除去食と犬のアレルギー対策
除去食試験の基本的な仕組みと期間
除去食試験は、犬の食物アレルギー診断において最も信頼性の高い方法とされています 。この試験では、アレルギーの原因として疑われる食材を完全に除去した特別な食事を8週間継続し、皮膚症状や消化器症状の改善を観察します 。
参考)https://www.hash-hugq.com/dog/article/detail/id=6099
除去食試験で重要なのは、犬が口にするものを厳格に管理することです 。処方された療法食と水以外は、おやつ、人の食べ物、味付きのデンタルケア製品、サプリメントも全て中止する必要があります 。家族全員の協力が不可欠で、子供がお菓子を与えたり、散歩中に落ちている食べ物を拾い食いしないよう注意深く管理することが求められます 。
参考)【獣医執筆】犬のアレルギーの種類や症状、治療方法について|楽…
除去食試験の成功率は高く、適切に実施された場合、80%以上の犬で症状改善が期待できると報告されています 。ただし、実際の臨床現場では、飼い主のコンプライアンス不足により、理想的な結果が得られないケースも多く見られます 。
参考)犬の食物アレルギーを理解する:診断と治療ガイド – My F…
除去食に使用される新奇タンパク質の選択
新奇タンパク質とは、犬がこれまでに食べたことがない珍しいタンパク源のことです 。一般的なドッグフードで使用されるチキンやビーフではなく、カンガルー、ダチョウ、鹿肉、ダック、ワニなどが新奇タンパク質として活用されます 。
新奇タンパク質の最大のメリットは、犬の免疫系がそのタンパク質に対する抗体を持っていないため、アレルギー反応を起こす可能性が低いことです 。例えば、ラム肉は20年前には斬新なタンパク源とされていましたが、現在では一般的なペットフードの食材となったため、ラム肉にアレルギーを持つ犬も増加しています 。
参考)【獣医師監修】食物アレルギーに悩む犬にオススメの新奇タンパク…
新奇タンパク質を使用した療法食は、単一のタンパク源と単一の炭水化物源で構成されることが多く、アレルゲンの特定を容易にします 。市販されている新奇タンパク質フードには、「ニシンとサツマイモ」「ダックとポテト」「サーモンとポテト」などの組み合わせがあります 。
参考)除去食試験に使用されるフード href=”https://www.meguriah.jp/2239/” target=”_blank”>https://www.meguriah.jp/2239/amp;#8211; 【早朝7時から…
除去食における加水分解タンパク質の役割
加水分解タンパク質は、タンパク質を酵素の力でアミノ酸やペプチドレベルまで細かく分解したものです 。この処理により、アレルギーの主な原因となるタンパク質の構造が破壊され、免疫系がアレルゲンとして認識できなくなるため、アレルギー反応が起こりにくくなります 。
参考)https://www.pochi.co.jp/ext/magazine/2019/11/what-is-hydrolysis20191122.html
加水分解処理は、犬の体内で行われる消化過程とほぼ同じ反応を事前に行うことを意味します 。通常、犬が食べた食べ物は消化管内で胃酸や消化酵素によってアミノ酸まで分解されてから吸収されますが、加水分解フードではこの過程を製造段階で完了させています 。
日本で市販されている加水分解タンパク質を使用した療法食には、「サニメド犬用ハイドロライズドプロテイン」「VetLife皮膚ケア加水分解フード」「ピュリナプロプランベテリナリーダイエット犬用療法食HA食物アレルゲンケア」などがあります 。これらの製品は、加水分解により消化率90%以上を実現し、アレルギー反応のリスクを大幅に軽減しています 。
参考)https://www.eduward.jp/wp3/wp-content/uploads/2022/09/b27c3259fb812d4be1ac62f6f9d8a0a4.pdf
除去食試験後の食物負荷試験と管理
除去食試験で症状が改善した後は、食物負荷試験(チャレンジテスト)を実施してアレルゲンを特定します 。この試験では、以前与えていた食事や疑わしい食材を少量ずつ与えて、症状が再発するかどうかを確認します 。
参考)食事が鍵?犬猫の皮膚トラブルと食事療法(アレルギー対応フード…
食物負荷試験の実施率は実際には低く、ある調査では再負荷試験を行った飼い主は全体のわずか10%でした 。しかし、この試験を実施することで、犬が食べられる食材の幅を広げることが可能になります 。負荷試験では2週間ごとに1つの食材を試し、症状が出なければその食材は安全と判断できます 。
参考)[文献:犬] 犬の食物アレルギー除去試験の実態~理想と現実の…
症状の再発時期は個体差があり、24時間以内に症状が出る場合が12.5%、1〜3日後が37.5%、4〜7日後が25%、8〜14日後が25%という報告があります 。このデータは、負荷試験を実施する際の観察期間設定の参考になります。
除去食の最新研究と効果的な選択方法
2024年の最新研究では、フリーズドライ製法で作られたドッグフードがアレルギー性皮膚疾患の犬に有用であることが確認されました 。この製法では、タンパク質の消化率が高くなり、腸内環境の悪化が抑えられるため、腸のバリア機能向上と免疫系バランスの改善が期待できます 。
参考)https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000001291.000017666.html
近年の研究では、腸内環境とアレルギー症状の関連性が注目されています 。腸内環境が改善されることで、腸のバリア機能が高まり、免疫系のバランスが改善して過剰な反応が抑制されることが明らかになっています 。
日本における犬の食物アレルギー検査結果に関する2年間の考察によると、伝統的に除去食には羊肉と米が使用されることが多いとされていますが、近年はより多様な選択肢が利用できるようになっています 。市販の除去食試験用フードは、サニメド、VetLife、ピュリナプロプラン、ヒルズなど複数のメーカーから提供されており、それぞれ異なる新奇タンパク質や加水分解タンパク質を使用しています 。
参考)https://www.jstage.jst.go.jp/article/jpan/17/Suppl/17_37/_pdf
除去食を選択する際は、犬の既往歴を詳しく確認し、これまでに摂取したことのないタンパク源を選ぶことが重要です 。また、獣医師による栄養評価と継続的な管理が不可欠で、症状の改善が見られない場合は、別の新奇タンパク質を使用した除去食への変更を検討する必要があります 。