アラセプリルと犬の慢性心不全治療
アラセプリル犬への基本的な作用機序
アラセプリルは犬の慢性心不全治療において重要な役割を果たすACE阻害剤です。この薬物は経口投与後にデアセチルアラセプリルとカプトプリルに変換され、レニン・アンジオテンシン・アルドステロン(RAA)系を抑制することで効果を発揮します。
参考)https://vet.cygni.co.jp/include_html/pdf/attachment/DY120043.pdf
犬の体内でアラセプリルは血管拡張作用を示し、末梢血管抵抗を減少させることで前負荷および後負荷を軽減します。この作用により心臓への負担が軽くなり、慢性心不全による症状の改善が期待できます。
参考)アピナックhref=”https://www.ds-vet.jp/apinac/” target=”_blank”>https://www.ds-vet.jp/apinac/amp;reg;錠について
アラセプリル犬の僧帽弁閉鎖不全症治療における効果
犬の僧帽弁閉鎖不全症は小型犬に多く見られる疾患で、アラセプリルは主要な治療選択肢となっています。研究によると、アラセプリル1.0-3.0mg/kg/dayの投与により、慢性心不全モデル犬において肺動脈楔入圧と全末梢血管抵抗の低下が確認されています。
参考)アピナック®錠 6mg/12.5mg/25mg|vet-i-…
臨床試験では、僧帽弁閉鎖不全症を基礎疾患とする慢性心不全犬に対してアラセプリルを投与した結果、従来の利尿・強心治療と比較して心不全の進行抑制と運動耐容能の増大が認められました。特にACVIMステージB2の症例において、発咳の改善効果も報告されています。
参考)https://www.shizujyu.com/files/libs/1744/202301101412533444.pdf
アラセプリル犬への適切な投与量と使用方法
アラセプリルの犬への投与量は体重1kg当たり1日量1~3mgとされており、1~2回に分割して経口投与されます。投与開始時は低用量から始め、犬の状態を観察しながら必要に応じて増量することが重要です。
高用量(3mg/kg)での投与では、より大きな心臓負荷軽減効果が期待できますが、降圧作用に基づくふらつき等の副作用リスクも増加するため、初回投与後24時間は特に注意深い観察が必要です。利尿剤と併用する場合は、電解質バランスの変化にも配慮が必要です。
アラセプリル犬治療時の注意すべき副作用
アラセプリル投与による犬の主な副作用として、降圧作用に基づくふらつきが挙げられます。また、稀に蛋白尿、ヘマトクリット・AST・ALT・BUN・クレアチニン・ALP・CPKの変動が見られることがあります。
食欲不振や元気消失といった症状も報告されており、特に初回投与後や増量後は注意深い監視が必要です。カリウム保持性利尿剤との併用は避けるべきとされています。研究報告では、42頭中1頭(2.4%)で食欲不振、無気力、嘔吐などの合併症が確認されています。
参考)https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC6115264/
アラセプリル犬の長期治療継続における特殊な効果
アラセプリルは他のACE阻害剤と比較して独特な特徴を持ちます。その活性代謝物であるデアセチルアラセプリルは動脈壁への移行性に優れ、投与5時間後に血漿中濃度の約7倍の組織濃度を示します。
この優れた組織移行性により、1日1回の投与でも長時間にわたる血管拡張作用が期待できます。さらに、デアセチルアラセプリルには末梢交感神経末でのノルエピネフリン放出を直接的に抑制する作用があり、亢進した心拍数の抑制効果も示します。
代謝物が有するSH基には活性酸素を消去する作用があり、これは心筋保護の観点から追加的な利益をもたらす可能性があります。長期治療では、これらの多面的な作用により、単なる血圧降下以上の心血管保護効果が期待されています。
犬の心不全治療において、アラセプリルは病態の進行抑制と症状改善の両面で重要な役割を果たしており、適切な投与量管理と定期的な経過観察のもとで継続的な治療効果をもたらします。
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