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血清学と犬の健康診断で見つかる病気の早期発見

血清学と犬の健康管理における重要性

犬の血清学的検査の主要な役割
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感染症の早期診断

血清中の抗体・抗原を検出し感染症の有無を判定

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ワクチン効果の確認

抗体価測定によりワクチンの有効性を評価

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免疫異常の検出

自己免疫疾患や免疫不全の診断をサポート

血清学的検査の基本原理と犬の診断への応用

血清学的検査は、血清中に存在する抗原や抗体の検出により、病気の診断や感染状況の把握を行う検査方法です 。犬においても人間と同様に、病原微生物の感染により血清中に特異的な抗体が産生されるため、これらを検出することで感染症の診断が可能となります 。

参考)家畜の感染症の検査方法(血清学的検査)について

血清学的検査は、病原微生物の感染による疾患の診断やモニタリングに用いられ、生体内にウイルスや細菌、異物が侵入すると、それに抵抗する抗体という物質を作り体を守ろうとする働きを利用しています 。血清学的検査では、過去の感染によって血清中に抗体ができているかどうか、またどれくらいの量の抗体ができているのかを調べることができます 。
犬の血清学的検査において最も重要な点は、その検査結果が獣医師による総合的な診断の一部として活用されることです 。血清学的検査単独では確定診断に至らない場合もあるため、臨床症状と合わせた総合的な判断が必要となります 。

参考)自己免疫疾患と検査 – 長谷川動物病院 土日も診療

犬の感染症診断における血清学検査の活用法

犬の感染症診断では、血液中の抗原(微生物や寄生虫そのもの)の有無や抗体(微生物や寄生虫に感染した時に免疫反応により体内につくられる物質)の有無を調べることで感染しているかどうかを知ることができます 。犬の場合、検査できる主要な感染症には、犬ジステンパーウイルス、犬伝染性肝炎ウイルス、犬アデノ2型ウイルス、犬パラインフルエンザウイルス、犬コロナウイルス、犬パルボウイルス、レプトスピラ、ブルセラカニス、ライム病、バベシア、犬糸状虫、トキソプラスマなどがあります 。

参考)http://www.anicom-sompo.co.jp/doubutsu_pedia/node/1427

フィラリア検査では、ミクロフィラリアの検出ならびに抗原検査を行い、犬のフィラリア感染の有無を調べることができます 。犬の場合、年に1度春にフィラリアの血液検査が必要になり、もしフィラリアに感染している状態でフィラリアの予防薬を飲ませると副作用が出る場合があるため、それを避けるために血液検査でフィラリア感染有無の確認が必要です 。

参考)血液検査でわかること

犬糸状虫成虫循環抗原の検査は、血清学的検査の中でも特に重要な項目の一つで、身体障害者補助犬の健康管理記録においても必須項目として位置付けられています 。この検査により、フィラリア症の早期発見と適切な治療につなげることが可能になります。

参考)https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-10900000-Kenkoukyoku/0000155017.pdf

犬のワクチン抗体価検査による免疫状態の評価

ワクチン接種後に抗体価(体内に産生された抗体の量)を調べることで、ワクチンの有効性の確認をすることができます 。犬のコアワクチンに対する免疫をモニターするための血清学的検査により、コアワクチン再接種の客観的な指標として活用できます 。

参考)感染症検査(犬):ワクチン抗体価セット

犬用抗体検査「ワクチチェック」は、日本で唯一国の認可を受けたコアワクチンの検査で、血液を採取して専用キットを使用するだけで簡単にチェックできます 。抗体を一定以上持っていれば、免疫力が維持されているので、コアワクチンの追加接種は必要ないと判断でき、逆に抗体がついていないのであれば、その事実に基づいて対策を行うことができます 。
ワクチン抗体価セット(犬)では、CDV(犬ジステンパーウイルス)、CPV(犬パルボウイルス)、CAV(犬アデノウイルス)の3つの主要な感染症に対する抗体価を測定し、それぞれの感染症に対し3段階(低抗体価、中等度抗体価、高抗体価)で判定されます 。検査結果は、感度・特異度・陽性陰性一致率が高い精度で確認されており、CDVで96.7%の感度と100.0%の特異度を示しています 。

犬の自己免疫疾患の血清学的診断方法

犬の自己免疫疾患の診断では、複数の血清学的検査が活用されています。リウマチ因子は、変性IgG抗体を抗原として形成される自己抗体で、犬の関節リウマチの診断のために検査されます 。リウマチは、変性IgG抗体(抗原)とリウマチ因子(抗体)とからなる免疫複合体が、関節内で炎症を引き起こすことで関節が破壊される疾患です 。
抗核抗体(ANA)は、真核細胞の核内に含まれる様々な抗原性物質に対する抗体群の総称で、犬の全身性紅斑性狼瘡(全身性エリテマトーデス:SLE)の診断基準の一つです 。しかし、健康な犬の15%、色々な感染症の犬の20%でも陽性が認められるため、臨床症状との総合的な判断が必要です 。
クームステスト(抗グロブリン試験)は、赤血球表面に付着している抗体(IgG、IgM)や補体(C3)、血清中の不規則抗体が存在しているかどうかを調べるための検査で、免疫介在性溶血性貧血(IMHA)の診断のために行われます 。患犬の赤血球表面に結合している抗赤血球抗体を検出する直接クームステストと、患犬の血清中に存在する不規則抗体を検出する間接クームステストがあり、犬のIMHAの診断における感度は61~82%、特異度は95~100%とされています 。

犬の血清学検査における技術革新と実用化の現状

近年、犬の血清学検査技術は大幅な進歩を遂げており、特に狂犬病の抗体検査において革新的な技術が開発されています。フィリピンで実施された犬の血清学研究では、大分大学西園教授と大分の民間企業のアドテック社が共同開発した急速中和抗体検査(RAPINA)を用いた分析が行われており、この技術により迅速で正確な狂犬病抗体価測定が可能になっています 。

参考)イヌの血清学研究を実施(2022年6月10日)

犬の血清学検査では、血清の取り扱いにも特別な配慮が必要で、犬の血清(血液)を外国から日本に送る場合は、日本の法律上、輸入検疫を受ける必要があります(猫の血清(血液)は不要)。血清は、ハンドキャリー(人による携帯輸送)での日本国内への輸送も可能で、犬血清の場合は、通関前に到着空港内の動物検疫所カウンターで、検疫を受けた後入国する必要があります 。

参考)狂犬病に対する抗体価の検査について:動物検疫所

定期的な血液検査による健康管理において、半年に1回や1年に1回血液検査をすることは大切な健康管理であり、人間より生きるスピードが早い犬にとって、病気の早期発見につなげるためには、このくらいの頻度で検査することが推奨されています 。健康な時に血液検査をしておくことでその子の正常値を知ることができるため、もし具合が悪くなった時でも何の値が変化しているのかを判断することが可能になります 。
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