PR

肺動脈と犬の狭窄症の症状・治療

肺動脈と犬の病気について

犬の肺動脈疾患の基礎知識
❤️

肺動脈の役割

心臓の右心室から肺へと血液を送り、酸素交換を担う重要な血管です

🩺

主な疾患

肺動脈狭窄症と肺高血圧症が代表的な病気として知られています

⚠️

早期発見の重要性

症状が現れる前に定期的な健診で心雑音をチェックすることが大切です


犬の肺動脈に関わる疾患は、心臓から肺への血液循環に深刻な影響を与える病気群です 。肺動脈は右心室から肺へと血液を送り出す重要な血管で、この血管に何らかの異常が生じることで、犬の健康状態に様々な問題が発生します 。

参考)肺動脈狭窄症|ペット保険のFPC

肺動脈疾患の中でも最も重要なのが、先天性の肺動脈狭窄症と、様々な原因で発症する肺高血圧症です 。これらの疾患は単独で発症することもあれば、他の心疾患に併発することも多く、早期発見と適切な治療が愛犬の生活の質を左右する重要な要因となります 。

参考)犬の肺高血圧症とは?5つの原因別タイプと症状・治療法を解説 …

多くの場合、初期段階では明確な症状が現れないため、定期的な聴診による心雑音のチェックが疾患発見の重要な手がかりとなります 。特に好発犬種では、子犬の時期から注意深い観察が必要です 。

参考)犬の肺動脈弁狭窄症|横浜市戸塚区の動物病院|ぬのかわ犬猫病院

肺動脈狭窄症の症状と原因

肺動脈狭窄症は、犬の先天性心疾患の中で20-32%を占める非常に頻度の高い疾患です 。この病気は心臓の右心室から肺動脈にかけての血液の流れ道が生まれつき狭くなっている状態で、狭窄の程度によって症状の重篤度が大きく変わります 。

参考)犬の肺動脈弁狭窄症(PS)

軽度から中程度の狭窄では、多くの犬が無症状で過ごすことができます 。しかし、重度の狭窄になると以下のような症状が現れます:

参考)犬の肺動脈狭窄症【獣医師執筆】犬の病気辞典

  • 運動不耐性(すぐに疲れてしまう)
  • 呼吸困難や息切れ
  • 失神発作
  • 咳の症状
  • チアノーゼ(舌や歯茎が青紫色になる)

特に注意が必要なのは、重度の肺動脈狭窄症では突然死のリスクが高まることです 。右心室が肥大し、三尖弁逆流を合併すると、病状は急速に悪化する可能性があります 。
好発犬種としては、チワワポメラニアン、ヨークシャーテリアなどの小型犬種、フレンチブルドッグやイングリッシュブルドッグなどの短頭種、さらにビーグル、ミニチュアシュナウザーサモエド、マスチフなど多岐にわたります 。

肺動脈における犬の肺高血圧症の分類

肺高血圧症は肺動脈圧が異常に高くなる状態の総称で、その原因によって5つのタイプに分類されます 。この分類システムは治療方針を決定する上で極めて重要な要素となります。

第1群:肺動脈性肺高血圧症(PAH)

肺動脈自体の構造や機能異常が原因となるタイプで、フィラリア症による血管障害が代表的な原因です 。呼吸困難、咳、チアノーゼ、重度の場合は失神などの症状が現れます。

第2群:左心疾患由来の肺高血圧症

犬で最も多いタイプで、僧帽弁閉鎖不全症や拡張型心筋症などの左心系疾患が原因となります 。特に夜間や運動時の咳、呼吸困難、運動を嫌がるなどの症状が特徴的です。

第3群:呼吸器疾患・低酸素性肺高血圧症

慢性気管支炎や肺線維症、短頭種気道症候群などの呼吸器疾患により、慢性的な低酸素状態が肺血管収縮を引き起こします 。ゼーゼー、ヒューヒューという異常呼吸音や長引く咳が特徴です。

第4群:血栓・血管閉塞性肺高血圧症

肺血管に血栓が詰まることで血流が阻害されるタイプで、突然の呼吸困難やショック症状を呈することがあります 。

参考)トイプードルの肺高血圧症の一例|リバティ神戸動物病院

第5群:多因子性・不明原因の肺高血圧症

複数の要因が絡み合っている場合や原因が特定できないケースで、高齢犬でよく見られます 。

肺動脈疾患の診断と検査方法

肺動脈疾患の診断は、複数の検査を組み合わせて総合的に判断します。最初の手がかりとなるのは聴診による心雑音の発見で、多くの場合、定期健診や他の症状での受診時に偶然発見されます 。

聴診検査

心基底部で収縮期雑音を聴取することが診断の出発点となります 。心雑音の強度は通常、Levine分類で評価され、3/6以上の雑音では精密検査が推奨されます。

胸部レントゲン検査

心拡大の評価において重要な検査です 。肺動脈狭窄症では右心室肥大による「逆D像」と呼ばれる特徴的な心臓の形状変化が観察されます。VHS(胸骨心臓サイズ)の測定により、心拡大の程度を数値化できます。

心臓超音波検査(心エコー)

最も重要な確定診断法で、狭窄部位の特定、狭窄の程度、右心室肥大の評価が可能です 。ドプラ検査により肺動脈の血流速度を測定し、右心室-肺動脈間の圧較差を算出します。圧較差40mmHg以下を軽度、40-80mmHgを中程度、80mmHg以上を重度と分類します 。

血液検査

肺高血圧症が疑われる場合、血栓傾向を評価するためにFDP、Dダイマー、TATなどの凝固系マーカーを測定します 。これらの値が高値を示す場合、血栓性肺高血圧症の可能性が示唆されます。

CT検査やMRI検査

複雑な解剖学的異常や冠動脈走行異常の評価が必要な場合に実施されることがあります 。特に外科的治療を検討する際の術前評価として重要な情報を提供します。

肺動脈治療における薬物療法の選択

肺動脈疾患の治療は、病気の種類と重症度に応じて内科的治療、インターベンション治療、外科的治療を適切に選択します。薬物療法は多くの症例で第一選択となる重要な治療法です 。

参考)肺動脈狭窄症

血管拡張薬

シルデナフィル(PDE5阻害薬)は肺血管拡張薬として広く使用されています 。cGMPの分解を阻害することで血管平滑筋細胞を弛緩させ、肺動脈の血管拡張作用をもたらします。ただし、僧帽弁閉鎖不全症に合併した肺高血圧症では、左心室流入血液量が増加して心不全が悪化する可能性があるため慎重な使用が必要です 。

強心薬

ピモベンダンは心筋収縮力を改善し、血管拡張作用も持つため、心不全を伴う症例で有効です 。特に左心疾患由来の肺高血圧症では、ACE阻害薬と組み合わせて使用されることが多くあります 。

参考)お知らせ|ぶんペットクリニック【公式】

利尿薬

フロセミドなどの利尿薬は、肺うっ血や胸水・腹水の管理に使用されます 。右心不全症状が現れた場合の対症療法として重要な役割を果たします。

抗不整脈薬

右心室肥大に伴って不整脈が発生する場合があり、突然死のリスクを軽減するため抗不整脈薬が投与されます 。特に重度の肺動脈狭窄症では予防的投与が検討されることもあります。

抗凝固薬

血栓性肺高血圧症の場合、ヘパリンやワルファリンなどの抗凝固薬が使用されます 。血栓の形成を抑制し、既存の血栓の拡大を防ぐ効果があります。
治療効果のモニタリングは定期的な心エコー検査により行われ、肺動脈圧の変化や心機能の改善度を評価します 。症状の改善とともに、客観的な数値での治療効果判定が重要です。

犬の肺動脈疾患における生活管理と予後

肺動脈疾患を患う犬の生活管理は、病気の進行を遅らせ、生活の質を維持する上で極めて重要です。適切な管理により、多くの犬が良好な生活を送ることが可能になります。

運動制限の重要性

重度の肺動脈狭窄症や肺高血圧症では、激しい運動により失神や突然死のリスクが高まるため、運動制限が必要です 。ただし、完全な安静は筋力低下を招くため、獣医師の指導の下で適度な散歩などの軽い運動は継続します。運動中に呼吸困難や疲労感が強く現れた場合は、すぐに休憩を取ることが大切です。

環境管理

高温多湿の環境は呼吸困難を悪化させるため、夏場のエアコン管理や涼しい時間帯での散歩が推奨されます 。また、興奮やストレスも症状を悪化させる要因となるため、静かで落ち着いた環境を整えることが重要です。

体重管理

肥満は心臓への負担を増加させるため、適正体重の維持が不可欠です。心疾患用の療法食を使用し、カロリー制限を行いながら必要な栄養素を確保します。定期的な体重測定により、体重変化を早期に把握することが大切です。

定期的な健康チェック

症状の変化を早期に発見するため、飼い主による日常的な観察が重要です 。安静時の呼吸数(1分間に40回を超えると危険)のチェック、咳の頻度や性質の変化、食欲や活動性の変化などを記録します。

予後について

軽度の肺動脈狭窄症では、適切な管理下で正常に近い寿命を期待できます 。一方、重度の症例や肺高血圧症を合併している場合は、治療にもかかわらず予後が厳しいことがあります 。早期診断と適切な治療により、症状の改善や生存期間の延長が期待できるため、定期的な専門医でのフォローアップが不可欠です。

飼い主との密な連携により、愛犬の微細な変化を見逃さず、適切なタイミングで治療調整を行うことが、肺動脈疾患を患う犬の生活の質向上につながります。