犬草を食べて吐く理由症状対処法
犬草を食べる主な理由とメカニズム
犬が草を食べる行動は、実は健康な犬にも普通に見られる自然な行動です。アメリカのカリフォルニア大学の獣医師らが2008年に発表した論文では、犬が草を食べることは一般的には病気や栄養的なニーズとは関係ないと結論付けられています。
主な理由として以下が挙げられます:
- ストレス解消 – 散歩中に飼い主を無視して夢中で草を食べ始める場合、生活で何かストレスを感じている可能性があります。寂しさや運動不足、生活環境の変化などがストレス要因となることがあります
- 栄養補給の本能 – 普段の食事で不足しているビタミンやミネラル、繊維質を補給するために本能的に草を食べるケースがあります。犬の親戚であるオオカミが草食動物の胃の内容物を食べることからも、この本能的行動が理解できます
- 消化不良の改善 – 犬は消化不良や食べ過ぎ、車酔いなど胃腸の不調を感じた時に草を食べることがあります。胃をチクチクと刺激して消化できない食べ物を吐き、胃腸の負担を軽くして調子を整える目的があります
- 空腹感 – 2007年の研究では、犬がまだ食事をしていない時、つまりお腹が減っている時ほど草を食べる可能性が高いことが分かっています
- 単純な嗜好 – 草の味や食感を好んで食べている場合もあります。遊び感覚で草を食べていることもあり、この場合は体調不良などの問題はありません
興味深いことに、12頭の犬に1日3回6日間草を食べさせた2007年の研究では、嘔吐した犬はほとんどいなかったという結果が出ています。これにより「犬が催吐剤や虫下しの代わりに草を食べているという説は否定されており、ほとんどの犬にとって草を食べることは問題行動ではない」とされています。
犬草を食べて吐く症状と危険性
犬が草を食べた後の嘔吐について、その症状の見分け方と危険性を理解することは非常に重要です。
正常な嘔吐の特徴:
- 透明または白っぽい胃液を吐く
- 草の欠片が混じっている
- 吐いた後は元気で食欲もある
- 一回限りで継続しない
危険な症状のサイン:
- 血液の混入 – 吐いた液の中に比較的鮮やかな血液が少量混ざる時は、とがった草で胃粘膜が傷ついた可能性があります。茶色くなった血液が比較的多量に混入した時は胃出血が疑われ、胃潰瘍の可能性もあります
- 大量のよだれ – 危険な草を食べたことで口内を刺激し、ただれや炎症を引き起こして大量によだれが出ている可能性があります
- 下痢の併発 – 犬が食べてはいけない草を食べると、下痢や嘔吐などの症状を発症します。これらは体内に有害な物質が入ったことを示すサインです
- 神経症状 – 食欲低下、元気消失、けいれんなどの症状が現れた場合は、有毒植物による中毒の可能性があります
特に危険な植物による中毒症状:
愛犬が有毒な草を食べてしまった場合、一般的には以下の症状が現れます。
- 下痢
- 嘔吐
- 大量のよだれ
- 血便
- 神経症状
除草剤が付いている草を食べてしまった場合には、嘔吐・下痢・けいれん・痛み・かゆみなどの症状が現れ、摂取した除草剤の量が多いと命にかかわる場合もあります。
犬草を食べて吐く時の対処法
愛犬が草を食べて吐いた時の適切な対処法を知っておくことで、緊急時に適切に対応できます。
immediate対応(即座に行うべきこと):
- 吐瀉物の確認 – 吐いたものに血液が混じっていないか、異物が含まれていないかを確認します
- 愛犬の状態観察 – 元気があるか、食欲はあるか、その後も嘔吐が続くかを注意深く観察します
- 水分補給 – 脱水を防ぐため、少量ずつ水を与えます(一度に大量に飲ませると再び嘔吐する可能性があります)
動物病院への受診が必要な場合:
- 吐瀉物に血液が混じっている
- 何度も繰り返し嘔吐する
- 元気がなく、ぐったりしている
- 下痢も併発している
- 大量のよだれが出ている
- 有毒植物を食べた可能性がある
動物病院を受診する際は、以下の情報を獣医師に伝えることが重要です。
- いつ、どのくらい草を食べたか
- どんな種類の草だったか(可能であれば草を持参)
- 嘔吐の回数と内容物
- その他の症状の有無
獣医師による治療:
有毒な草を食べてしまった場合、獣医師の判断により以下の治療が行われます。
- 催吐剤の投与(吐かせる処置)
- 中毒症状に対する薬物投与
- 点滴による体液バランスの調整
- 胃洗浄(必要に応じて)
愛犬の健康に関する詳細な情報については、日本獣医師会の公式サイトが参考になります。
犬草を食べて吐く予防策としつけ方法
愛犬が危険な草を食べて吐くことを防ぐための予防策と効果的なしつけ方法をご紹介します。
環境の整備:
- 安全な草の提供 – 愛犬が草を食べることが好きな場合には、ペットショップなどで販売している犬が食べられる草を準備することがおすすめです。自宅で育てた安全な草を食べさせることができます
- 散歩ルートの見直し – 除草剤が散布される可能性のある場所や、有毒植物が生えている場所を避けるルートを選びます。公園などに除草剤を撒く場合には住民への告知や張り紙がされるため、常にチェックすることが大切です
- 自宅の植物チェック – 庭やベランダ、室内に有毒植物がないか確認し、愛犬の手の届かない場所に移動させます
効果的なしつけ方法:
- 「ダメ」の指示を徹底 – 飼い主の「ダメ」の指示が通るようにしつけを行います。草に近づいた時点で制止できるよう、日頃から練習しておきます
- 落ちているものに興味を持たせない訓練 – 散歩中に落ちている食べ物や草に興味を持たせないよう、愛犬の性格に合わせて対策を取ります
- リーダーウォーク訓練 – 散歩中に飼い主が主導権を握り、愛犬が勝手に草を食べないよう訓練します
根本原因への対策:
- ストレス解消 – ストレスから草を食べている場合には、飼い主が愛犬と一緒に遊ぶ時間を増やすなどの方法で改善できます
- 栄養バランスの見直し – 栄養が偏っている、フードの量が足りない場合には、総合栄養食を中心とした食生活に見直します
- 空腹対策 – 愛犬が空腹を感じて草を食べている場合には、野菜を茹でておやつとして与えたり、散歩の時間を調整したりする工夫が有効です
消化不良の改善:
ドッグフードが体に合っていない場合、お腹がキュルキュルするなどの違和感を感じて本能的に食物繊維を摂取しようとして草を食べている可能性があります。この場合はドッグフードの種類を変えてみることをおすすめします。
犬草を食べて吐く行動の季節変動と環境要因
犬が草を食べて吐く行動には、実は季節や環境による変動があることが分かっています。この独自の視点から、より深く愛犬の行動を理解してみましょう。
春季における特別な注意点:
春は特に危険な時期とされています。多数の草花が生え始め、やわらかい新芽や葉に愛犬が興味を持ちやすくなります。この時期に注意すべき点。
- 新芽の魅力 – 春の新芽は柔らかく、犬にとって食べやすい食感のため、普段草を食べない犬でも興味を示すことがあります
- 有毒植物の開花時期 – 多くの有毒植物が春に芽吹くため、危険な草と知らずに食べて体調を悪くする事故が発生しやすくなります
- 球根植物の危険性 – 春に咲く球根植物は特に毒性が強く、庭に植えてある球根を掘り起こして食べてしまうケースもあります
気象条件と草食行動の関係:
- 雨上がりの日 – 草が水分を含んで柔らかくなり、犬にとって食べやすい状態になります。また、雨により除草剤が流れ落ちていない場合は特に注意が必要です
- 乾燥した日 – 空気が乾燥している日は、犬も水分不足を感じて、水分を含んだ草を求める傾向があります
都市部と郊外での違い:
- 都市部 – 排気ガスや大気汚染物質が草に付着している可能性が高く、これらを摂取することで胃腸への刺激が強くなる場合があります
- 郊外・農村部 – 農薬や除草剤の使用頻度が高いため、化学物質による中毒のリスクが都市部より高くなります
生活環境の変化による影響:
- 引越し後 – 新しい環境でのストレスにより、普段は草を食べない犬でも草食行動を示すことがあります
- 家族構成の変化 – 新しい家族の追加や、家族の生活リズムの変化により、ストレス性の草食行動が増加する場合があります
時間帯による行動パターン:
興味深いことに、犬の草食行動には時間帯による違いも見られます。
- 朝の散歩 – 空腹状態であることが多く、草を食べる頻度が高くなります
- 夕方の散歩 – 一日のストレスが蓄積された状態で、ストレス発散のために草を食べる傾向があります
これらの季節変動や環境要因を理解することで、愛犬の草食行動をより適切に管理し、危険を未然に防ぐことができます。特に季節の変わり目や環境の変化があった際には、普段以上に愛犬の行動を注意深く観察することが重要です。
犬の行動と健康管理について更に詳しい情報は、動物愛護管理センターの公式サイトで確認できます。