脱水状態の犬で見逃せない症状と対処法

脱水状態の犬の症状と対処

脱水状態の犬で現れる特徴的な症状

脱水状態の犬には複数の特徴的な症状が現れます。最も重要な症状は皮膚の弾力低下で、これはツルゴールテスト（皮膚つまみテスト）で確認できます。健康な犬の場合、首の後ろの皮膚をつまんで離すと1秒以内に元の状態に戻りますが、脱水している犬では2秒以上かかります。

参考）https://life.oricon.co.jp/rank_pet/special/dog-disease/dehydration/

体重の急激な減少も脱水状態を示す重要なサインです。体内の水分が失われると、1日で急激に体重が減少することがあり、これは脱水の可能性が高いため注意が必要です。また、飲水量の変化も観察すべき症状で、脱水を起こすと水分不足を補おうとして普段より多くの水を欲しがることがあります。

参考）犬の脱水症状｜原因や見分け方、水を摂取させるための工夫を解説…

尿の変化も脱水状態の重要な指標となります。脱水すると腎臓が水分を保持しようとするため、尿の量が減り色が濃くなります。これは体内の水分バランスが崩れている証拠であり、早期の対処が求められます。

脱水状態の犬の原因と背景疾患

犬の脱水状態には様々な原因があります。最も一般的なのは嘔吐や下痢による体液の過剰な喪失で、これらの症状により水分だけでなく重要な電解質も失われます。また、暑い環境での熱中症や長時間の日光浴も脱水の主要な原因となります。

参考）犬の脱水症状はなぜ起こる？ 脱水症の原因と対処法｜いぬのきも…

慢性的な疾患も脱水状態を引き起こす重要な要因です。腎臓病では大量の尿が排出されて水分が失われ、飲水量が追いつかずに軽度の脱水を起こすことがあります。糖尿病やアジソン病（副腎皮質機能低下症）なども脱水症状を引き起こす可能性があります。

参考）犬の脱水症状の原因とは？病院に連れて行くべき症状を獣医師が解…

高齢犬では特に注意が必要で、自発的な水分摂取量が減少し、無自覚に脱水してしまうことがあります。加齢による生理的変化で、水分代謝の調節機能が低下し、アクアポリン（水チャネル蛋白）の発現変化や電解質バランスの異常が生じることが研究で明らかになっています。

参考）https://www.mdpi.com/2073-4409/14/7/545

脱水状態の犬への水分補給と電解質管理

脱水状態の犬に対する水分補給は段階的に行う必要があります。軽度の脱水では、清潔な水を少量ずつ頻繁に与えることから始めます。犬が自力で水を飲める場合は容器に水を入れて与え、ぐったりしている場合はスポイトなどで少量ずつ口に流し込みます。

参考）犬の脱水症状への対処法とは？原因や注意すべき症状について解説…

電解質の補給も重要な要素です。脱水では水分だけでなくナトリウムやカリウムといった電解質も失われるため、動物用経口補水液の使用が効果的です。ただし、心臓や腎臓に疾患を持つ犬では、電解質の過剰摂取により臓器に負担がかかる可能性があるため、必ず獣医師に相談してから使用する必要があります。

参考）犬にとって脱水症状は危険？原因や治療、予防方法とは – CO…

食事からの水分摂取も有効な方法です。ドライフードをぬるま湯でふやかしたり、鶏肉や野菜の煮汁をかけたりすることで、自然に水分を摂取させることができます。ウェットフードへの切り替えも水分摂取量を増やす効果的な方法とされています。

参考）犬が水を飲まない原因とは？病院に連れて行くべき症状を獣医師が…

脱水状態の犬への動物病院での治療法

重度の脱水状態では動物病院での専門的な治療が不可欠です。血液検査と尿検査により脱水の程度と原因疾患を特定し、適切な治療方針を決定します。これらの検査により、電解質のバランスや腎機能、基礎疾患の有無を詳細に評価できます。

参考）【獣医師が解説】犬の脱水症状とは？すぐ気づいてほしいサインと…

治療は脱水の程度に応じて選択されます。軽度から中等度の脱水では皮下点滴による水分・電解質の補給が行われ、重度の脱水やショック状態では静脈点滴による集中的な治療が必要となります。点滴の種類と量は、個々の症状と脱水の程度に基づいて獣医師が慎重に決定します。

参考）犬の脱水症状と水分補給｜ヒルズペット

継続的な監視も治療の重要な要素です。点滴治療中は定期的に血液検査を実施し、電解質バランスと腎機能の改善を確認します。重篤なケースでは入院による24時間監視下での治療が行われ、体温管理や循環状態の維持も並行して実施されます。

参考）https://www.jstage.jst.go.jp/article/dobutsurinshoigaku/22/4/22_125/_pdf

脱水状態の犬の予防と日常管理

脱水症状の予防には日常的な環境整備が最も重要です。新鮮な水を複数箇所に設置し、犬がいつでも水分補給できる環境を維持することが基本となります。特にシニア犬の場合は、一日の大半を過ごす場所それぞれに水を用意し、飲みやすい高さに調整することが推奨されます。

参考）愛犬が水を飲まない…水分不足を防ぐ工夫をご紹介

季節に応じた対策も欠かせません。夏場は室内温度の適切な管理とエアコンや扇風機の活用が必要で、散歩時は涼しい時間帯を選び、携帯用給水容器を持参することが大切です。冬場でも暖房器具の近くに長時間いると脱水のリスクが高まるため注意が必要です。

参考）【獣医執筆】犬の熱中症対策とは？症状、応急処置についても解説…

定期的な健康チェックも予防の重要な要素です。家庭では皮膚つまみテストを定期的に実施し、元気な時の基準値を把握しておくことで、わずかな変化も早期に発見できます。また、動物病院での定期健診により、腎臓病や糖尿病などの基礎疾患を早期に発見し、脱水のリスクを軽減することが可能です。

参考）脱水について

脱水状態の犬に対する応急処置と注意点

脱水症状が疑われる場合の応急処置では、まず安全な環境への移動が最優先です。熱中症が原因と考えられる場合は、涼しい場所に移動させ、体温を下げるための冷却処置を開始します。具体的には、冷水または室温の水で体を濡らし、蒸発冷却により体温を効果的に下げることができます。

参考）犬の熱中症 対策症状治療【獣医師執筆】 名古屋夜間救急動物病…

水分補給は慎重に行う必要があります。意識がある犬には少量ずつ水を与えますが、意識レベルが低下している場合は無理に水を飲ませないことが重要です。誤嚥のリスクがあるため、このような状態では直ちに動物病院への搬送を優先します。

参考）熱中症 – ダクタリ動物病院 東京医療センター

動物病院への連絡と搬送準備も同時に進めます。病院に事前連絡し、犬の症状と応急処置の内容を伝えることで、到着後の迅速な治療開始が可能になります。搬送中も体温管理を継続し、可能であれば体重や症状の変化を記録しておくと、診療時の参考情報として役立ちます。