PR

赤血球多い犬の多血症症状と原因治療法

赤血球多い犬の多血症

赤血球多い犬の多血症
🩸

血液中の赤血球増加

正常値を超えて赤血球数が増加した状態で、血液粘度上昇により各種症状が現れる

⚠️

神経症状と出血傾向

痙攣、意識障害、起立困難などの神経症状や鼻出血、血便などの出血症状

🏥

原因特定と治療

脱水による相対的多血症と真性多血症の鑑別診断後、適切な治療法を選択

多血症は、犬の血液中に含まれる赤血球数が正常範囲を大幅に超えて増加している状態です。赤血球の主要な働きは全身の組織や細胞に酸素を運搬することですが、赤血球が過剰に増加すると血液の粘度が高まり、血流障害を引き起こして様々な健康問題が発生します。

多血症は別名「赤血球増加症」とも呼ばれ、循環する血液中の赤血球数が何らかの原因により異常に増加した病気です。血液が濃くなって粘り気が強くなるため、毛細血管における血行障害が発生し、全身の臓器に悪影響を及ぼす可能性があります。

この病気は初期段階では症状が現れにくく、犬の体内で赤血球数が徐々に上昇していても飼い主が気づかない場合が多いのが特徴です。しかし、症状が現れるころには既に危険域に達していることも少なくありません。

赤血球多い症状の特徴

多血症における主要な症状は多岐にわたり、特に神経系への影響が顕著に現れます。痙攣、意識障害、起立困難などの神経症状が代表的で、これらは血液の粘度増加により脳血流に障害が生じることが原因です。

出血傾向も重要な症状の一つで、歯茎が真っ赤になったり、鼻出血、血尿、血便、吐血などが観察されます。これは血液の凝固性が高まることで血管壁に負担がかかり、微細な出血が生じるためです。

その他の症状として以下が挙げられます。

  • 粘膜の充血(特に歯茎や結膜部分)
  • うまく歩けない、動けない状態
  • ぐったりとした様子
  • 失神発作
  • 元気消失
  • よく水を飲み、尿量が増加
  • 嘔吐や下痢

特徴的なのは肉球の色の変化で、赤紫のような色になる紅斑が認められる場合もあります。これは末梢血管の血流障害により酸素供給が不十分になることで起こります。

赤血球多い原因の分類

多血症の原因は大きく二つのカテゴリーに分類されます。相対的多血症と絶対的多血症(実際の赤血球数増加)です。

相対的多血症は、赤血球の数自体は正常でも、体内の水分量が減少することで相対的に赤血球の濃度が高くなる状態です。主な原因は脱水、嘔吐、下痢などで、血液検査で総タンパク濃度を調べることで絶対的多血症と区別されます。

絶対的多血症は実際に赤血球数が増加している状態で、さらに真性多血症と二次性多血症に細分化されます。

真性多血症では、骨髄内の造血幹細胞が自律的に増殖し、赤血球産生量が異常に増加します。これは慢性的な骨髄疾患の一種で、犬では比較的まれな疾患とされています。

二次性多血症は他の疾患により引き起こされる多血症で、以下のような原因があります:

  • 心臓機能異常による低酸素症(慢性肺疾患、動脈管開存症、心室中隔欠損など)
  • 腎臓疾患(腎嚢胞、水腎症、腎盂腎炎、腎臓腫瘍など)
  • 骨髄増殖性疾患
  • その他(甲状腺機能亢進症、猫伝染性腹膜炎、リンパ腫など)

赤血球多い検査診断方法

多血症の診断には包括的な検査アプローチが必要です。最初に血液検査を実施し、赤血球数、ヘマトクリット値、ヘモグロビン濃度などの赤血球系の全項目を評価します。

相対的多血症と絶対的多血症の鑑別には、血液検査での総タンパク濃度測定が有効です。相対的多血症では脱水により総タンパク濃度も上昇しますが、絶対的多血症では通常変化しません。

さらに詳細な診断には以下の検査が実施されます:

  • X線検査(心臓・肺・腹部)
  • 超音波検査(心臓・腎臓・腹部臓器)
  • 尿検査
  • CT検査・MRI検査
  • 必要に応じて心電図検査やホルモン検査

エリスロポエチン測定は特に重要で、この血液成分を調べることで続発性赤血球増加症か原発性赤血球増加症かを鑑別することができます。エリスロポエチンは腎臓から分泌されるホルモンで、骨髄での赤血球産生を刺激する作用があります。

個体差を考慮した診断も大切で、健康診断などでその犬の正常値を把握しておくと、異常の早期発見が可能になります。

赤血球多い治療方法の選択

多血症の治療法は原因に応じて選択されます。緊急性がある場合は、酸素吸入や輸液療法により状態を安定させることから始まります。

相対的多血症の治療では、脱水の改善が最優先となります。点滴による輸液療法を行い、体内の水分バランスを正常に戻すことで赤血球濃度を下げることができます。

真性多血症の治療では、瀉血(しゃけつ)が主要な治療法となります。瀉血は一定量の血液を採取して廃棄することで、循環血液中の赤血球数を直接的に減少させる治療法です。速やかな症状改善が期待できる効果的な治療法です。

薬物療法では、ヒドロキシカルバミドという骨髄抑制剤を使用して赤血球の産生を抑制します。ただし、血小板減少などの副作用が生じる可能性があるため、定期的な血液検査による経過観察が必要です。

二次性多血症の治療では、基礎疾患の治療が最も重要です。心臓疾患が原因の場合は心臓治療を、腎臓疾患が原因の場合は腎臓治療を優先して行います。

エリスロポエチン産生腫瘍が原因の場合、腫瘍摘出手術が根本的な治療となります。特に腎臓腫瘍の場合、摘出により多血症の改善が期待できます。手術費用は検査や入院費を含めて最低でも10~15万円以上が必要とされています。

赤血球多い日常管理と予防

多血症の予防には定期的な健康管理が欠かせません。赤血球数の増加による多血症には直接的な予防方法がないため、早期発見が重要な対策となります。

症状が現れるのは赤血球数がかなり増加し、危険域に達してからであることが多いため、定期的な血液検査による健康診断が効果的です。年1回~2回の血液検査を実施することで、異常の早期発見が可能になります。

特に以下の症状に注意深く観察することが重要です。

  • 粘膜(歯茎や舌)の色の変化
  • 鼻出血の頻度増加
  • 血尿や血便の有無
  • 多飲多尿の傾向
  • 肉球の色の変化

慢性的な基礎疾患を持つ犬では、より頻繁な検査が推奨されます。心臓病や腎臓病の既往がある場合は、3~6ヶ月ごとの定期検査により二次性多血症の早期発見が可能です。

治療中の犬では、継続的な血液モニタリングが必要です。瀉血治療を受けている場合は、赤血球数の推移を定期的に確認し、治療頻度を調整します。薬物療法中の犬では、副作用の早期発見のために月1回程度の血液検査が望ましいとされています。

飼い主による日常的な観察も重要で、犬の行動や食欲、運動能力の変化に敏感になることで、症状の悪化を早期に察知できます。気になる症状がある場合は、すぐに動物病院での相談を受けることが推奨されます。

治療費の観点では、初診での診断・検査・薬物療法を含めて8,000円~10,000円前後が一般的です。継続的な治療が必要な場合は、月数万円の費用がかかることもあるため、ペット保険の加入も検討材料の一つとなります。