PR

循環器と犬の健康管理について

循環器と犬の健康管理について

犬の循環器疾患の基本知識
🩺

主要な心臓病

僧帽弁閉鎖不全症、心筋症、肺高血圧症などの特徴

🔍

診断方法

聴診、心エコー、レントゲン検査による早期発見

💊

治療と管理

内科療法、運動制限、食事管理による総合的なケア

犬の循環器疾患の主要な病気

犬の循環器疾患で最も一般的なのは僧帽弁閉鎖不全症であり、小型犬の中高齢期に多く発症します 。この病気は心臓の僧帽弁が正常に閉じなくなることで血液の逆流が起こる疾患です 。特にチワワ、ポメラニアンマルチーズ、トイ・プードルなどの小型犬では、12歳での罹患率が30-60%を超えるという報告があります 。

参考)第1章/愛犬が「僧帽弁閉鎖不全症」と診断されたら読む本

心筋症も犬の重要な循環器疾患の一つであり、特に拡張型心筋症は大型犬に多く見られます 。心筋症では心臓の筋肉が厚くなったり薄くなったりすることで、血液を送り出す機能が低下します 。

参考)心臓病科の主な病気

肺高血圧症は肺動脈内の圧力が異常に高くなる病気で、他の心臓病や肺疾患の合併症として発症することが多く、進行すると生命に関わる重篤な状態となります 。

参考)循環器疾患

循環器疾患の診断と検査方法

犬の循環器疾患の診断には聴診による心雑音の確認が最も基本的で重要な検査です 。獣医師が聴診器を使用して心雑音や異常な拍動の有無を確認し、初期段階でも心臓の異常を発見することが可能です 。
心臓超音波検査(心エコー)は循環器疾患の診断において最も重要な検査の一つで、心臓の構造や機能、血液の流れをリアルタイムで観察できます 。僧帽弁の状態や心筋の厚さ、血液の逆流の程度を詳細に評価することができます 。

参考)循環器専門診療のご相談は三重県四日市市の動物病院|三重動物医…

胸部レントゲン検査では心臓のサイズや形状、肺の状態を確認し、心拡大や肺水腫の有無を判断します 。血液検査では心臓に負担がかかった際に上昇するBNPやNT-proBNPなどの心筋マーカーを測定し、心臓病の診断と病期評価に役立てます 。

参考)動物病院が教える犬や猫の心臓病について〜早期発見のポイントと…

循環器疾患の症状と早期発見のポイント

循環器疾患の初期症状としてが最も多く見られ、特に夜間や興奮時に出やすくなります 。運動時の疲れやすさや息切れ、散歩を嫌がるような行動の変化も重要な初期サインです 。

参考)心臓病のご相談は滋賀県守山市・栗東市・草津市|フルール動物病…

病気が進行すると呼吸困難、失神チアノーゼ(舌や歯茎の紫色化)などの重篤な症状が現れます 。肺水腫が発症すると横になって眠れなくなったり、腹水により腹部が膨らんできたりします 。
早期発見のためには定期的な健康診断が不可欠で、特に8歳以上の小型犬や心疾患好発犬種では年1回以上の心臓検査が推奨されます 。家庭では安静時の呼吸数を測定し、1分間に40回を超える場合は異常のサインとして注意が必要です 。

循環器疾患の治療法と内科療法

循環器疾患の治療は内科療法が主体となり、病期に応じて複数の薬剤を組み合わせて使用します 。僧帽弁閉鎖不全症では強心剤、血管拡張薬、利尿剤などを用いて心臓の負担を軽減し、症状の進行を遅らせます 。

参考)犬の心不全の症状と原因、治療法について

心筋症の治療では心収縮力を改善する強心剤、心臓の負担を減らす血管拡張薬、体内の水分調整を行う利尿剤を使用します 。不整脈がある場合は抗不整脈薬により心拍数をコントロールし、突然死のリスクを軽減します 。

参考)循環器診療

外科的治療として、僧帽弁閉鎖不全症に対する僧帽弁形成術が最も効果的な治療法とされていますが、高度な技術と設備が必要なため実施できる施設は限られています 。最近では僧帽弁修復術の技術向上により短期成績の改善が報告されています 。

参考)https://onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1111/vsu.14229

循環器疾患における革新的治療法と特異的対策

近年、犬の循環器疾患に対する幹細胞療法が注目されており、間葉系幹細胞を用いた心筋再生治療の研究が進んでいます 。骨髄、脂肪組織、ワルトン膠由来の幹細胞が心機能改善、線維化抑制、血管新生促進などの効果を示すことが報告されています 。

参考)https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC11940628/

肺高血圧症に対しては、ホスホジエステラーゼ5型阻害薬であるシルデナフィルによる治療が有効とされています 。この薬剤は一酸化窒素-cGMP経路に作用して血管拡張効果をもたらし、臨床症状の改善が期待できます 。

参考)https://www.jstage.jst.go.jp/article/jvcm/3/1/3_8/_pdf

心筋保護の分野では、心臓手術における修正Del Nido心筋保護液の使用により、従来のSt. Thomas II液と比較して手術時間の短縮と心筋保護効果の向上が報告されています 。また、経カテーテル的僧帽弁縁々縫合術などの低侵襲治療法も開発が進んでいます 。

参考)https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC11545755/

循環器疾患の予防と生活管理

循環器疾患の予防には適正体重の維持が最も重要で、肥満は心臓に大きな負担をかけるため、バランスの取れた食事管理が必要です 。特に心疾患の犬には塩分控えめの療法食や、DHAやEPAを含む食事が推奨されます 。

参考)心臓病のリスクから愛犬を守る|症状と予防策を獣医師が解説-ア…

運動管理では犬の体調に合わせた軽めの運動を心がけ、散歩は短時間で複数回に分けて行うことが効果的です 。高齢犬や心疾患好発犬種では、ゆっくりとしたペースでの散歩や、気温の穏やかな時間帯での運動が推奨されます 。
口腔ケアも重要な予防策の一つで、歯周病菌が血液を経由して心疾患のリスクを高めることが明らかになっているため、定期的な歯科処置と日常的な口腔ケアが必要です 。ストレス管理も大切で、興奮や過度な運動を避け、穏やかな環境で過ごせるよう配慮することが循環器の健康維持に役立ちます 。

参考リンク:獣医循環器学会の最新ガイドライン

動物循環器病学会学術誌