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アザチオプリンと犬の免疫抑制療法について

アザチオプリンと犬の免疫抑制療法

犬のアザチオプリン治療の重要ポイント
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免疫抑制効果

自己免疫性疾患や免疫介在性溶血性貧血の治療に使用される重要な免疫抑制剤

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副作用監視

肝毒性は14日以内、骨髄毒性は53日頃に発現する可能性があり定期検査が必要

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適正用量

犬では1-2mg/kg/日で使用し、プレドニゾロンとの併用療法が基本

アザチオプリンの犬への作用機序と適応疾患

アザチオプリンは、犬の免疫系を抑制する重要な治療薬として位置づけられています 。この薬剤は、細胞分裂を抑制することによって免疫細胞の増殖を抑制する作用があり、主に自己免疫性疾患や臓器移植における拒絶反応の治療に用いられます 。

参考)https://www.r-vets.jp/product/pdf/ciclo_03.pdf

犬における主な適応疾患として、免疫介在性溶血性貧血(IMHA)、免疫介在性血小板減少症(ITP)、免疫介在性多発性関節炎、炎症性腸疾患などがあります 。アザチオプリンは代謝拮抗薬の6-メルカプトプリン(6-MP)のプロドラッグであり、生体内で6-MPに分解され、核酸合成を阻害することにより免疫抑制作用を発揮します 。

参考)アザチオプリンに続発する肝臓毒性

プリンヌクレオチド合成を阻害することで、ヘルパーT細胞の増殖を抑制し免疫抑制作用を発揮するため、特に細胞性免疫が関与する疾患に対して効果的です 。効果が現れるまでに最大6週間かかることがあるため、他の免疫抑制剤との併用療法が推奨されています 。

参考)https://www.ivma.jp/promotion/magazine/document/45-1/03_45_1_clinicalreport.pdf

犬のアザチオプリン用法用量と投与方法

犬におけるアザチオプリンの標準的な用量は、1日に1~2mg/kgとされており、巨大食道症では2mg/kg PO SIDで投与されます 。免疫介在性溶血性貧血の治療では、プレドニゾロンに併用して2mg/kg PO SIDまたは50mg/m²PO SIDで2週間投与した後、EOD(隔日)に減量するプロトコールが一般的です 。

参考)アザチオプリン:Azathioprine

大型犬の場合、体表面積を基準とした投与量として50~60mg/m²/日が推奨されることもあります 。慢性肝炎の治療においても同様の用法用量が適用され、2mg/kg PO SIDで開始し、症状に応じて調整が行われます 。

参考)免疫介在性疾患の治療ガイド href=”https://sadahiro-ah.com/%E5%85%8D%E7%96%AB%E4%BB%8B%E5%9C%A8%E6%80%A7%E7%96%BE%E6%82%A3%E3%81%AE%E6%B2%BB%E7%99%82%E3%82%AC%E3%82%A4%E3%83%89/” target=”_blank”>https://sadahiro-ah.com/%E5%85%8D%E7%96%AB%E4%BB%8B%E5%9C%A8%E6%80%A7%E7%96%BE%E6%82%A3%E3%81%AE%E6%B2%BB%E7%99%82%E3%82%AC%E3%82%A4%E3%83%89/amp;#8211; さだひろ動物病院…

投与開始時の初期治療薬がプレドニゾロンであることに変わりはなく、アザチオプリンは2番目の治療薬として位置づけられています 。食事と共に与えることで消化器毒性を軽減できるため、食後投与が推奨されています 。

参考)https://www.vmdp.jp/products/pdf/cy05.pdf

アザチオプリン投与時の犬における副作用と監視体制

犬のアザチオプリン投与における最も重要な副作用は肝毒性と骨髄毒性です 。研究によると、犬の15%が治療後最初の2か月以内に肝毒性を発症し、肝毒性が発現するまでの期間の中央値は14日とされています 。特にジャーマンシェパード犬では肝毒性の発症率が高いことが報告されており、注意深い監視が必要です 。
骨髄毒性については、好中球減少症、血小板減少症、またはその両方を発症する犬が8%存在し、骨髄毒性が観察される期間の中央値は53日です 。消化器毒性(食欲不振、嘔吐、下痢)も報告されており、食事と共に与えることで軽減可能です 。
監視体制として、治療の最初の1~4週間は肝酵素をモニタリングし、最初の2~4か月間はCBCをモニタリングすることが推奨されています 。肝酵素の変化は、すべての犬において肝細胞パターンと胆汁うっ滞パターンが混在することが特徴的です 。

犬のアザチオプリン併用薬物療法と相互作用

犬の免疫介在性疾患治療において、アザチオプリンは単独で使用されることは稀で、通常はプレドニゾロンとの併用療法が行われます 。プレドニゾロンを初期治療薬として使用し、グルココルチコイドによる副作用を最小限にする目的でアザチオプリンが第2の治療薬として導入されます 。

参考)https://ozaki-ah.com/images/report/pdf/2019/08/01.pdf

シクロスポリンに反応が認められない場合の次の選択肢としてアザチオプリンは有効であるとされ、治療プロトコールの中で重要な位置を占めています 。ミコフェノール酸モフェチルやヒト免疫グロブリン製剤も併用される場合がありますが、確立したプロトコールは存在しないため、症例に応じた個別対応が必要です 。
重要な薬物相互作用として、アロプリノールとの併用時には骨髄抑制等の副作用を増強するため、アザチオプリンを通常投与量の1/3~1/4に減量する必要があります 。ワルファリンとの併用では抗凝血作用が減弱することがあるため、凝固能の変動に十分注意が必要です 。

参考)https://vet.cygni.co.jp/include_html/drug_pdf/taisya/IM2016-01.pdf

アザチオプリンを使用した犬の治療成功例と長期管理

リンパ管拡張症の犬において、アザチオプリンおよび市販のドッグフードによる食餌療法が奏功した症例が報告されています 。この症例では、従来の治療法に反応しなかった犬に対してアザチオプリンを導入することで症状の改善が得られました。

参考)アザチオプリンおよび市販のドッグ・フードによる食餌療法が奏功…

免疫介在性多発性関節炎を患った犬の症例では、免疫抑制剤の錠剤が嫌いで飲めない患者に対してアザチオプリンを粉末にして投与し、長期間病気を抑制することに成功しました 。しかし、重大な副作用(骨髄抑制)が出現した際にはアザチオプリンを中止し、代替治療法への転換が必要となったケースも報告されています 。

参考)自己免疫疾患・免疫介在性疾患症例

長期管理においては、薬剤の減量や中止のタイミングが重要です。肝毒性を示した犬ではアザチオプリンの投与量を減らし、重篤な場合には薬剤を完全に中止することで肝酵素値の改善が期待できます 。また、間葉系幹細胞療法などの新しい治療法との組み合わせにより、従来の免疫抑制剤の使用量を減らしながら治療効果を維持する試みも行われています 。