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根尖膿瘍犬の症状と治療方法完全ガイド

根尖膿瘍犬とは

根尖膿瘍犬の基本知識
🦷

歯根周辺の細菌感染

歯の根っこ周辺に膿が溜まる病気で、歯根膿瘍とも呼ばれます

📈

中高齢犬に多発

特に高齢の小型犬に頻繁に見られる歯科疾患です

⚠️

進行性の疾患

放置すると顎骨の骨折や敗血症など深刻な合併症を引き起こします

根尖膿瘍は、歯の根っこ(根尖部)周辺に細菌感染が起こり、膿が溜まってしまう疾患です。歯根膿瘍、根尖性周囲炎などの呼び方もあり、犬では比較的よく見られる疾患とされています。

この病気は歯周病が進行した病態で、歯石が重度に付着して歯周病になっている犬によくみられ、特に中高齢犬に多い疾患です。病変が歯根部にあるため、進行してからでないと気がつくことが難しい病気で、飼い主が異変に気づいたときには既にかなり進行していることが多いのが特徴です。

犬では人間と違い虫歯は少ないとされていますが、根尖膿瘍は高齢のわんちゃん(特に小型犬)に非常に多い病気として知られています。放置すると顎の骨が溶けて巨大な口腔鼻腔瘻を形成したり、重度の感染から敗血症を引き起こしたりと、命に関わる可能性もあります。

根尖膿瘍犬の初期症状と進行段階

根尖膿瘍の初期症状は、痛みから硬いものを食べたがらなくなる、片方の顎ばかりで噛む、食べにくそうにするなどの症状がみられます。

初期段階の症状:

  • フードを食べにくそうにする
  • よだれが増える
  • 口臭が強くなる
  • 噛み方の異常(片方の顎で噛もうとする仕草)
  • 食欲不振

進行段階の症状:

  • 眼の下や頬の腫れ
  • 鼻汁や鼻血
  • 頻繁なくしゃみ
  • 歯のグラつき

根尖膿瘍の初期段階では、外見の変化は無く触診でもわからず、歯科X線検査でなければ診断することは難しいとされています。進行してくると頬(特に目の下)が腫れる、膿瘍部分の頬の皮膚が破れて血や膿が出るといった症状が現れます。

根尖膿瘍の好発部位である目の下付近の上顎第四前臼歯では、進行すると顔の腫れがみられ、腫れは軽度のこともありますが、大きく膨らんだり、膿瘍部分の頬の皮膚が破けて、皮膚から腐敗臭を伴う膿が排出されたりします。

根尖膿瘍犬の原因と発症メカニズム

犬の根尖膿瘍の原因で一番多いのは、歯周病の悪化によるものです。歯周病では、歯垢の中の細菌が原因となり歯肉が腫れたり(歯肉炎)、歯を支えている歯周組織が破壊(歯周炎)されたりします。

主な原因:

  • 歯周病の進行
  • 歯の破折(骨、ひづめ、プラスチック、ケージなどの硬いものを咬むことで発生)
  • 歯髄の外傷による損傷
  • 歯の咬耗

歯根膿瘍の原因は歯髄の壊死であるとされています。歯の内部には神経や血管がありますが、これを歯髄と呼びます。歯髄壊死の原因は、歯が割れたり折れたりすることである破折、外傷による歯髄損傷、咬耗などが挙げられ、破折部から細菌が侵入します。

歯石中には大量の細菌が存在しており、炎症部位の粘膜から血管にその細菌が入り込み、血液を介して根尖部に細菌感染が広がり、歯槽骨が溶け、膿瘍が形成されたものが根尖膿瘍です。

根尖膿瘍犬の診断方法と検査

まずは視診で病変部や口内の状態を診察し、歯石の付き具合や、口臭の程度、歯や口の周りの腫れと炎症を注意深く観察します。

診断の流れ:

  1. 視診による初期検査
    • 患部の症状観察
    • 歯や口の周りの腫れ・炎症確認
    • 口臭や悪臭のチェック
    • 歯ぐきからの膿や血の排出確認
  2. 歯科レントゲン検査
    • 根尖膿瘍は歯の根っこで起きているため、確定診断には麻酔下での歯科用レントゲン撮影が必要
    • 歯根の詳細な評価のために実施
  3. 追加検査
    • 歯髄採取や根管治療の評価
    • 状況に応じた詳細な検査

多くは歯周病の進行具合や病変部の状態からおおむね診断できますが、原因が歯石の付着による炎症や歯茎の炎症など詳細な検査が必要になるような場合には、鎮静をかけた上で口腔内のレントゲンを撮影し治療方針を決めていきます。

根尖膿瘍犬の治療方法と抜歯手術

根尖膿瘍の根本治療は、麻酔下で原因となる歯の抜歯など歯科処置を行うことです。歯を温存するためには根管治療、外科的根管切除などの方法がありますが、抜歯が選択されるケースが多いと言えます。

基本的な治療法:

  • 抜歯手術:根本的な治療として最も有効
  • 抗生剤投与:感染のコントロール
  • 消炎剤投与:炎症の抑制
  • 歯石除去(スケーリング):同時実施される場合が多い

歯瘻が見られる場合は、歯根周辺の化膿巣が大きいため抜歯が適応になります。抜歯後、必要に応じて抗生物質や消炎剤を投与し、そのまま1回の麻酔下で歯石除去も同時に実施します。

内科治療の選択肢:

高齢で麻酔がかけられないなど外科的療法が難しい場合、抗生物質や消炎剤などの投与による内科的療法を行うこともあります。ただし、長期間の抗生物質の投与は、耐性菌を発生させることになるため注意が必要で、内科治療は感染や腫脹を改善させるためで根本的な治療ではないため、一時的で再発する可能性があります。

根尖膿瘍は抗生剤の投与だけで一時的に収まることも多いですが、繰り返し再発するため、根本的な解決には抜歯が必要です。

根尖膿瘍犬の予防とホームケアの重要性

根尖膿瘍は歯周病が重度に進行したものです。日々のデンタルケアにより、極力歯石がつかないようにすることが最も重要な予防法です。

効果的な予防方法:

  • 毎日のブラッシング:歯垢を蓄積させないことが基本
  • 定期的な歯科検診:早期発見・早期治療
  • 硬いおもちゃの制限:歯の破折予防
  • 適切な食事管理:口腔環境の改善

中高齢になった時に歯周病にならないよう、子犬や子猫の頃から歯を磨く習慣をつけることが予防につながります。また、歯の破折を防ぐために、硬い玩具やおやつを与えないことも予防の一つです。

ホームケアのポイント:

歯根膿瘍の原因の多くは破折であると言えますので、破折を起こさない生活を送ることが重要です。硬いものを犬に与えることで歯が綺麗になるわけではありませんので、硬過ぎるおもちゃを与えない、ケージを咬まないように教える、などの方法は歯根膿瘍の予防につながります。

破折や歯の変色が見られた場合、歯根膿瘍の初期の状態である可能性があるため、早めに動物病院に相談しましょう。どうしても歯みがきができない子や、歯みがきしていても歯石がついてきてしまう子は、高齢になって麻酔のリスクを抱える前に一度歯石除去を受けておくとよいでしょう。

スケーリング、ポリッシング後は毎日のブラッシングを行わないと、短期間で元のように歯石が付くので、注意が必要です。