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好酸球と犬の健康に関する疾患と治療法

好酸球と犬の健康状態について

犬の好酸球に関する基礎知識
🩺

好酸球の基本的な役割

寄生虫やアレルギーから体を守る重要な免疫細胞

⚠️

好酸球増多の主な原因

アレルギー疾患、寄生虫感染、腫瘍性疾患

🔍

診断から治療まで

血液検査、生検、適切な治療法の選択

犬の好酸球の基本的な機能と正常値

好酸球は血液中の白血球の一種で、犬の免疫システムにおいて重要な役割を果たしています 。細胞質内に赤い顆粒を多く含むことが特徴的で、主に寄生虫感染やアレルギー反応に対する防御機能を担っています 。

参考)PCAP 好酸球について語りたい。

犬の血液中における好酸球の正常値は0.0~7.0 x10²/μLとされており、全白血球数に占める割合は0.0~8.4%程度です 。好酸球数が500/μLを超える場合、好酸球増多症と診断されることが一般的です 。

参考)好酸球増多 – 11. 血液学および腫瘍学 – MSDマニュ…

好酸球は以下のような状況で増加します。

逆に好酸球が減少する場合は、副腎皮質ホルモンの過剰分泌(クッシング症候群)やステロイド治療中に見られることが多く、免疫機能の低下を示唆している可能性があります 。

好酸球増多を引き起こす犬の主要疾患

犬において好酸球増多を引き起こす疾患は多岐にわたりますが、最も頻度が高いのはアレルギー性疾患と寄生虫感染です 。

参考)犬・猫の好酸球性皮膚炎 ◆皮膚科◆ 川崎市幸区・中原区・川崎…

アレルギー性疾患では、以下のような病気が代表的です。

  • ノミアレルギー性皮膚炎:ノミの唾液に対するアレルギー反応
  • 食物アレルギー:特定の食材に対する過敏反応
  • アトピー性皮膚炎:環境アレルゲンに対する慢性的なアレルギー反応
  • 蚊アレルギー:蚊の唾液成分に対するアレルギー

寄生虫感染では、組織に侵入する寄生虫で特に好酸球増多が顕著に現れます。回虫、鉤虫、ダニなどの感染時に血液検査で好酸球の著明な増加が確認されることがあります 。
腫瘍性疾患の中では、肥満細胞腫が最も好酸球増多と関連が深い疾患です 。肥満細胞腫は犬の皮膚腫瘍の中でも発生頻度が高く、腫瘍細胞から放出される化学物質により好酸球の局所的な集積や全身の好酸球増多を引き起こします。
また、好酸球性胃腸炎も重要な疾患の一つです。慢性的な嘔吐や下痢を主訴とし、内視鏡検査により胃腸粘膜への好酸球浸潤が確認される疾患で、アレルギー性の機序が関与していると考えられています 。

参考)こんな病気を治療しています|葉山どうぶつ病院

好酸球性皮膚炎の症状と診断方法

好酸球性皮膚炎は、犬の皮膚に好酸球が集積することで生じる炎症性疾患です 。主な症状として、強いかゆみ、皮膚の赤み、舐めすぎによる脱毛や色素沈着が挙げられます 。

参考)千葉県佐倉市の若山動物病院です。今回は好酸球性皮膚炎について…

典型的な症状の分布

  • 腹部、わき、耳周辺に好発
  • 口の周りにも病変が現れることがある
  • 皮膚にしこりのような腫れが見られる場合もある

診断には複数のアプローチが必要です。まず血液検査で好酸球数を確認し、皮膚掻爬検査で寄生虫の有無を調べます 。皮膚スタンプ標本では表面の細菌や炎症細胞の存在を確認できますが、確定診断には皮膚生検が必要です 。

参考)https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjvd/17/3/17_3_177/_pdf

病理組織検査では、角層下および真皮への多数の好酸球浸潤が特徴的所見となります 。ただし、細菌の二次感染を併発している場合もあるため、細菌培養検査も並行して実施することが重要です。
興味深いことに、末梢血中の好酸球数は必ずしも高値を示さない場合もあります。犬では猫と異なり、好酸球性腸炎でも末梢血中の好酸球増加があまり起こらないことが報告されています 。このため、局所の組織検査が診断において極めて重要な役割を果たします。

参考)https://nihon.matsu.net/nf_folder/nf_mametisiki/nf_dog/nf_dog_kousan_chou.html

好酸球関連疾患の治療戦略と予後

好酸球関連疾患の治療は、原因疾患に応じた根本的治療と症状緩和を目的とした対症療法を組み合わせて行います 。

原因別の治療アプローチ

寄生虫感染の場合は、適切な駆虫薬の投与が最も重要です。ノミ・ダニ予防薬の定期的な使用や、内部寄生虫に対する駆虫薬の投与により、多くの症例で好酸球数の正常化が期待できます 。
アレルギー性疾患では、まず原因となるアレルゲンの特定と除去が基本となります。食物アレルギーが疑われる場合は低アレルギー食への変更、環境アレルゲンが原因の場合は生活環境の改善を行います 。

薬物療法

好酸球性胃腸炎の治療では、厳密な食事療法が不可欠です。症状が軽度であれば食事療法と対症療法のみで改善することもありますが、重度の場合はステロイド剤や免疫抑制剤の長期投与が必要になることがあります 。
治療経過と予後は原因疾患により大きく異なります。寄生虫感染や明確なアレルゲンが特定できる症例では良好な予後が期待できますが、原因不明の特発性好酸球増多症では治療に難渋する場合もあります 。

治療効果の判定には、臨床症状の改善と並行して血液検査による好酸球数のモニタリングが重要です。また、皮膚病変の場合は組織学的な改善の確認も治療効果の評価に有用とされています。

好酸球異常の早期発見と予防管理のポイント

好酸球関連疾患の早期発見には、日常的な健康観察と定期的な血液検査が重要です 。特に以下の症状が見られた場合は、速やかに獣医師の診察を受けることを推奨します。

注意すべき症状

  • 持続する皮膚のかゆみや赤み
  • 慢性的な嘔吐や下痢
  • 食欲不振や体重減少
  • 異常な疲労感や活動性の低下

定期的な血液検査では、好酸球数だけでなく、他の白血球分画や生化学的パラメータも併せて評価することが重要です 。好酸球数が500/μLを超える場合や、正常範囲内でも継続的に上昇傾向にある場合は、さらなる精密検査が必要になることがあります。

予防管理の実践的アプローチ

寄生虫予防:月1回のノミ・ダニ予防薬の投与と年2-4回の内部寄生虫検査を実施することで、寄生虫による好酸球増多を効果的に予防できます 。

アレルギー管理:既知のアレルゲンがある場合は徹底的に除去し、新たなアレルゲンの導入時は慎重に行います。食事変更時は2-3週間かけて段階的に移行し、皮膚症状や消化器症状の変化を注意深く観察します。

生活環境の最適化:室内の清掃を定期的に行い、ハウスダストやカビの除去を心がけます。また、ストレスも免疫システムに影響を与えるため、適度な運動と規則正しい生活リズムの維持も重要です。

興味深い知見として、最近の研究では酸化ストレスと好酸球増多の関連性が示唆されています 。抗酸化サプリメントの適切な使用や、酸化ストレスを軽減する食事内容の選択も、好酸球関連疾患の予防に有効である可能性があります。

参考)https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC5697175/

治療中の症例では、薬物療法の副作用モニタリングも欠かせません。特にステロイド長期投与時は、定期的な血液検査により肝機能や血糖値の変化を監視し、適切な投与量の調整を行う必要があります 。