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巨核球と犬の血液検査結果について

巨核球と犬の血液検査

巨核球と犬の血液検査の基本知識
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巨核球とは何か

血小板の母細胞で、骨髄で血小板を産生する重要な細胞

血液検査での意義

出血傾向や血液疾患の診断に重要な指標

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病気との関連

白血病や血小板減少症の診断に活用される検査項目

巨核球の基本的な役割と機能

巨核球は犬の骨髄に存在する特殊な細胞で、血液中の血小板を産生する重要な母細胞として機能しています 。正常な犬の骨髄では、巨核球は全有核細胞の0.1%未満という極めて少ない割合で存在し、骨髄巨核球数は50~150/μLの範囲が正常値とされています 。

参考)https://agriknowledge.affrc.go.jp/RN/2030891459.pdf

巨核球は通常、骨髄内で成熟過程を経て血小板を放出し、血液凝固や止血機能に重要な役割を果たす血小板の供給源となります 。犬の血液検査において巨核球の数や形態を評価することで、血小板産生能力や骨髄の造血機能を把握することができるため、獣医師にとって重要な診断指標となっています 。

参考)https://www.midoriac.com/?p=syoureiamp;id=65

血液中に巨核球が出現する場合は、通常は異常な状態を示しており、特に末梢血液中での巨核球の検出は病的意義が高いとされています 。バベシア感染症などの特定の疾患では、血液中に巨核球が認められることがあり、これは診断の手がかりとなる重要な所見です 。

参考)https://asset.fujifilm.com/www/jp/files/2023-09/e031eed873871b1f0cff6b321769de72/FFVS_handout-9745.pdf

巨核球系の血液疾患と犬の健康

犬における巨核球系の異常は、主に血小板減少症や白血病などの血液疾患と密接に関連しています 。免疫介在性血小板減少症(ITP)では、体内の免疫系が血小板だけでなく、その前駆体である巨核球も攻撃することが知られています 。
急性巨核芽球性白血病(AML-M7)は、犬では非常に稀な疾患ですが、巨核球系の細胞が腫瘍化する深刻な血液疾患です 。この疾患では、骨髄の全有核細胞中の30%以上が巨核芽球で占められ、フローサイトメトリー検査により血小板・巨核球マーカーであるCD41/CD61抗原に陽性反応を示すことで確定診断されます 。

参考)https://jvma-vet.jp/mag/06803/c3.pdf

無巨核球性血小板減少症という稀な疾患では、骨髄中の巨核球系が重度の低形成から無形成を示し、血小板産生が著しく低下します 。この疾患は犬では極めて稀で、これまでの報告は2報(5頭)のみとされています 。

参考)無巨核球性血小板減少症の犬の1例

血液検査における巨核球の評価方法

犬の血液検査で巨核球を評価する場合、まず末梢血液の血液塗抹標本を顕微鏡で観察し、異常な巨核球の存在を確認します 。正常では末梢血液中に巨核球は認められないため、その出現は病的意義を持ちます 。
骨髄検査では、骨髄吸引によって採取された細胞を用いてミエログラム(骨髄の細胞分類)を作成し、巨核球系の評価を行います 。骨髄検査では細胞密度、造血系の3系統評価(赤芽球系・顆粒球系・巨核球系)、および細胞比率の分析が重要です 。

参考)こんな病気を治療しています|葉山どうぶつ病院

フローサイトメトリー検査は、巨核球系細胞の詳細な分析に使用される高度な検査法で、CD41/CD61などの特異的マーカーを用いて巨核球系細胞を同定し、その由来を確認することができます 。この検査は特に白血病の診断において不可欠な技術となっています 。

巨核球異常に関連する臨床症状

巨核球系の異常により引き起こされる症状は主に血小板機能の低下に伴う出血傾向として現れます 。犬では皮膚や粘膜に現れる点状出血(紫斑)、鼻出血、歯肉出血などが典型的な症状です 。

参考)免疫介在性血小板減少症(ITP)について

重篤な場合には、内臓出血や脳出血などの生命に関わる出血が起こる可能性があります 。血小板数が20,000/μl未満まで低下した場合は重度の血小板減少症と判断され、緊急的な治療が必要となります 。
急性巨核芽球性白血病では、跛行、元気消失、発熱などの全身症状に加えて、進行性の貧血と血小板減少が認められ、最終的には播種性血管内凝固症候群(DIC)を併発して予後不良となることが報告されています 。この疾患の多くは診断から約2週間以内という極めて短い生存期間を示します 。

最新の研究動向と治療への応用

最近の獣医療における巨核球研究では、犬の脂肪由来間葉系間質細胞を用いた血小板製剤の開発が注目されています 。麻布大学と株式会社AdipoSeedsの共同研究では、犬の脂肪から採取した間葉系間質細胞(cAD.MSCs)を巨核球や血小板へ分化誘導する世界初の試みが進められており、現在は血小板の元となる巨核球様細胞の誘導に成功しています 。

参考)JVM NEWS 獣医学関連 学会・業界情報 – 文永堂出版

この研究は将来的に犬の血小板製剤として実用化される可能性があり、血小板減少症や出血性疾患の治療における画期的な進歩となることが期待されています 。従来は廃棄されていた脂肪組織が、生命をつなぐ重要な医療資源として活用される可能性を示しており、再生医療の分野でも注目を集めています 。

参考)プレスリリース:廃棄されていた脂肪がhref=”https://www.azabu-u.ac.jp/topics/2025/0909_46757.html” target=”_blank”>https://www.azabu-u.ac.jp/topics/2025/0909_46757.htmlquot;命をつなぐ細胞href=”https://www.azabu-u.ac.jp/topics/2025/0909_46757.html” target=”_blank”>https://www.azabu-u.ac.jp/topics/2025/0909_46757.htmlquot;に ─…

免疫介在性血小板減少症の治療においては、従来のプレドニゾロンなどの免疫抑制剤に加えて、T細胞の役割に着目した新たな治療アプローチが研究されています 。血小板破壊は抗体だけでなく、細胞傷害性T細胞によっても引き起こされることが判明しており、より効果的な治療法の開発につながる重要な知見となっています 。