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脊髄空洞症犬に見られる症状と原因治療予防

脊髄空洞症犬に見られる症状と原因治療予防

犬の脊髄空洞症とは
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脊髄内に空洞ができる疾患

脊髄の内部に脳脊髄液が過剰に溜まることで神経組織を圧迫し、様々な神経症状を引き起こします。

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小型犬に多発

キャバリア・キング・チャールズ・スパニエルやチワワ、プードルなどの小型犬に多く見られる疾患です。

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進行性の病気

症状は時間とともに進行する可能性があり、継続的な治療と経過観察が必要となります。

脊髄空洞症犬の特徴的な症状と行動変化

脊髄空洞症を発症した犬には、特徴的な症状が現れます。最も代表的なのが頸部の疼痛や知覚過敏で、これは空洞内に溜まった脳脊髄液が脊髄を圧迫することで生じます。

特に注目すべき症状として「Phantom scratching(幻の引っ掻き)」があります。これは皮膚病変がないにも関わらず、首周辺を空中で引っ掻くような動作を継続的に行う行動です。多くの飼い主が皮膚病と勘違いしがちですが、実際は神経症状の一つです。

🔸 主な症状一覧

  • 突然鳴く、立ち上がる際に痛がる
  • 抱き上げられることを嫌がる
  • 音に敏感になる
  • 首や体を頻繁に掻く仕草
  • ふらつき、歩行異常
  • 前肢の虚弱や筋萎縮

軽度の場合は症状が目立たないことも多く、別の検査でMRIを撮影した際に偶然発見されるケースも少なくありません。一方で重度になると、四肢の麻痺により動けなくなったり、側弯症を発症することもあります。

脊髄空洞症犬の原因疾患と発症メカニズム

脊髄空洞症の発症メカニズムは脳脊髄液の循環動態の変化が主要因とされています。完全には解明されていませんが、様々な要因により脳脊髄液の正常な循環が阻害され、脊髄内に液体を貯留する空洞が形成されます。

先天性要因として最も多いのがキアリ様奇形です。これは後頭骨の奇形により小脳の尾側部分が大後頭孔に突出する状態で、頭頚部接合部での脳脊髄液循環が障害されます。キャバリア・キング・チャールズ・スパニエルの95%が多かれ少なかれ後頭骨の発育不全を有しているという報告もあります。

🔹 原因となる疾患

  • キアリ様奇形(後頭骨形成不全)
  • 水頭症
  • 尾側後頭部奇形症候群(COMS)
  • 脊髄損傷(後天性)
  • 脊髄腫瘍(後天性)

興味深いことに、キャバリア以外でもチワワ、ポメラニアン、ヨークシャーテリア、マルチーズ、パグなどの小型犬種で多発します。これは小型犬特有の頭蓋骨構造が関係していると考えられています。

脊髄空洞症犬のMRI診断と検査方法

脊髄空洞症の確定診断にはMRI検査が必須です。この検査により、脳脊髄液が溜まった部分が空洞として明確に描出されます。

診断プロセスは段階的に進められます。まず、他の疾患の可能性を除外するためX線検査やCT検査を実施し、その後MRI検査で脊髄空洞症の確定診断を行います。MRI検査では空洞の大きさ、位置、併発疾患の有無も同時に評価できます。

🔍 診断で重要なポイント

  • 空洞の大きさと位置の特定
  • キアリ様奇形の併発確認
  • 水頭症などの関連疾患検査
  • 症状の重篤度評価

診断においては、類似した症状を示す他の疾患との鑑別も重要です。特に皮膚疾患、頸椎疾患、てんかんなどとの区別が必要で、専門的な知識を持つ獣医師による総合的な判断が求められます。

脊髄空洞症犬の内科的治療法と薬物療法

脊髄空洞症の治療は症状の重篤度により選択されます。軽度から中等度の症状では内科的治療が第一選択となります。

薬物療法では主に以下の薬剤が使用されます。

  • 利尿薬:空洞内の水分生成を抑制
  • ステロイド剤:脊髄の炎症を抑制
  • 鎮痛剤:疼痛管理
  • 神経保護薬:神経組織の保護

💊 治療薬の特徴

薬剤種類 作用機序 期待効果
フロセミド 脳脊髄液産生抑制 空洞拡大防止
プレドニゾロン 抗炎症作用 疼痛軽減
ガバペンチン 神経性疼痛緩和 異痛症改善

興味深い治療法として、鍼治療の併用も報告されています。従来のステロイド治療に加えて鍼治療を継続することで、症状の改善が見られた症例があります。これは東洋医学的アプローチとして注目される治療選択肢の一つです。

内科治療では定期的な経過観察が不可欠で、症状の進行度に応じて治療プランの調整が必要です。

脊髄空洞症犬の外科手術と予防管理法

内科治療で症状がコントロールできない場合や、重篤な症状を示す場合には外科手術が検討されます。

主な手術方法には以下があります。

  • シャント設置術:空洞内の液体を体外に排出
  • 大後頭孔拡大術:キアリ様奇形に対する根本治療
  • 後頭下減圧術:脳脊髄液の循環改善

🏥 手術適応の判断基準

  • 内科治療に反応しない重度の疼痛
  • 神経機能の著しい低下
  • 進行性の四肢麻痺
  • 生活の質の著しい低下

予防管理については、脊髄空洞症は多くの要因が関与する複雑な疾患のため、特定の予防法は確立されていません。しかし、以下の取り組みが重要です:

  • 定期健康診断による早期発見
  • 遺伝的要因を考慮した繁殖制限
  • 好発犬種の注意深い観察
  • 症状の早期認識と迅速な受診

好発犬種では、無症状であっても定期的なMRI検査による早期発見が推奨されます。また、脊髄空洞症は進行性疾患であるため、診断後は継続的な治療と経過観察が生涯にわたって必要となります。

飼い主にとって重要なのは、愛犬の微細な行動変化を見逃さないことです。特に頸部の痛みや異常な引っ掻き行動が見られた場合は、皮膚病と決めつけずに神経疾患の可能性も考慮し、専門的な診断を受けることが愛犬の健康を守る鍵となります。