ボーダーコリー病気の種類と症状
ボーダーコリー病気の遺伝性眼疾患の症状
ボーダーコリーの病気として最も注意すべきなのは、遺伝性の眼疾患です。
コリー眼異常(コリーアイ異常)は、ボーダーコリーなどコリー系の犬種に多く見られる先天性の病気で、脈絡膜という眼底を包む組織に欠損や薄い部分が発生します。症状は個体差が大きく、生涯無症状の場合もあれば、重症化し失明してしまうケースもあります。視力障害があらわれると、物によくぶつかる、鼻で探りながら歩くといった症状が見られます。
進行性網膜萎縮症は、目の奥にある光や映像を感じ取る網膜が変性・萎縮することで正常に機能しなくなる病気です。初期は夕方から夜の時間帯に目が見えにくくなる「夜盲」の症状が見られ、暗い場所を怖がったり、音に対して敏感になったりします。この病気は徐々に進行し、最終的には日中も目が見えなくなり失明に至ります。
白内障も比較的多く見られる疾患で、水晶体が白く濁ることで視力が低下します。進行性網膜萎縮症を併発するケースもあり、この場合は老齢性の白内障より早い段階で発症することが多いとされています。
ボーダーコリー病気の関節疾患による運動障害
ボーダーコリーは活発な犬種であるため、関節に関する病気にも注意が必要です。
股関節形成不全は、股関節が緩み炎症や痛みがあらわれる病気です。本来、犬の股関節は骨盤にある寛骨臼というくぼみに大腿骨頭がしっかりと入り込んでいる構造をしていますが、それがしっかりと入り込まなくなることで発症します。主な症状として、階段やジャンプを嫌がる、お尻を振る・腰をクネクネさせるなど歩き方に異変が見られ、重症の場合は後ろ足を引きずるようになります。
ボーダーコリーの関節疾患では、うさぎ跳びのような歩き方や、モンローウォークと呼ばれる腰を左右に振るような特徴的な歩き方を示すことがあります。
肘関節異形性は、前足の肘関節がうまく連結せず、その周辺の骨や軟骨に炎症を引き起こす病気です。初期症状は生後4~7ヶ月頃に前足の歩き方の異常が見られますが、軽症で気づくことが難しいケースも少なくありません。症状が悪化すると関節炎を起こし、痛みから前足を上げて歩くようになったり、肘を曲げるのを嫌がったりするようになります。
ボーダーコリー病気の神経系疾患と症状
ボーダーコリーには、深刻な神経系の病気も存在します。
セロイドリポフスチン症(CL症)は、進行性の運動障害や知能障害、視力障害などの症状が見られる神経変性疾患です。先天的な原因で、「セロイドリポフスチン」と呼ばれる脳内の老廃物を分解する酵素に異常が起こり、神経細胞が侵され発症します。
この病気の症状は非常に多岐にわたり、突然おびえるようになる、攻撃的になる、歩き方がフラフラしている、トイレの場所を忘れてしまう、段差を踏み外すなどの行動異常が見られるようになります。一度症状が出ると急激に進行し、多くの場合、2才半~3才半までには死亡してしまう非常に深刻な病気です。
特発性てんかんも比較的多く見られる疾患で、突然のけいれん発作を繰り返します。初発は2~5歳ごろが多く、脳の一部または大部分が電気的に過剰に活動し、局所的な痙攣または全身的な発作を引き起こします。
ボーダーコリー病気の血液系疾患の特徴
グレーコリー症候群(周期性好中球減少症)は、被毛の色がグレー系のボーダーコリーに見られる先天性の血液の病気です。先天的な原因によって、白血球のひとつである好中球が減少することで発症します。
この病気は子犬のうちに発症し、発熱、結膜炎、呼吸不全、下痢、食欲減退、関節痛などの症状があらわれます。最終的には敗血症や肺炎などの感染症を起こして死亡する可能性が高い深刻な疾患です。
意外な事実として、この病気は被毛の色と遺伝的に関連しており、グレー系の毛色を持つボーダーコリーのみに発症する特殊な疾患です。毛色の遺伝子と同じ染色体上に病気の原因遺伝子が存在するため、このような現象が起こります。
ボーダーコリー病気の早期発見と予防対策
ボーダーコリーの病気を早期発見するためには、日頃からの観察が重要です。子犬期から定期的な健康診断を受け、特に1歳までの間にX線検査や眼底検査を受けることが推奨されます。
予防対策として重要なポイント:
・適正体重の維持:関節疾患の予防や症状悪化の防止に効果的
・運動制限:成長期の過度な運動は関節に負担をかけるため注意が必要
・定期検査:5ヶ月を過ぎたらCTなどの精密検査を検討
・遺伝子検査:繁殖予定がある場合は事前の遺伝子検査が重要
ボーダーコリーの特徴的な運動能力を活かしつつも、適度な運動レベルを維持することが病気予防の鍵となります。何か異常が見られた場合にはすぐに動物病院で診察を受けることで、重症化を防ぐことができます。
早期発見のための観察ポイントとして、歩き方の変化、視力の変化、行動の変化に特に注意を払うことが大切です。これらの病気の多くは遺伝性疾患であるため、完全な予防は困難ですが、適切な管理により症状の進行を遅らせたり、生活の質を向上させたりすることは可能です。