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肝疾患(犬)症状と治療方法完全ガイド

肝疾患(犬)症状と治療方法

犬の肝疾患基本情報
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初期症状の特徴

食欲低下、嘔吐、下痢などの消化器症状から始まり、進行すると黄疸や腹水が現れます

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主な治療法

薬物療法と食事療法の組み合わせが基本で、症状に応じて対症療法を併用します

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定期検査の重要性

5歳以降は年1-2回の血液検査で早期発見・早期治療が可能になります

肝疾患(犬)の初期症状と進行段階

犬の肝疾患は「沈黙の臓器」と呼ばれる肝臓の病気であるため、初期段階では目立った症状が現れにくいことが特徴です。多くの飼い主が気づかないうちに病気が進行してしまうケースが非常に多く見られます。
初期症状の見極めポイント

  • 食欲の低下や食べ方の変化 🍽️
  • 軽度の嘔吐や下痢
  • 元気がない、活動量の減少
  • 水を飲む量の変化

病気が進行すると、より明確な症状が現れるようになります。中期から後期にかけての症状には以下のようなものがあります。

  • 黄疸: 白目や歯茎が黄色くなる
  • 腹水: お腹が膨らむ
  • 出血傾向: 鼻血や歯茎からの出血
  • 神経症状: ふらつきや意識障害(肝性脳症

特に注意すべきは、これらの症状が現れた時点で、すでに肝機能の75%以上が失われている可能性があることです。そのため、症状が出る前の定期的な健康診断による早期発見が極めて重要となります。

肝疾患(犬)の主な種類と特徴

犬の肝疾患にはいくつかの種類があり、それぞれ原因や症状、治療方法が異なります。主要な肝疾患について詳しく見ていきましょう。
急性肝炎
急性肝炎は肝臓に急激な炎症が起こる状態で、細菌感染や毒物摂取が主な原因となります。症状は急激に現れ、嘔吐や下痢、食欲不振が見られます。適切な治療により回復する可能性が高い疾患です。
慢性肝炎・肝硬変
慢性的な炎症が続くことで肝臓の組織が徐々に線維化し、最終的に肝硬変に進行します。ドーベルマン・ピンシャー、コッカー・スパニエル、ラブラドール・レトリーバーなどの特定品種で発症しやすい傾向があります。
門脈体循環シャント
先天的な血管の異常により、本来肝臓を通るべき血液が迂回してしまう疾患です。若い犬に多く見られ、外科手術により完治する可能性があります。
胆泥症・胆石症
胆汁の流れが悪くなることで起こる疾患で、特に小型犬に多く見られます。食事療法と薬物療法の組み合わせで治療を行います。
これらの疾患の中でも、慢性肝炎から肝硬変への進行は不可逆的な変化であるため、早期の診断と適切な治療が極めて重要です。

肝疾患(犬)の治療方法と薬物療法

肝疾患の治療は原因や症状の進行度によって大きく異なりますが、基本的には薬物療法と食事療法を組み合わせた包括的なアプローチが取られます。
薬物療法の基本方針
肝疾患の薬物療法では、肝臓への負担を軽減しながら残存する肝機能を保護することが最優先されます。主に使用される薬剤には以下があります。

  • 肝保護剤: 肝細胞の保護と再生を促進 💊
  • 利胆薬: 胆汁の流れを改善
  • 強肝薬: 肝機能の向上をサポート
  • ビタミン剤: 不足しやすいビタミンB群やビタミンKの補給

対症療法による症状管理
症状に応じた対症療法も重要な治療の一部です。

  • 下痢・嘔吐対策: 消化器症状を抑える薬剤
  • 利尿薬: 腹水の管理
  • 抗生物質: 感染症の予防・治療
  • ステロイド薬: 炎症の抑制(慢性肝炎の場合)

慢性肝炎の治療では、プレドニゾロンを中心とした副腎皮質ステロイドが第一選択薬となることが多く、大型犬では免疫抑制剤のアザチオプリンも併用されます。
治療効果の監視
薬物療法中は定期的な血液検査により、治療効果と副作用の有無を慎重に監視する必要があります。検査結果に基づいて薬剤の種類や用量を調整し、最適な治療を継続していきます。

肝疾患(犬)の食事療法と栄養管理

肝疾患の治療において食事療法は薬物療法と同等かそれ以上に重要な役割を果たします。肝臓の機能を維持・回復させるためには適切な栄養管理が欠かせません。
食事療法の基本原則
肝疾患の食事療法では、肝臓への負担を最小限に抑えながら必要な栄養を確保することが重要です。

  • 低脂肪食: 脂肪の消化には胆汁が必要なため、脂肪含量を制限
  • 良質なタンパク質: 必要最小限の高品質タンパク質を摂取
  • 炭水化物の調整: エネルギー源として適度な炭水化物を確保
  • ビタミン・ミネラルの補給: 特にビタミンB群とビタミンKの補給

進行度別の食事管理
肝疾患の進行度に応じて食事内容を調整する必要があります。
軽度から中等度の場合:

  • 処方食(肝臓サポート用)の使用
  • 少量頻回の給餌(1日3-4回に分割)
  • 消化しやすい形態での提供

重度・肝性脳症がある場合:

  • 低タンパク質食への変更
  • アンモニア産生を抑える特殊な食事
  • 場合によっては経鼻カテーテルでの栄養補給

食事療法のポイント 🍽️

  • 新鮮な水を常に利用できるようにする
  • おやつや人間の食べ物は避ける
  • 食事の時間を規則正しく保つ
  • 食欲不振の場合は獣医師と相談して食欲増進剤の使用を検討

食事療法は長期間継続する治療法であるため、愛犬が美味しく食べられる工夫も大切です。獣医師と相談しながら、最適な食事プランを作成していきましょう。

肝疾患(犬)の予防と定期検査の重要性

肝疾患の多くは症状が現れる前に進行してしまうため、予防と早期発見が極めて重要です。特に5歳以降の犬では定期的な健康診断を受けることが推奨されています。
効果的な予防策
肝疾患の予防には以下の取り組みが効果的です。

  • ワクチン接種: 犬アデノウイルス感染症の予防
  • 有害物質の管理: 薬物や化学物質への接触を避ける
  • 適切な体重管理: 肥満による脂肪肝の予防
  • ストレス軽減: 慢性的なストレスは肝機能に悪影響

定期検査の実施時期 📋
年齢に応じた適切な検査スケジュールを設定することが大切です。

  • 5歳未満: 年1回の基本的な血液検査
  • 5-7歳: 年1-2回の詳細な健康診断
  • 8歳以上: 年2回以上の定期検査
  • 高リスク品種: より頻繁な検査が推奨

検査項目と意義
肝機能を評価する主要な検査項目には以下があります。

  • ALT(GPT): 肝細胞の障害を示す酵素
  • AST(GOT): 肝細胞や心筋の障害を示す酵素
  • ALP: 胆道系の障害を示す酵素
  • ビリルビン: 黄疸の指標
  • アルブミン: 肝臓での蛋白質合成能力の指標

早期発見のメリット
定期検査による早期発見には以下のような利点があります。

  • 症状が現れる前の治療開始が可能
  • 進行の抑制により愛犬のQOL(生活の質)を維持
  • 治療費の軽減(早期治療は費用対効果が高い)
  • 飼い主の精神的負担の軽減

肝疾患は完治が困難な場合も多いですが、適切な管理により愛犬と長く幸せな時間を過ごすことができます。定期的な検査と獣医師との連携を通じて、愛犬の健康を守っていくことが何より大切です。
日本臨床獣医学フォーラム(獣医師向け肝疾患診療ガイドライン)