PR

犬のかいかい病と皮膚炎の原因や治療法

犬のかいかい病と原因

犬のかいかい病の主な原因
🦟

寄生虫

ノミ、ダニ、疥癬などの寄生虫による皮膚トラブル

🌱

アレルギー

食物アレルギー、アトピー性皮膚炎、花粉などによる反応

🦠

感染症

細菌や真菌による皮膚感染症(膿皮症、マラセチア皮膚炎など)

犬のかいかい病、つまり皮膚のかゆみは、飼い主さんにとって最も頻繁に遭遇する問題の一つです。犬が体を舐めたり、引っ掻いたり、床や家具に体をこすりつけたりする行動は、皮膚に何らかの異常が生じているサインです。

かゆみは単なる不快感ではなく、体を守るための重要な防御反応です。以前は痛みの弱い刺激がかゆみとして感じられると考えられていましたが、現在では痛みとかゆみは別々の神経経路で伝達されることが明らかになっています。犬のかゆみは「引っ掻きたくなるような不快な感覚」と定義され、体に有害なものが付着した際に、それを取り除こうとする行動を促す目的があります。

犬のかいかい病の代表的な症状と見分け方

犬のかいかい病の症状は様々ですが、主な兆候として以下のようなものが挙げられます:

  • 過剰な舐め行動(特に足先や肛門周り)
  • 頻繁な引っ掻き行動
  • 体を床や家具にこすりつける
  • 皮膚の赤み・発疹
  • 脱毛や被毛の変色
  • フケや皮膚のかさぶた
  • 皮膚の肥厚化や色素沈着(慢性化した場合)

かゆみの程度を評価することも重要です。1日中絶えず体を掻いているのか、それとも時々軽く掻く程度なのかによって、症状の重症度や緊急性が異なります。また、かゆみの部位も診断の手がかりになります。例えば、耳や足先、腹部、背中など、特定の部位に集中しているかどうかを観察しましょう。

犬のかいかい病と疥癬の関係性と特徴

疥癬(かいせん)は、犬のかいかい病の中でも特に激しいかゆみを引き起こす寄生虫性の皮膚疾患です。ヒゼンダニの一種であるイヌセンコウヒゼンダニが主な原因で、まれにネコショウセンコウヒゼンダニが寄生することもあります。

疥癬の特徴は以下の通りです:

  1. 激しいかゆみ: ヒゼンダニが皮膚にトンネルを掘り、その中で排泄物や分泌物を出すことで、強い過敏反応とかゆみを引き起こします。
  2. 伝染性: 犬から他の動物へ簡単に感染し、人にも一時的に感染する可能性があります。
  3. 皮膚症状: 発疹、脱毛、かき壊した跡が多数見られます。
  4. 好発部位: 耳の縁、肘、腹部、胸部などに症状が現れやすいです。

疥癬は肉眼では確認できませんが、皮膚の表面をこすって顕微鏡検査を行うことで診断できます。また、疥癬に効果のある薬を試験的に投与し、症状の改善を見ることで診断することもあります。

犬のかいかい病とアレルギー性皮膚炎の診断方法

アレルギー性皮膚炎は、犬のかいかい病の主要な原因の一つです。アレルギー性皮膚炎の診断には、以下のようなステップが含まれます:

  1. 詳細な問診: 症状の発症時期、季節性の有無、家庭環境、食事内容などの情報収集
  2. 身体検査: 皮膚の状態、発疹の分布パターン、二次感染の有無などの確認
  3. 除外診断: 寄生虫や感染症など、他の原因を除外するための検査
  4. 特殊検査:
    • 皮膚スクレイピング(ダニの検出)
    • 皮膚の塗抹検査(細菌や真菌の検出)
    • 血液検査(アレルゲン特異的IgE抗体の測定)
  5. 食物除去試験: 特定の食物アレルギーを診断するために、8〜12週間のアレルギー用フード(除去食)を与え、症状の改善を観察します。その後、元の食事に戻して症状が再発するかを確認します。

アレルギー性皮膚炎の特徴として、左右対称性の皮膚炎(湿疹)がみられることが多く、アトピー性皮膚炎、食物アレルギー、薬物や寄生虫に対する過敏症などが含まれます。特に室内飼育の犬では、ハウスダストやダニに対するアレルギーが多く見られます。

犬のかいかい病の効果的な治療法と最新薬

犬のかいかい病の治療は、原因に応じて異なりますが、「かゆみサイクル」を早期に断ち切ることが重要です。かゆみにより犬が皮膚を掻き壊すと、皮膚のバリア機能が低下し、さらに炎症が増幅するという悪循環が生じるためです。

1. 寄生虫対策

  • ノミ・ダニ駆除薬の定期的な投与
  • 環境の清掃(寝具の洗濯、掃除機がけなど)
  • 疥癬の場合は特殊な駆虫薬の投与

2. アレルギー治療

  • アレルゲンの回避(可能な場合)
  • 抗炎症薬・抗アレルギー薬の投与
  • 免疫療法(アレルゲン特異的免疫療法)

3. 感染症治療

  • 細菌感染には抗生物質
  • 真菌感染には抗真菌薬
  • 局所治療(薬用シャンプー、軟膏など)

4. 最新の治療薬

近年、犬のかいかい病に対する新しい治療薬が開発されています:

  • ロキベトマブ(抗体医薬品): IL-31というかゆみを引き起こすサイトカインを標的とする注射薬で、1回の投与で約1ヶ月効果が持続します。
  • オクラシチニブ(JAK阻害剤): かゆみのシグナル伝達を遮断する経口薬で、効果の発現が早く、長期投与が可能です。
  • 外用ステロイド剤(スプレータイプ): 患部に直接作用するため、全身性の副作用が少なく、ピンポイントで治療できます。

これらの新薬は従来のステロイド剤と比較して、副作用が少なく安全性が高いとされています。ステロイド剤は効果が高いものの、長期使用により多飲多尿、食欲増加、体重増加、肝機能障害、免疫低下などの副作用が懸念されます。

犬のかいかい病と心理的ストレスの関連性

犬のかいかい病の原因として見落とされがちなのが、心理的ストレスです。ストレスによるかゆみは「心因性(ストレス性)」と呼ばれ、以下のような特徴があります:

  1. 発症のきっかけ: 環境の変化(引っ越し、家族構成の変化など)、生活リズムの変化、同居動物との関係性の変化などがきっかけとなることがあります。
  2. 行動パターン: 尾をかむ、側腹をすう、足先をなめる、肛門をなめるといった特徴的な行動が見られます。これらの行動は、ストレス解消や自己慰安の目的で行われることがあります。
  3. 診断方法: 他の身体的な原因(寄生虫、アレルギー、感染症など)を除外した上で、ストレス要因の特定と行動療法や薬物療法への反応を評価します。
  4. 治療アプローチ:
    • 環境エンリッチメント(おもちゃの提供、適度な運動など)
    • 規則正しい生活リズムの確立
    • 飼い主との良質な交流時間の確保
    • 必要に応じて抗不安薬の投与

ストレスは免疫機能にも影響を与え、アレルギー反応や感染症に対する抵抗力を低下させることがあります。そのため、身体的な原因と心理的な原因が複合的に関与していることも少なくありません。

犬のかいかい病に対処する際は、皮膚の状態だけでなく、生活環境や精神状態も含めた総合的なアプローチが重要です。特に、突然の行動変化や特定の状況でのみかゆみが増悪する場合は、ストレス要因を検討する必要があります。

犬のかいかい病の予防と日常のスキンケア方法

犬のかいかい病を予防し、健康な皮膚を維持するためには、日常的なケアが欠かせません。以下に効果的な予防法とスキンケア方法をご紹介します。

1. 定期的なグルーミングとブラッシング

  • 被毛の絡まりを防ぎ、皮膚の通気性を良くします
  • 皮膚の状態を観察する機会になります
  • 皮脂や汚れ、アレルゲンを取り除きます

2. 適切なシャンプー選び

皮膚の状態に合わせたシャンプーを選ぶことが重要です:

  • 乾燥肌には保湿成分配合のシャンプー
  • 脂性肌には脱脂作用のあるシャンプー
  • 感染症がある場合は抗菌・抗真菌作用のあるシャンプー

シャンプーの頻度は犬種や生活環境によって異なりますが、一般的には月に1〜2回程度が適切です。過剰なシャンプーは皮膚の乾燥を招くことがあるので注意しましょう。

3. バランスの取れた食事

  • 良質なタンパク質を含む食事
  • オメガ3・6脂肪酸の適切な摂取(皮膚のバリア機能を強化)
  • ビタミンEやビオチンなど、皮膚の健康に関わる栄養素の摂取

4. 寄生虫の予防

  • 定期的なノミ・ダニ予防薬の投与
  • 散歩後の被毛チェック
  • 寝具や生活環境の清潔維持

5. アレルゲンの回避

  • 花粉の多い季節は散歩時間や場所を調整
  • 散歩後の足拭きでアレルゲンの持ち込みを防止
  • ハウスダストを減らすための定期的な掃除

6. 保湿ケア

特に乾燥しやすい季節や、アトピー傾向のある犬には、獣医師推奨の保湿剤を使用することで皮膚のバリア機能を強化できます。

7. ストレス管理

  • 適度な運動と遊びの時間確保
  • 規則正しい生活リズム
  • 安心できる休息スペースの提供

これらの予防法を日常的に実践することで、多くの皮膚トラブルを未然に防ぐことができます。また、定期的な健康診断を受けることで、早期に皮膚の異常を発見し、適切な対処が可能になります。

皮膚は体の最大の臓器であり、内部の健康状態を反映することもあります。皮膚の変化に気づいたら、自己判断せずに獣医師に相談することをお勧めします。特に、かゆみが2〜3日以上続く場合や、皮膚に明らかな異常(発疹、腫れ、出血など)がある場合は、早めの受診が重要です。

日本獣医皮膚科学会では、犬の皮膚疾患に関する最新の情報や適切なケア方法について詳しく解説しています。皮膚トラブルでお悩みの飼い主さんは、認定医のいる動物病院での診察も検討されるとよいでしょう。