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犬多発性関節炎の症状と治療法とは?

犬多発性関節炎の症状と治療法

犬の多発性関節炎の概要
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免疫介在性疾患

自分の免疫が関節の滑膜を攻撃し炎症を引き起こす病気

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特徴的な症状

発熱、歩行困難、食欲不振などの全身症状が現れる

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治療法

ステロイドや免疫抑制剤による内科治療が中心

犬多発性関節炎の主要症状

犬の多発性関節炎は、複数の関節に同時に炎症が起こる免疫介在性疾患です。本来は体を守るはずの免疫機能が異常を起こし、自身の関節にある滑膜を異物と認識して攻撃することで発症します。

特発性免疫介在性多発性関節炎の主な症状は以下の通りです。

  • 歩行異常:立ち上がるときや歩き出しに時間がかかる、歩きたがらなくなる
  • 跛行症状:足をかばうようにひょこひょこと歩く
  • 発熱:繰り返し発熱が起こる(約40.6℃まで上昇することもある)
  • 全身症状:食欲不振、元気喪失、活動性の低下
  • 関節症状:関節の腫れや熱感、痛み

興味深いことに、約30%の犬では関節症状を示さず、発熱や活動性の低下などの全身症状のみが現れることがあります。この移動性の跛行は、多発性関節炎に特徴的な症状として知られています。

犬多発性関節炎の原因と診断

犬の多発性関節炎の原因は、免疫複合体の増加にあります。血液や滑液中で免疫複合体が増加し、これが滑膜や腎糸球体に沈着することで炎症が引き起こされます。

診断には以下の検査が必要です。

  • 関節液検査(関節穿刺):最も重要な診断方法で、大人しい犬であれば無麻酔で実施可能
  • 血液検査:白血球数の高値、CRP(C反応性蛋白)の高値が認められる
  • X線検査:初期段階では変化が認められないことが多い
  • その他の検査:抗核抗体(ANA)検査、犬リウマチ因子測定など

組織学的には重度の滑膜炎が見られる一方、関節軟骨や骨にはほとんど病変が認められないのが特徴です。これが関節リウマチとの違いとされています。

犬多発性関節炎の好発犬種と年齢

特発性免疫介在性多発性関節炎は、以下の犬種で好発が見られます。

発症年齢は5歳前後が多いとされており、あらゆる年齢の犬に発症し性差はないとされています。特にミニチュアダックスフンドやウェルシュコーギーペンブロークでは遺伝的素因の存在が疑われています。

手首と足首の関節での発生が最も多く、頚椎(首の骨)にも滑膜が存在するため、ごく稀に首の痛みを示す犬もいます。約70~80%の症例で軽~中等度の蛋白尿が認められ、約40%の犬では死後に糸球体腎炎が確認されることも報告されています。

犬多発性関節炎の治療法と予後

治療は免疫抑制療法が中心となり、以下のような段階的なアプローチが取られます。

急性期治療

維持療法

  • ステロイド剤の徐々な減量
  • 副作用軽減のために他の免疫抑制剤(アザチオプリンやシクロスポリンなど)の併用
  • 最低用量での継続投薬

治療反応性は臨床症状とCRPの値で確認され、一般的にステロイド剤の投与により症状は改善します。

予後について

  • 約14%の症例は1年以内に休薬可能
  • 多くの症例で継続的な治療が必要
  • 関節の靭帯が破壊されることは極めて稀で、治療がうまく行けば良好な経過が期待できる

ただし、リウマチ様関節炎の場合は進行性の疾患であるため、治療目的は「治す」ではなく「進行を遅らせる」ことになります。

犬多発性関節炎の家庭でのケアと予防

犬の多発性関節炎に対する特異的な予防方法はありませんが、日常生活でのケアが症状の軽減に役立ちます:

環境の整備

  • 滑りやすい床を避け、クッション性のあるマットを敷く
  • 寒さから守る(特に冬場)
  • 急なジャンプや激しい運動を避ける

体重管理と運動

  • 適切な体重維持が重要(過度の体重は関節への負担となる)
  • 適度な運動で関節の柔軟性を保つ
  • 日常的に軽い散歩や遊びを取り入れる

補助療法

  • グルコサミンやコンドロイチンなどのサプリメント
  • マッサージや温熱療法による物理療法
  • 痛みの緩和や血行の促進効果

早期発見のポイント

  • 歩き出しが悪い、歩きたがらないなどの様子を観察
  • 定期的な獣医師の診察を受ける
  • 異常を感じたら早めに動物病院に相談

犬の多発性関節炎は免疫介在性疾患として、継続的な管理が必要な病気です。早期発見と適切な治療により、多くの犬で良好な生活の質を維持することが可能です。獣医師と密に連携を取りながら、長期的な治療計画を立てることが重要です。