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犬乳腺炎症状治療原因予防方法解説

犬乳腺炎の症状治療と原因

犬の乳腺炎の基礎知識
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症状の特徴

乳腺の腫れ、熱感、痛み、黄色い乳汁の排出など

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主な治療法

抗生物質投与、冷湿布による対症療法、重症時は外科的処置

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予防のポイント

避妊手術の実施、授乳環境の清潔保持、定期的なチェック

犬乳腺炎の主要症状と早期発見のサイン

犬の乳腺炎は、主に未避妊のメス犬で発症する疾患です。最も顕著な症状として、乳腺の異常なまでのハリ発赤触って熱っぽい感覚があります。

初期段階では以下の症状が現れます。

  • 乳腺の腫れと硬結(こうけつ:固くなること)
  • 乳頭から黄色身を帯びた乳汁の排泄
  • 患部の熱感と痛み
  • 乳腺周辺を触ろうとすると嫌がる行動

症状が進行すると、全身の発熱食欲低下などの全身症状が現れます。さらに重篤化すると、乳腺の炎症が広がり化膿し、皮膚や皮下組織が壊死する可能性もあります。

興味深いことに、乳腺炎は授乳期だけでなく、偽妊娠中にも発症することがあります。偽妊娠とは、ヒートが終わった後1〜2ヶ月ほどすると、実際に妊娠していないにもかかわらず、ホルモンバランスの変化により妊娠しているのと同じようなホルモンの状態になることです。

犬乳腺炎の根本原因と発症メカニズム

犬の乳腺炎には主に2つの発症原因があります。

授乳中の細菌感染による乳腺炎

最も一般的な原因は、授乳期における子犬の歯や爪による傷から起こる細菌感染です。子犬が母犬のおっぱいを飲むときに噛み付いたり、おっぱいを出そうと引っ掻いたりすることで、小さな傷がつき、そこから細菌が侵入します。

また、乳汁の過剰分泌による目詰まりや、子犬が急に離乳した場合の乳汁滞留も原因となります。特に、離乳期の管理が不適切だと、一定の場所に乳汁が滞留し、細菌の温床となってしまいます。

偽妊娠によるホルモン性乳腺炎

未避妊のメス犬では、発情後に偽妊娠という現象が起こることがあります。この時期には、実際の妊娠と同様にホルモンの影響で乳腺が発達し、乳汁分泌が始まります。この状態で乳腺に炎症が起こりやすくなります。

偽妊娠による乳腺炎は、発情のたびに繰り返す傾向があり、シニア犬になるほど重症化するリスクが高まります。

犬乳腺炎の効果的な治療法と家庭ケア

乳腺炎の治療は、症状の程度により段階的に行われます。

軽度の乳腺炎治療

軽度の場合、抗菌薬(抗生物質)の投与がメインとなります。細菌感染が関与している場合は抗生剤を、細菌の関与がない場合は消炎剤などを投与します。

授乳中の子犬がいる場合、使用できる抗生剤の種類は限られるため、新生子に影響のない抗菌薬が選択されたり、場合によっては母犬から離して代用乳で育てる必要があります。

対症療法と家庭でのケア

炎症部位の冷湿布による冷却は、血液の流入量を減らし、炎症を軽減する効果があります。保冷剤や湿布、濡れタオルなどで患部を冷やすことが推奨されます。

ただし、傷口からの感染による乳腺炎の場合、保冷剤やタオルなどはしっかりときれいなものを使用することが重要です。

重度の乳腺炎に対する外科的治療

膿瘍の形成や壊疽が起こっているような重度な乳腺炎では、外科的な切開による排膿が必要となります。ときには乳房の全摘出が必要となることもあります。

この場合、麻酔をかけた状態での処置になるため、費用も通常よりもかかる可能性が高くなります。

犬乳腺炎の予防方法と避妊手術の重要性

乳腺炎の最も効果的な予防方法は避妊手術です。

避妊手術による予防効果

性ホルモンの影響を受けておらず発達していない乳腺にはほとんど発症しないため、避妊手術を受けることが発症の予防につながります。特に、偽妊娠による乳腺炎は、発情のたびに繰り返す傾向があるため、出産の予定がない場合は早めに避妊手術を行うことが推奨されます。

授乳期における予防対策

授乳中の乳腺炎を予防するためには、以下の対策が重要です。

  • 子犬の爪の定期的なカット:爪が伸びていると母犬の乳腺を傷つけやすくなります
  • 離乳の適切な管理:離乳の時期には適切な食事を子犬に与え、確実に離乳させることが大切です
  • 授乳環境の清潔保持:部屋の中や授乳する場所を清潔に保つことで細菌感染のリスクを減らします

早期発見のための定期チェック

一度乳腺炎になった犬は、その後の妊娠や発情時にも繰り返す可能性が高いため、定期的なチェックが重要です。自宅での腹部の定期的なチェックや、動物病院での定期的な健康診断を受けることが推奨されます。

乳腺炎はヒート後に発症するため、早期に発見するにはヒートの時期を把握しておくことが大切です。

犬乳腺炎治療における意外な注意点と長期管理

乳腺炎治療において、多くの飼い主が見落としがちな重要なポイントがあります。

抗菌薬選択時の薬剤感受性試験

授乳中ではない場合、抗菌薬の選択には乳汁中の細菌による薬剤感受性試験をおこなうことが推奨されています。これは一般的にはあまり知られていない検査ですが、最も効果的な抗生物質を選択するために重要な検査です。

治療期間の個体差と継続の重要性

抗菌薬の投与は、臨床徴候が消失するまでおこなわれますが、この期間は個体により大きく異なります。症状が改善したからといって自己判断で治療を中断すると、再発や耐性菌の発生リスクが高まります。

偽妊娠による乳腺炎の特殊性

偽妊娠による乳腺炎では、犬がぬいぐるみなどを大切に世話したり、巣作り行動をするなど、実際に子犬がいるような行動をとります。この行動的変化も乳腺炎のサインとして重要な指標となります。

年齢による重症化リスク

乳腺炎はシニアになればなるほど重症化するリスクがある病気です。若い犬では軽度で済むことが多いですが、高齢犬では重篤な合併症を引き起こす可能性が高くなるため、特に注意深い観察が必要です。

治療費用の実際

乳腺炎の治療費用は症状の程度により大きく異なりますが、軽度の場合でも数千円から数万円、外科的処置が必要な場合は十数万円に及ぶことがあります。特に、麻酔下での処置や入院が必要になると費用が大幅に増加するため、早期発見・早期治療の経済的メリットも大きいといえます。

犬の乳腺炎は、適切な知識と予防策により十分に管理可能な疾患です。愛犬の健康を守るために、日頃からの観察と定期的な健康チェックを心がけましょう。