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犬の黄疸と肝炎や胆管閉塞の症状と治療法

犬の黄疸と原因

犬の黄疸の主な原因
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溶血性黄疸

赤血球が壊れてヘモグロビンが過剰に代謝され、ビリルビンが血液中に増加する状態

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肝性黄疸

肝臓の壊死や機能不全によりビリルビンの処理ができなくなり体内に蓄積する状態

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肝後性黄疸

胆管の閉塞やうっ滞により、ビリルビンが体外に排泄されず体内に貯留する状態

黄疸とは、体内でビリルビンという物質が異常に増加することで、皮膚や粘膜、白目の部分が黄色く変色する状態を指します。ビリルビンは赤血球のヘモグロビンが分解されるときに生成され、通常は肝臓で処理された後、胆汁の成分として腸へ排泄されます。

犬の黄疸は主に3つのタイプに分類されます。

  1. 溶血性黄疸:赤血球が過剰に壊れることでヘモグロビンが増加し、その代謝物であるビリルビンが血中に多量に放出される状態です。免疫介在性溶血性貧血や、玉ねぎ中毒、細菌・ウイルス・寄生虫(バベシアなど)の感染が原因となることがあります。
  2. 肝性黄疸:肝臓の細胞が壊死したり、機能が低下したりすることで、ビリルビンを適切に処理できなくなり、体内に蓄積する状態です。急性肝炎や慢性肝炎などが原因となります。
  3. 肝後性黄疸:肝臓から十二指腸へとつながる胆管が閉塞することで、ビリルビンが体外に排泄されず、体内に貯留する状態です。胆石症、胆泥症、胆のう粘液嚢腫などが原因となります。

犬では特に肝臓や胆管の疾患が原因となることが多く、猫と比較すると溶血性疾患の割合は少ない傾向にあります。黄疸は単独で現れることは少なく、食欲不振、嘔吐、下痢、元気消失などの症状を伴うことが多いため、これらの症状が見られた場合は早急に獣医師の診察を受けることが重要です。

犬の黄疸と肝炎の関連性

肝炎は犬の黄疸の主要な原因の一つです。肝炎とは肝臓に炎症が生じ、肝細胞が障害を受ける病気で、急性と慢性の2つのタイプに分けられます。

急性肝炎は主に摂取した物質による中毒が原因となることが多く、以下のような要因が考えられます:

  • 薬物(人間用の薬の誤飲や動物用医薬品の副作用)
  • 化学薬品
  • 細菌感染(レプトスピラなど)
  • ウイルス感染(伝染性肝炎ウイルスなど、稀)
  • キシリトールなどの食品による中毒

急性肝炎の症状としては、突然の元気・食欲低下、嘔吐、下痢、発熱などが見られ、重症化すると黄疸が現れることがあります。

一方、慢性肝炎は長期間にわたって徐々に進行する病気で、以下のような原因が考えられます:

  • 特定犬種における銅の蓄積(ベドリントンテリア、ドーベルマン、ラブラドールレトリバーなど)
  • 薬剤の長期投与
  • 原因不明(特発性)のケースが多い

慢性肝炎は初期段階ではほとんど症状が見られないことが多く、肝機能が低下してくると元気・食欲の低下、嘔吐、黄疸、腹水、神経症状などが現れます。特にアメリカンコッカースパニエルなどのコッカースパニエル系の犬種では、銅があまり関与しない慢性肝炎が多く見られるという特徴があります。

肝炎による黄疸は、肝臓の機能低下によりビリルビンの処理能力が低下することで発生します。肝臓は「沈黙の臓器」とも呼ばれ、特に慢性肝炎では症状が現れにくいため、定期的な健康診断が重要です。黄疸が認められた場合は、肝機能の重度な低下を示している可能性があり、早急な診断と治療が必要となります。

犬の黄疸と胆管閉塞の症状

胆管閉塞は犬の黄疸の主要な原因の一つであり、特に肝後性黄疸を引き起こします。胆管閉塞とは、肝臓から十二指腸へとつながる胆管(特に総胆管)が何らかの理由で詰まり、胆汁の流れが滞る状態を指します。

胆管閉塞の主な原因には以下のようなものがあります:

  • 胆石症:胆石が胆管に詰まることで閉塞を引き起こします。犬の胆石は人間と異なり、コレステロールではなく炭酸カルシウムが結晶化することで形成されることが多いです。
  • 胆泥症:胆汁が濃縮されて泥状になり、胆管の流れを妨げる状態です。高脂肪・高カロリーの食事や胆のうの動きが悪くなることで発生しやすくなります。
  • 胆のう粘液嚢腫:胆のう内にムチンという物質が蓄積し、通常はサラサラの胆汁がゼリー状に固まってしまう状態です。
  • 胆管炎:胆管の炎症により、胆管が狭くなったり閉塞したりする状態です。腸からの細菌感染がきっかけになることが多いとされています。
  • 膵炎:膵臓の炎症が胆管に波及し、閉塞を引き起こすことがあります。

胆管閉塞による主な症状には以下のようなものがあります:

  1. 黄疸:最も特徴的な症状で、白目、歯茎、耳の内側などの粘膜や、毛が薄い部分の皮膚が黄色く変色します。
  2. 食欲不振:胆汁が十二指腸に流れないことで消化不良が起こり、食欲が低下します。
  3. 嘔吐・下痢:消化不良や胆汁の逆流により、嘔吐や下痢が見られることがあります。
  4. 腹痛:特に胆石が胆管に詰まった場合、強い腹痛を引き起こすことがあります。犬は腹痛を示すときに、お腹を丸めた姿勢をとったり、触られるのを嫌がったりします。
  5. 元気消失:全身状態の悪化により、活動性が低下します。

胆管閉塞による黄疸は、他の原因による黄疸と比較して特に黄色みが強く現れる傾向があります。これは、胆汁の排泄が完全に妨げられることで、ビリルビンが血中に大量に逆流するためです。

胆管閉塞は緊急性の高い状態であり、完全閉塞の場合は外科的処置が必要になることもあります。特に胆のう粘液嚢腫と診断された場合は、多くのケースで胆のうの切除手術が行われます。

犬の黄疸の早期発見ポイント

黄疸は重大な健康問題のサインであり、早期発見が治療の成功率を高める鍵となります。飼い主として知っておくべき黄疸の早期発見ポイントをご紹介します。

1. 粘膜の観察

黄疸は最初に粘膜部分に現れることが多いため、定期的に以下の部位をチェックすることが重要です:

  • 白目(強膜):最も黄疸が確認しやすい部位です。通常は白色ですが、黄疸があると黄色く変色します。
  • 歯茎:通常はピンク色ですが、黄疸があると黄色みを帯びます。
  • 耳の内側:毛が薄く、血管が透けて見える部分で、黄色く変色していないか確認します。

2. 尿の色の変化

黄疸があると尿の色が濃い黄色~オレンジ色に変化することがあります。通常よりも尿の色が濃くなった場合は注意が必要です。

3. 皮膚の観察

毛が薄い部分(腹部や耳の内側など)の皮膚が黄色く変色していないか確認します。白い被毛の犬では、被毛自体が黄色く変色することもあります。

4. 行動の変化

黄疸自体は痛みを伴いませんが、原因となる疾患によって以下のような行動変化が見られることがあります:

  • 食欲の低下または消失
  • 元気がない、ぐったりしている
  • 水をたくさん飲む
  • 嘔吐や下痢
  • お腹を触られるのを嫌がる

5. 定期的な健康診断

特に中高齢犬(7歳以上)では、年に1~2回の健康診断を受けることをおすすめします。血液検査でビリルビン値を測定することで、目に見える黄疸が現れる前に肝機能の異常を発見できることがあります。

黄疸を発見したらすぐに行動を

黄疸を発見した場合は、緊急性の高い症状として捉え、すぐに動物病院を受診しましょう。特に以下のような症状を伴う場合は、より緊急性が高いと考えられます:

  • 突然の元気消失
  • 繰り返す嘔吐
  • 食欲の完全な消失
  • 腹部の膨満や痛み

早期発見と適切な治療により、多くの場合で予後が改善します。日頃から愛犬の様子をよく観察し、少しでも異変を感じたら獣医師に相談することが大切です。

犬の黄疸の診断方法と検査

黄疸が疑われる場合、獣医師はさまざまな検査を行い、原因を特定します。診断プロセスは通常、以下のような流れで進みます。

1. 問診と身体検査

まず獣医師は、症状の経過や食事内容、薬の服用歴、環境などについて詳しく質問します。特に中毒物質の摂取の可能性がないか、散歩コースや家庭環境なども重要な情報となります。

身体検査では、粘膜や皮膚の黄染の程度、腹部の触診による痛みや腫れの有無、体温、心拍数、呼吸数などをチェックします。

2. 血液検査

黄疸の診断において最も基本的かつ重要な検査です。以下の項目が調べられます:

  • 肝酵素値(ALT、AST、ALP、GGT):肝臓の障害を示す指標です。特にALPとGGTの上昇は胆汁うっ滞を示唆します。
  • ビリルビン値(総ビリルビン、直接ビリルビン、間接ビリルビン):黄疸の程度を数値化します。直接ビリルビンと間接ビリルビンの比率から、黄疸のタイプを推測できることもあります。
  • 血球計算(CBC):赤血球数や形態から溶血性疾患の有無を調べます。
  • 凝固系検査:肝臓は凝固因子を産生するため、肝機能低下では凝固異常が見られることがあります。

3. 画像診断

  • 腹部超音波検査:肝臓、胆のう、胆管、膵臓などの状態を非侵襲的に観察できます。胆管閉塞、胆石、胆のう粘液嚢腫、肝臓の形態変化などを確認できます。
  • X線検査:腹部の全体像を把握するのに役立ちます。特に胆石が石灰化している場合は、X線で確認できることがあります。
  • CT検査・MRI検査:より詳細な画像情報が必要な場合に行われます。特に腫瘍の有無や範囲を調べるのに有用です。

4. 肝生検

慢性肝炎が疑われる場合、確定診断のために肝生検が行われることがあります。肝臓の一部を採取して病理検査を行うことで、炎症の程度や原因(銅蓄積など)を特定できます。方法としては:

  • 細針吸引生検(FNA):細い針を使って肝細胞を採取する比較的低侵襲な方法です。
  • コア生検:より大きな組織片を採取する方法で、全身麻酔下で行われます。
  • 開腹手術または腹腔鏡による生検:より確実に組織を採取する方法です。

5. 特殊検査

原因によっては、以下のような特殊検査が行われることもあります:

  • 胆汁酸負荷試験:肝機能をより詳細に評価するための検査です。
  • 感染症検査:レプトスピラなどの感染症が疑われる場合に行われます。
  • 銅蓄積量測定:採取した肝組織中の銅含有量を測定します。

診断には通常60〜90分程度かかりますが、肝生検など追加検査が必要な場合は、日を改めて検査を行うこともあります。黄疸の原因を正確に診断することで、適切な治療計画を立てることができます。