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外耳道と犬の健康管理について

外耳道と犬の健康管理

外耳道と犬の健康管理
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外耳道の構造と特徴

犬の外耳道はL字型の独特な構造で、人間とは大きく異なる形状をしています

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外耳炎の症状と診断

耳のかゆみや異臭、耳垢の増加など、早期発見につながる症状を理解しましょう

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治療と予防対策

適切な治療法と日頃のケアで愛犬の耳の健康を維持する方法をご紹介します

外耳道の構造と犬特有の解剖学的特徴

犬の外耳道は人間とは大きく異なる構造をしており、耳の入り口から鼓膜まで真っ直ぐに伸びる人間とは違い、L字型に折れ曲がった独特な形状をしています 。この外耳道は垂直耳道と水平耳道の2つの部分に分かれており、垂直耳道は耳の穴から縦方向に下に向かって伸び、その後約75度の角度で横方向に曲がって水平耳道となり、最終的に鼓膜に到達します 。
外耳道の長さは一般的に3~7cmで、太さは犬種により異なりますが、この複雑な構造により通気性が悪く、湿度が高い環境が作られやすくなっています 。また、外耳道の表面は耳介から続く皮膚で覆われており、皮脂腺や耳垢腺などの分泌腺を含んでいるため、これらの分泌物と古い角質が混合したものが耳垢となります 。
この独特な構造は音を効率的に鼓膜に伝える役割がある一方で、細菌や真菌が増殖しやすい環境を作り出すため、外耳炎の発症リスクを高める要因となっています 。

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外耳道の炎症症状と診断方法

外耳炎の最も代表的な症状は耳のかゆみで、犬が頻繁に後ろ足で耳を掻いたり、床に耳をこすりつけたり、頭を振る行動が観察されます 。さらに、耳の変化として赤みや腫れ、独特のニオイ、耳垢や分泌物の増加、耳周辺の脱毛などが見られることもあります 。

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症状が進行すると、悪臭を伴った茶色から黒色の耳垢が外耳道にベッタリと付着し、マラセチア菌による感染では特に「ツーン」という酸っぱい匂いが特徴的です 。また、痛みが強い場合は耳や体を触られることを嫌がるようになり、攻撃的になることもあります 。

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動物病院での診断では、まず耳鏡を使用して外耳道を観察し、耳垢の検査により寄生虫や細菌、真菌の感染状況を確認します 。より詳細な検査が必要な場合は、オトスコープと呼ばれる内視鏡を用いて鼓膜付近まで詳しく観察し、場合によっては血液検査やホルモン検査、アレルギー検査なども実施されます 。

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外耳道内視鏡による診断と治療

オトスコープ(外耳道内視鏡)は、従来の手持ち耳鏡では困難だった外耳道の詳細な観察と治療を可能にする画期的な機器です 。この内視鏡を使用することで、耳道内をより鮮明に観察でき、映像をモニターに映し出すことで獣医師だけでなく飼い主も状態を確認することができます 。

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オトスコープの大きな利点は、映像を見ながら耳道内の洗浄や治療ができることで、特に汚れが毛に絡みついて通常の洗浄では除去が困難な場合でも、モニターを見ながら細かい部分まで確実に洗浄することができます 。また、植物の種子などの異物や耳道内ポリープの発見と除去、鼓膜の状態確認など、従来の診断法では限界があった検査や治療も可能になります 。

参考)オトスコープ(耳内視鏡)

さらに、鼓膜の穿孔の有無を正確に判別できるため、中耳炎の診断精度が向上し、適切な薬剤選択が可能になるという重要な利点もあります 。ただし、全身麻酔が必要になるというデメリットがある一方で、痛みや恐怖を感じやすい犬にとっては、麻酔下で徹底的な治療を行えることはメリットでもあります 。

外耳道の細菌と真菌感染の特徴

犬の外耳炎で最も多く分離される細菌は黄色ブドウ球菌属(Staphylococcus spp.)で、その中でもStaphylococcus pseudintermediusが特に多く見られます 。また、緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)も慢性外耳炎でよく分離され、この細菌は抗菌薬に対する耐性を示すことが多く、治療を困難にする要因となっています 。

参考)https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC10673570/

真菌感染では、Malassezia pachydermatisが最も頻繁に分離される酵母様真菌で、犬の皮膚や耳に常在していますが、免疫力の低下や環境の変化により異常増殖を起こします 。マラセチア感染は独特の酸っぱい匂いを発し、茶色から黒色の粘性のある耳垢が特徴的です 。

参考)https://www.mdpi.com/2076-2615/14/5/742/pdf?version=1709108647

これらの微生物は単独ではなく、複数の種類が混合感染を起こすことが多く、研究によると外耳炎症例の47%で多剤耐性細菌が確認されています 。また、これらの病原体はバイオフィルムを形成することが多く、バイオフィルム内の細菌は通常の抗菌薬に対して高い耐性を示すため、慢性化の原因となります 。

参考)https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC11874812/

外耳道ケアと予防対策の実践方法

外耳炎の予防において最も重要なのは、外耳道内の湿った環境を避けることです 。シャンプーや水遊びの後は必ず耳の中に水が残らないよう注意し、タオルで優しく水分を拭き取ることが大切です 。特に梅雨や夏場などの高温多湿な時期は、マラセチア菌などの真菌が繁殖しやすいため、より注意深いケアが必要になります 。
自宅での耳掃除は、見える範囲の耳介部分のみを対象とし、コットンにイヤークリーナーを染み込ませて優しく拭き取る程度に留めることが推奨されます 。綿棒の使用は耳垢を奥に押し込んだり、外耳道を傷つけるリスクがあるため避けるべきです 。
耳道内の洗浄が必要な場合は、イヤークリーナーを耳の穴に適量入れ、耳の付け根を優しくマッサージした後、犬が頭を振って洗浄液と汚れを排出させる方法が効果的です 。ただし、炎症がひどい場合や初めて行う場合は、事前に獣医師に相談することが重要です 。定期的な獣医師による耳のチェックと、飼い主による日常的な観察を組み合わせることで、外耳炎の早期発見と予防が可能になります 。

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