肺高血圧症と犬の症状診断
肺高血圧症による犬の失神メカニズム
犬の肺高血圧症における失神は、肺動脈圧の上昇により心臓から脳への血液供給が一時的に不足することで発生します 。特に運動や興奮後に起こりやすく、肺高血圧症の犬では失神が最も多い症状として61.5%の割合で観察されています 。失神は通常短時間で意識が回復しますが、この現象は肺動脈の血管抵抗増加により右心室の負荷が急激に増大することが原因となっています 。
参考)失神・発作
肺高血圧症の犬における呼吸困難症状の特徴
呼吸困難は肺高血圧症の犬で38.5%に観察される重要な症状で、慢性的な労作時のチアノーゼや努力性呼吸として現れます 。犬の肺高血圧症では、肺動脈内圧の異常上昇により肺の血管内で血液が滞留し、酸素交換効率が低下することで呼吸困難が生じます 。進行すると舌や歯茎が青紫色になるチアノーゼが現れ、口を開けた呼吸や頻呼吸などの症状が持続的に観察されるようになります 。
参考)肺高血圧症
肺高血圧症診断における心エコー検査の重要性
心エコー検査は犬の肺高血圧症診断において最も重要な検査方法で、肺動脈圧の測定と右心房・右心室の形態評価が可能です 。超音波プローブを心臓部分に当てることで、肺動脈の血流速度や右心室の壁厚、心室間中隔の形状変化をリアルタイムで観察できます 。心エコー検査は痛みを伴わず、肺高血圧症の重症度評価や治療効果の判定にも活用される非侵襲的な検査として獣医循環器診療で標準的に使用されています 。
肺高血圧症診断で見逃されがちな咳症状の意義
肺高血圧症の犬では咳が46.1%の症例で観察され、失神に次いで多い症状として報告されています 。この咳は単純な呼吸器感染症とは異なり、肺動脈圧上昇による肺血管の炎症や肺水腫の前段階として現れることが多いのが特徴です 。特に夜間や運動時に増悪する慢性咳嗽は、左心疾患由来の肺高血圧症でよく観察され、僧帽弁閉鎖不全症などの基礎疾患の存在を示唆する重要な臨床サインとなります 。
肺高血圧症の犬に対するシルデナフィル治療効果
シルデナフィルは犬の肺高血圧症治療において第一選択薬として使用される血管拡張薬で、肺動脈の血管抵抗を減少させる効果があります 。この薬剤はホスホジエステラーゼV阻害薬として作用し、肺血管内の一酸化窒素濃度を増加させることで血管平滑筋を弛緩させます 。臨床研究では、ピモベンダンでは改善しなかった虚脱症状がシルデナフィル投与により劇的に改善した症例が報告されており、肺動脈性肺高血圧症に対する有効性が実証されています 。