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肩甲骨の犬の健康問題と治療方法

肩甲骨と犬の健康管理

犬の肩甲骨の基本知識
🦴

肩甲骨の重要性

前足の動きと体重支持の中心的役割

運動機能への影響

歩行、走行、ジャンプの基本動作を支配

🔄

回転運動

前足を前後に動かす際の特殊な回転動作

犬の肩甲骨の解剖学的特徴

犬の肩甲骨は人間とは大きく異なる構造を持っています。犬には鎖骨がないため、肩甲骨は筋肉のみで体幹と接続されています。この構造により、犬の前足は体重を支える際に肩甲骨で胸筋によって支えられる仕組みになっています。

参考)犬の筋肉を知る

肩甲骨の上部と第1、第2胸椎が接する部分は「キ甲」と呼ばれ、犬の体高測定の基準点としても使用されています。この部位は肩の上、首の付け根辺りに盛り上がった構造として観察することができます。

参考)【ホームメイト】キ甲|ペットショップ用語辞典

犬は歩行時に肩甲骨を回転させる独特の運動パターンを持っており、この動作が前足の推進力生成において重要な役割を果たしています。前足重心の犬にとって、肩甲骨周辺の筋肉は立っているだけでも常に負荷がかかる状態にあります。

犬の肩甲骨の不安定症の症状と原因

肩関節不安定症は、肩の関節が本来の位置から外れやすくなる状態を指し、特にトイ犬種のような小型犬に多く見られます。この疾患の主な症状として、跛行(歩行の異常)が最も一般的に観察されます。

参考)犬の肩関節不安定症について|愛犬の歩行異常を見逃さないで!|…

痛みを避けるために前足を地面から持ち上げたまま歩く行動や、立ち止まるときに前足を浮かせている様子、歩くときに頭が上下に動く転頭運動などが特徴的な症状です。病状が進行すると、肩関節が脱臼したり変形性関節症が併発したりして、関節の痛みがより一層強くなります。
原因については、生まれつき肩関節の形が不完全である場合や、滑りやすい床での生活が原因となる慢性外傷が挙げられます。トイ・プードルなどの小型犬で発生が多いことから、遺伝的要因も関与している可能性があります。また、外傷、過度の運動による慢性的な関節損傷、肥満による関節への過剰な負担も重要な原因因子とされています。

犬の肩甲骨筋肉の機能と動作パターン

犬の肩甲骨周辺の筋肉は、複雑で精密な動作システムを構成しています。僧帽筋は肩甲骨の内転、挙上、後引の作用を持ち、首から背中にかけての背骨の両脇から肩甲棘まで伸びています。この筋肉が硬くなると、前足全体の動きが悪くなってしまうため、しっかりとしたケアが必要です。

参考)肩甲骨の動きに関わる筋肉①

菱形筋は第2〜6胸椎から項靭帯にかけて起始し、肩甲軟骨・肩甲骨内側に終止して、肩甲骨の挙上、前引、内転に関与します。腹鋸筋は第1〜7肋骨と頸骨から起始し、肩甲下筋に終止して、肩甲骨の前引、後引、下降、外転を担っています。
歩行時には、肩甲骨上部と頭部、頸椎、胸椎の間をつなぐ筋肉が前足を後ろへ蹴り出す際に働き、この部位にコリが生じると肩甲骨の回転が阻害されて前足を前に出しにくくなります。シニア期になると「歩くのが疲れる」ため長距離歩行が困難になる原因となることがあります。

犬の肩甲骨骨折と合併症のリスク

犬の肩甲骨骨折は全体の骨折の中では発生頻度が低いものですが、重度の外力が加わることで起こるため、他の重大な外傷を伴うことが多いのが特徴です。交通事故や高所からの落下といった状況で発生し、特に肺損傷との合併が注意すべき重要な問題となります。

参考)犬の肩甲骨骨折と肺損傷|見落としやすい外傷の危険性とは

肺損傷は見た目ではわかりにくく、命に関わることもあるため十分な注意が必要です。事故や転落の後に、肩を痛がる、息が荒い、ぐったりしているなどの症状が見られた場合は、すぐに動物病院で詳しい検査を受けることが重要です。
肩甲骨骨折の診断には、身体検査(視診と触診)とレントゲン検査が主要な手段となります。レントゲン検査によって肩関節の構造や周囲の炎症状態、骨の形状、変形性関節症などを確認できるため、診断に欠かせない検査となっています。関節鏡検査という、関節内部に極めて細い内視鏡を挿入して直接的に肩関節の状態を調べる検査も、診断と同時に治療を行うことが可能な先進的な手法として利用されています。

犬の肩甲骨の治療法と予防対策

肩関節不安定症の治療には、内科治療と外科治療の二つのアプローチがあります。内科治療では、関節の炎症を抑え痛みを和らげるために鎮痛剤や炎症を抑えるサプリメントが用いられます。鍼治療も効果的な選択肢の一つで、極細の鍼を使って痛みを感じることなく関節周囲の筋肉に刺激を与え、筋肉のこりや血流を改善して症状の緩和を図ります。
筋肉をつけることも重要な治療要素であり、バランスの良い食事と関節に負担をかけない程度の運動を継続することが大切です。先天的な関節構造の異常が原因の場合や、内科治療だけでは十分な効果が得られない場合には、外科手術による関節固定が検討されますが、これは治療の最終手段とされており、実際に手術が必要となるケースは比較的稀です。
予防対策として最も効果的なのは、滑りやすいフローリングの上に滑り止めのマットを敷くことです。この環境整備により肩関節にかかる負担を減らし、肩関節の炎症予防に繋がります。愛犬の歩行パターンや行動に注意を払い、普段と異なる様子や痛みのサインが見られた場合は、早期に動物病院での診察を受けることが重要です。
多くの場合、内科治療や環境の調整により、手術をすることなく治療できるケースが多いため、愛犬の歩き方などに違和感がある場合や、いつもと違う様子に気づいた場合は、すぐに専門医に相談することが推奨されます。
上腕二頭筋腱炎などの関連疾患も肩甲骨の機能に影響を与える可能性があり、特に運動量の多い中〜大型の成犬や老犬に見られることが多いため、定期的な健康チェックと適切な運動管理が重要です。

参考)犬の上腕二頭筋腱炎について|運動量の多い中〜大型犬は要注意!…