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犬の膀胱炎原因症状治療法予防対策

犬の膀胱炎原因症状治療法

犬の膀胱炎について知っておくべき基本情報
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主な原因

細菌感染が約85%を占め、特に大腸菌やブドウ球菌による感染が多い

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典型的な症状

頻尿、血尿、排尿時の痛み(鳴き声)、失禁などが主な症状

治療の重要性

早期治療により1-2週間で改善可能、放置すると腎盂腎炎のリスクも

犬の膀胱炎の主要原因と発症メカニズム

犬の膀胱炎の最も一般的な原因は細菌感染で、全体の約85%を占めています。特に大腸菌やブドウ球菌といった消化器や皮膚の常在菌が、肛門周辺から尿道を通って膀胱に侵入することで炎症を引き起こします。

メス犬はオス犬よりも膀胱炎になりやすい傾向があります。これは以下の解剖学的な理由によるものです。

  • 尿道の長さと太さ:メス犬の尿道はオス犬よりも短く太いため、細菌が膀胱まで到達しやすい
  • 尿道口の位置:肛門に近い位置にあるため、糞便中の細菌が侵入しやすい
  • ホルモンの影響:女性ホルモンの変動により免疫機能が変化することがある

膀胱内に細菌が入っても、通常は定期的な排尿により体外に排出されます。しかし、水分摂取不足排尿を我慢する習慣がある犬では、膀胱に尿が長時間滞留し、細菌が繁殖しやすくなってしまいます。

犬の膀胱炎症状の見極めポイント

膀胱炎の症状は段階的に進行することが多く、初期症状を見逃さないことが重要です。以下のような症状が見られたら要注意です。

初期症状(軽度)

  • 排尿回数の増加(頻尿)
  • 1回の排尿量の減少
  • 排尿姿勢を取る時間が長くなる
  • 落ち着きがない素振りを見せる

進行期症状(中等度)

  • 血尿(赤色、茶褐色、濃い黄色)
  • 排尿時の痛みによる鳴き声(「キャン」という短い鳴き声)
  • 尿の臭いが普段より強くなる
  • トイレ以外の場所での失禁

重症期症状(重度)

  • 完全な排尿困難(尿閉)
  • 発熱
  • 食欲不振、元気消失
  • 腹部の触診時の痛み

特に注目すべきは排尿時の鳴き声です。犬が排尿の最中や直後に「キャン」と短く鳴く場合は、膀胱や尿道に痛みを感じている可能性が高く、膀胱炎の典型的なサインといえます。

興味深いことに、犬の膀胱炎では夜間の頻尿が特に顕著になることがあります。これは膀胱の容量が炎症により減少し、通常より少ない尿量でも排尿したい欲求が生じるためです。

犬の膀胱炎診断方法と検査項目

獣医師による診断では、複数の検査を組み合わせて正確な病状を把握します。

尿検査

最も重要な検査で、以下の項目をチェックします。

  • 尿中の血液成分(血尿の確認)
  • 白血球数(炎症の指標)
  • 細菌の有無と種類
  • 尿のpH値とタンパク質濃度
  • 結晶や結石の有無

尿採取方法の種類

  1. 自然排尿法:最も簡単だが、外部からの細菌混入の可能性がある
  2. カテーテル採尿法:尿道にカテーテルを挿入して採取
  3. 膀胱穿刺法:腹部から針を刺して直接膀胱から採取する最も正確な方法

画像検査

  • レントゲン検査膀胱結石(ストルバイト結石、シュウ酸カルシウム結石)の確認
  • 超音波検査(エコー):膀胱壁の厚み、腫瘍やポリープの有無をチェック

細菌培養・薬剤感受性試験

原因菌を特定し、最も効果的な抗生剤を選択するための検査です。治療効果を高め、薬剤耐性菌の発生を防ぐために重要な検査といえます。

あまり知られていない事実として、犬の膀胱炎診断では尿比重も重要な指標となります。健康な犬の尿比重は1.015-1.045程度ですが、膀胱炎の場合は炎症により濃縮能力が低下し、数値が変化することがあります。

犬の膀胱炎治療法の選択基準

治療法は膀胱炎の原因と重症度により決定されます。

細菌性膀胱炎の治療

  • 第一選択薬:アモキシシリン、セファレキシンなどの広域スペクトラム抗生剤
  • 治療期間:通常1-2週間、重症例では3-4週間
  • 効果判定:投薬開始から48-72時間以内に症状改善が見られない場合は薬剤変更を検討

膀胱結石による膀胱炎

  • ストルバイト結石:療法食(尿のpHを酸性化)により溶解可能
  • シュウ酸カルシウム結石:療法食での溶解は困難、外科手術が必要
  • 併用治療:結石と細菌感染の両方に対処するため、抗生剤も同時投与

支持療法

  • 水分摂取促進:希釈された尿により細菌を物理的に排出
  • 頻回排尿の推奨:膀胱内の細菌滞留時間を短縮
  • ストレス軽減:免疫機能の正常化を図る

治療効果のモニタリング

治療開始後は以下のスケジュールで経過観察を行います。

  • 治療開始3-5日後:症状改善の確認
  • 治療終了3-7日後:尿検査による完治確認
  • 治療終了1ヶ月後:再発防止の確認検査

注目すべき点として、プロバイオティクスの併用投与が注目されています。抗生剤治療中に腸内細菌叢のバランスが崩れることで、膀胱炎の再発リスクが高まる可能性があるため、善玉菌の補充が有効とする研究結果も報告されています。

犬の膀胱炎予防対策と生活習慣改善

膀胱炎の予防は日常的なケアが最も重要です。

水分摂取量の管理

  • 目安量:体重1kgあたり50-60mlの水分摂取が理想
  • 摂取促進方法
  • 新鮮な水を常時用意
  • 複数箇所への水入れ設置
  • ウェットフードの併用
  • 温度調整(特に冬季は常温〜微温湯)

排尿環境の整備

  • トイレの清潔性保持
  • アクセスしやすい場所への設置
  • 散歩時の排尿機会確保(1日最低3回)
  • 長時間の我慢をさせない環境作り

衛生管理

  • 肛門周辺の清潔保持
  • おむつ使用時は頻繁な交換
  • 女性犬の場合、ヒート時期の特別なケア
  • 定期的なグルーミング

食事管理

  • 療法食の活用:結石予防に特化したフード
  • 塩分制限:過度な塩分は膀胱に負担をかける
  • 適正体重の維持:肥満は免疫機能低下につながる

ストレス軽減

  • 規則正しい生活リズム
  • 適度な運動
  • 環境変化への配慮
  • 他のペットとの関係性管理

定期健康チェック

  • 年1-2回の尿検査
  • シニア犬(7歳以上)では半年に1回の検査推奨
  • 症状がなくても予防的検査の実施

意外な予防策として、クランベリーサプリメントの効果が注目されています。クランベリーに含まれるプロアントシアニジンという成分が、細菌の膀胱壁への付着を阻害する作用があるとされ、人間の膀胱炎予防でも使用されています。ただし、犬への効果については獣医師と相談の上で使用することが重要です。

また、定時排尿トレーニングも効果的な予防法です。決まった時間に排尿を促すことで、膀胱内の細菌滞留時間を短縮し、自然な膀胱機能の維持につながります。特に室内飼いの犬や高齢犬では、このトレーニングが膀胱炎予防に大きく貢献することが報告されています。