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チェリーアイ(犬)の症状と治療方法を徹底解説

チェリーアイ(犬)の症状と治療方法

チェリーアイの基礎知識
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瞬膜腺脱出のメカニズム

第三眼瞼腺が正常位置から飛び出し目頭に赤い腫れとして現れる

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好発犬種と年齢

短頭種や中型犬、特に1歳未満の若齢犬で発症しやすい

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治療アプローチ

内科的治療から外科手術まで症状に応じた段階的治療

チェリーアイの病態生理と発症メカニズム

チェリーアイ(第三眼瞼腺脱出)は、犬の瞬膜腺が正常な位置から脱出し、目頭に赤い腫瘤として現れる疾患です。瞬膜は人間には存在しない第三眼瞼として機能し、上下眼瞼とともに眼球保護の重要な役割を担っています。

瞬膜腺は涙液の約30-60%を産生する重要な分泌腺であり、眼球表面の潤滑と保護に不可欠です。正常時は眼窩骨周囲の結合組織により固定されていますが、この固定組織の先天的脆弱性や外傷により脱出が生じます。

発症は遺伝的要因が強く関与しており、特に生後3ヶ月から12ヶ月の若齢犬での発症が多く報告されています。これは成長過程において瞬膜腺を支持する組織の発達が不十分であることが主因と考えられています。

チェリーアイの臨床症状と診断のポイント

チェリーアイの最も特徴的な症状は、目頭に現れる赤色から桃色の腫瘤です。この腫瘤は瞬膜腺の脱出により形成され、大きさは数ミリから1センチ程度まで様々です。

主な臨床症状。

  • 目頭の赤い腫れや突起物の出現 🔴
  • 涙液分泌の増加による流涙
  • 結膜の充血と炎症
  • 目やにの増加
  • 眼球の違和感による頻繁な擦過行動

診断は特徴的な外観により比較的容易ですが、腫瘍性疾患との鑑別が重要です。特に中高齢犬では悪性腫瘍の可能性も考慮し、必要に応じて組織学的検査を実施します。

発症初期は脱出と復位を繰り返すことが多く、完全脱出状態が持続すると瞬膜内軟骨の変形や慢性炎症により復位困難となります。

チェリーアイの内科的治療法と適応

軽症例や初期段階では内科的治療が第一選択となります。抗炎症作用のあるステロイド点眼薬により瞬膜腺の腫脹軽減と復位を図ります。

内科的治療の適応。

  • 脱出が間欠的で自然復位がみられる場合
  • 発症から時間が経過していない急性期
  • 全身麻酔のリスクが高い症例
  • 飼い主が外科治療を希望しない場合

治療プロトコル。

  1. ステロイド点眼薬の頻回投与(1日4-6回)
  2. 抗生物質点眼薬の併用(二次感染予防)
  3. エリザベスカラーによる擦過防止
  4. 定期的な経過観察(1-2週間間隔)

内科的治療の成功率は30-40%程度とされ、再発率が高いため継続的な管理が必要です。治療効果が認められない場合や頻回再発例では外科的介入を検討します。

チェリーアイの外科的治療技術と術式選択

外科手術は瞬膜腺の機能温存を目的とした復位固定術が標準的治療法です。切除術は涙液分泌量の著明な減少によりドライアイを誘発するため現在は推奨されていません。

主要な手術術式。

ポケット法(推奨術式)

瞬膜周囲の結膜を切開し、瞬膜腺を収納するポケットを作成後縫合固定します。再発率は15-20%程度と比較的良好な成績が報告されています。

アンカリング法

瞬膜軟骨や周囲組織に非吸収糸をかけ、脱出した瞬膜腺を強制的に復位固定する方法です。技術的難易度は高いものの、確実な固定が可能です。

手術の適応。

  • 内科的治療無効例
  • 頻回再発例
  • 慢性化により瞬膜軟骨の変形を認める症例
  • 二次的な角結膜炎の併発例

術後管理では適切なエリザベスカラーの装着と抗炎症点眼薬の継続投与が重要です。手術後も10-30%程度の再発リスクがあるため、長期的な経過観察が必要です。

チェリーアイ治療における獣医師の判断基準と予後評価

治療方針の決定には複数の要因を総合的に評価する必要があります。特に好発犬種では両眼性発症の可能性が高く、長期的な治療計画の立案が重要です。

治療選択の判断基準:

年齢要因の考慮。

  • 生後4ヶ月未満:全身麻酔リスクを考慮し内科的治療を優先
  • 生後6ヶ月以降:手術適応の積極的検討
  • 成犬:早期の外科的介入を推奨

犬種特異性の評価。

  • 短頭種(ブルドッグ系):再発率が高く複数回手術の可能性
  • コッカー・スパニエル:比較的良好な予後
  • ペキニーズシーズー:両眼性発症率が高い傾向

予後と長期管理:

成功的な治療後も定期的な眼科検査が推奨されます。特に以下の点に注意が必要です。

  • 対側眼の発症リスク評価(約60-70%で両眼性発症)
  • ドライアイの早期発見(涙液分泌量測定)
  • 角膜炎や結膜炎の予防的管理
  • 飼い主への適切な観察指導

治療成功の指標として、瞬膜腺の完全復位、涙液分泌量の維持、再発の防止が挙げられます。適切な治療により95%以上の症例で良好な予後が期待できますが、犬種や個体差により治療反応性に差があることを飼い主に十分説明する必要があります。

チェリーアイは比較的頻度の高い眼科疾患であり、早期診断と適切な治療により良好な予後が期待できます。獣医師として症例ごとの特性を十分に評価し、最適な治療戦略を選択することが重要です。