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肥大型心筋症と犬の健康管理ガイド

肥大型心筋症の犬への影響

肥大型心筋症の特徴と影響
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犬では稀な疾患

肥大型心筋症は猫で最も多い心疾患ですが、犬では数えられるほどしか報告がない稀な疾患です

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心筋の異常肥厚

左心室の壁が異常に分厚くなり、血液を全身にうまく送ることができなくなる状態です

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突然死のリスク

無症状で進行することが多く、突然死として発見される症例も報告されています

肥大型心筋症の基本的な病態メカニズム

肥大型心筋症は、心臓の筋肉(心筋)が何らかの原因により異常に厚くなってしまうことで、心臓がうまく機能しなくなる病気です。心筋が過剰に肥大することで心室が硬くなり、心臓が拡張しづらくなります。また、心臓の内腔が狭くなるため、弁や冠動脈などへの血液の流入を阻害し、不整脈を引き起こす場合もあります。
犬の心筋症は拡張型と肥大型に大きく分けられ、犬では拡張型心筋症が主となります。肥大型心筋症は猫で最もよく見られる心疾患ですが、犬での発生はまれで、数えられるくらいの報告しかないほど珍しい疾患とされています。なお、犬の心疾患全体では僧帽弁閉鎖不全症が最も多くみられる心疾患です。

肥大型心筋症の犬における症状と病期進行

肥大型心筋症の初期では多くが無症状ですが、進行すると様々な症状が現れます。犬でも人と同様に、この病気の約30-50%の症例は病院への来院時に無症状であるという報告があります。症状が現れた時にはすでに病態がかなり進行した状態である可能性が高いため注意が必要です。

参考)心筋症

具体的な症状としては、元気消失、食欲低下、運動を嫌がる、すぐに疲れるといった症状がみられます。重症化すると、循環不全や呼吸困難の症状があらわれ、虚脱や失神、突然死などを起こす恐れがあります。また、心筋への血液供給がうまくいかなくなると心筋虚血という状態に陥り、不整脈を引き起こします。
症状を示さない例や、全身麻酔などがきっかけで突然死し初めて発見される例、また、大きなきっかけのない突然死後の解剖で発見される例なども報告されています。

肥大型心筋症の犬における原因と遺伝的要因

犬の肥大型心筋症の原因は、はっきりとした原因はわかっていませんが、遺伝的な関与が疑われています。犬での発生はまれですが、過去にはドーベルマンやジャーマン・シェパード・ドッグでの発生が報告されており、これらの犬種では遺伝的な関与が疑われています。
肥大型心筋症は3歳以下の雄犬で発見されることが多いといわれていますが、高齢の犬でもみられ、発症年齢は幅広いとされています。若齢から中年齢の大型犬で診断されることが多いですが、様々な年齢で起こり得ます。
猫の肥大型心筋症では、メインクーンやアメリカン・ショートヘア、ラグドールなどの特定品種に多いことが知られており、犬でも同様に品種特異性がある可能性が示唆されています。また、甲状腺機能亢進症や高血圧といった内分泌疾患が原因で肥大型心筋症が引き起こされることもあります。

参考)犬と猫の心筋症|咳や呼吸困難の原因は?心筋症かも – アルフ…

肥大型心筋症の犬における診断と検査方法

肥大型心筋症の診断には様々な検査が必要です。身体検査では体温の低下や頻脈、早い呼吸などがみられることがあり、聴診では、どこかの弁の動きが妨げられていると心雑音が聴取されます。また、肺の音が粗く聴取される場合もあります。
最も重要なのは心エコー検査で、左心室の壁が異常に厚いことと、左心房の拡張がみられることがこの病気の特徴的な所見です。心筋壁の厚みが5.5~6.0mm以上で肥大型心筋症と診断されます。また、僧帽弁や大動脈弁などの動きが障害されていないかも確認します。

参考)心臓病

レントゲン検査では左心房や左心室の拡大がみられ、肺水腫の有無も確認します。心電図検査では不整脈の有無を確認し、血液検査や血圧測定なども行います。左室肥大を起こすほかの原因(先天性心疾患、大動脈狭窄症、高血圧性腎疾患、甲状腺機能亢進症など)を除外することも重要です。

肥大型心筋症の犬における治療薬と管理方法

肥大型心筋症は根治が難しい病気で、心臓のポンプ機能の改善と肺水腫・不整脈を防ぐことを目標に治療を行います。犬では稀な疾患であるため、治療方法は確立されておらず、猫の治療方法に準じて行われます。

参考)犬の肥大型心筋症【獣医師執筆】犬の病気辞典

主な治療薬として、心拍数をコントロールする目的でβ遮断薬(アテノロールやカルベジロールなど)を使用します。これらの薬は過剰な心機能を抑える働きがあります。また、カルシウムチャネル拮抗薬(ジアルチアゼム塩酸塩など)も血圧を下げる目的で使用されますが、不整脈がある場合には注意が必要です。
うっ血性心不全の兆候がある場合には、利尿薬やACE阻害薬などの血管拡張薬を使用します。急性期の症例では、胸水貯留に対して侵襲に耐えられる場合は胸腔穿刺での抜去を第1選択とし、肺水腫に対しては利尿剤を用います。心臓の収縮力が低下している場合や血圧が低下している場合はカテコラミン製剤を用い、経口投与が可能な場合はピモベンダンを用いることもあります。
運動制限が必要で、なるべく心臓に負担がかからないように興奮させないよう注意が必要です。また、塩分の高い食事やおやつは控える必要があります。

参考)肥大型心筋症 – 秦野市の動物病院『みかん動物病院』|質の高…