組織のみの脱出
- 還納性がある(押すと戻る)
- 定期的なサイズチェックが可能
手術が推奨されるケース:
- 嵌頓ヘルニアの状態
- ヘルニアが大きく症状がある
- 臓器の脱出が確認されている
- 飼い主が希望する場合
最も推奨される治療タイミングは、避妊去勢手術と同時に整復手術を行うことです。これにより愛犬への麻酔負担を最小限に抑えることができ、費用面でも効率的です。
手術の詳細:
手術では、脱出した内容物を腹腔内に戻し、開いた臍輪を縫合により閉鎖します。ヘルニア内容物が臓器の場合は、損傷しないよう慎重な操作が求められます。
嵌頓ヘルニアの場合は緊急手術となり、血行が悪くなった組織の状態によっては切除が必要になることもあります。そのため、日頃から愛犬のおへその状態を観察し、異常を早期発見することが重要です。
手術後は適切な安静期間を設け、傷口の管理と感染予防に注意を払います。術後の経過は良好なケースが多く、再発率も適切な手術が行われれば低いとされています。
へそヘルニア 犬 費用予防
犬のへそヘルニア手術にかかる費用は、手術の規模や病院により大きく異なりますが、一般的に5万円から15万円程度が相場となっています。避妊去勢手術と同時に行う場合は、追加費用として2万円から5万円程度で済むケースが多く、経済的メリットが大きいです。
費用の内訳:
- 麻酔費用:2万円~4万円
- 手術費用:3万円~8万円
- 入院費(日帰り~1泊):5千円~1万円
- 術後検診・薬代:5千円~1万円
緊急手術が必要な嵌頓ヘルニアの場合は、夜間・休日料金や集中治療費が加算されるため、通常の2倍以上の費用がかかることもあります。そのため、早期の計画的手術が推奨されます。
予防とケア方法:
臍ヘルニアは先天性疾患のため完全な予防は困難ですが、早期発見と適切な管理により重篤化を防ぐことができます。
- 日常的なおへその観察 👀
- 定期的なサイズ測定と記録
- 激しい運動や腹圧のかかる行為を避ける
- 体重管理(肥満は腹圧を高める)
- かかりつけ獣医師との定期相談
特に子犬の時期から成長に伴うヘルニアサイズの変化を観察し、記録しておくことで、手術時期の適切な判断材料となります。
へそヘルニア 犬 合併症予後
犬のへそヘルニアで最も注意すべき合併症は嵌頓(かんとん)です。これは脱出した臓器がヘルニア輪で締め付けられ、血行が悪くなって壊死に至る可能性のある重篤な状態です。
嵌頓による合併症:
- 臓器の血行不良と壊死
- 腸閉塞(腸管が脱出した場合)
- 感染症の併発
- ショック状態
- 命に関わる緊急事態
嵌頓が起こると、これまで押せば戻っていた膨らみが固くなり、愛犬は激しい痛みを示します。この状態では6時間以内の緊急手術が推奨され、遅れると臓器の切除が必要になることもあります。
長期的な予後:
適切な時期に手術を受けた場合の予後は非常に良好です。再発率は5%未満と低く、術後の生活の質への影響もほとんどありません。
一方、放置したり手術を先延ばしにしたりすると、以下のリスクが高まります。
- ヘルニアサイズの拡大
- 嵌頓リスクの増加
- 手術の複雑化
- 術後合併症の増加
意外な合併症として注目すべき点:
最近の研究では、臍ヘルニアを持つ犬は他の先天性異常も併発している可能性が指摘されています。心疾患や泌尿器系の異常との関連も報告されており、包括的な健康チェックが重要とされています。
また、臍ヘルニアの手術創から稀に感染が起こり、腹膜炎を併発するケースも報告されています。そのため、術後の創傷管理と感染予防対策は非常に重要です。
定期的な健康診断により、これらの合併症や関連疾患の早期発見・早期治療が可能となり、愛犬の健康寿命の延伸につながります。