免疫療法と犬のがん治療
免疫療法の犬への効果と治療原理
免疫療法は、犬の体内にある免疫細胞を活用してがんと闘う治療法です 。従来の手術、放射線療法、化学療法に続く第四の治療選択肢として、獣医療界で注目が高まっています 。
犬の免疫療法の効果は、体内の弱った免疫細胞を体外で活性化・増殖させ、再び体内に戻すことで発揮されます 。活性化されたリンパ球は、がん細胞を直接攻撃するだけでなく、痛みを和らげる物質も分泌することが報告されており、QOL（生活の質）の改善にも貢献します 。
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特に注目すべき点は、免疫療法ががんの再発や転移の防止に効果的であることです 。外科手術後の微細ながん細胞の取り残しや、全身に広がったがんに対しても効果が期待できる治療法として評価されています 。
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犬のがん治療における免疫療法の効果は、がん細胞を完全に消失させるよりも、がんの成長を抑制し、症状の緩和を図ることが主な目的となります 。食欲不振や元気の低下といった症状の改善により、通常の生活を取り戻すことができるケースが多数報告されています 。
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CAT療法と犬のリンパ球活性化システム
CAT（活性化Tリンパ球）療法は、犬の免疫療法の中でも最も基本的な治療法として位置づけられています 。この療法では、犬の血液から採取したリンパ球を体外で約1000倍まで増殖させ、活性化した状態で体内に戻します 。
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治療の流れとしては、まず犬から10-12mlの血液を採取し、そこからリンパ球を分離します 。分離されたリンパ球に活性化因子を加えて2週間培養することで、がん細胞を攻撃する能力が大幅に向上したリンパ球が完成します 。
参考）免疫細胞療法という選択肢
CAT療法の犬への効果として、がんの再発・転移防止だけでなく、抗がん剤による免疫力低下の回復も重要な役割を果たします 。また、末期がんの犬においても体調の改善が期待でき、食欲の回復や活動性の向上が観察されています 。
標準的な治療プロトコールでは、2週間間隔で4〜6回の投与を行い、その後月1回の頻度で4〜6回継続します 。このサイクルを通じて、犬の免疫システム全体が強化され、長期的ながんとの闘いをサポートします。
樹状細胞療法による犬のがん標的治療
樹状細胞（DC）療法は、犬のがん治療において特異的免疫療法として分類される、より高度な治療法です 。樹状細胞は「免疫の司令塔」と呼ばれ、リンパ球にがん細胞の特徴を教育し、的確にがんを攻撃させる役割を担います 。
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犬のDC療法では、採取した血液中の単球を1週間かけて樹状細胞に変化させます 。この樹状細胞にがんの特徴（抗原）を覚えさせることで、体内でリンパ球やナチュラルキラー細胞を適切に活性化し、がんへの攻撃力を向上させます 。
DC-CAT療法として知られる組み合わせ治療では、樹状細胞療法と活性化リンパ球療法を併用します 。採取した18mlの血液のうち6mlを樹状細胞の作成に、残り12mlをCAT療法に使用することで、相乗効果が期待できます 。
犬における樹状細胞療法の効果は、がんの種類によって異なりますが、肛門嚢腺癌や肺癌のようにHER2タンパク質を発現するがんに対して特に有効性が示されています 。この治療法により、従来の抗がん剤では困難だった標的治療が可能となりました。
犬の免疫療法における副作用とリスク評価
犬の免疫療法における最大の利点は、副作用が極めて軽微であることです 。自己の細胞を使用するため、アレルギー反応や重篤な合併症のリスクが最小限に抑えられています 。
報告されている主な副作用は軽度の発熱のみで、これも一時的な症状として数時間から1日程度で自然に改善します 。人間の抗がん剤治療で見られる脱毛、嘔吐、免疫抑制といった深刻な副作用は、犬の免疫療法では発生しません 。
参考）https://animal.doctorsfile.jp/ah/16616/mt/2/
犬の免疫療法の安全性の高さは、治療中の生活の質が維持できることを意味します 。食欲低下や元気の喪失といった症状が起こりにくいため、高齢犬や体力の弱った犬にも適用可能な治療選択肢となっています 。
ただし、犬の免疫療法にも適応外となるケースがあります。T型リンパ腫、末期リンパ腫、白血病、エイズ感染症、敗血症の犬では、免疫細胞自体がウイルスに感染する可能性があるため治療適応外となります 。これらの疾患を持つ犬では、事前の詳細な検査による適応判定が必要です。
犬の免疫療法費用と治療期間の現実
犬の免疫療法にかかる費用は高額になる傾向があり、飼い主にとって重要な検討事項です 。CAT療法では初回が66,000〜88,000円、2回目以降が66,000〜77,000円程度が相場となっています 。
参考）犬の免疫療法について、費用や効果、対応している動物病院などに…
DC-CAT療法の場合、1回あたり88,000円程度の費用がかかり、通常5〜6クールの治療が推奨されるため、総額で40〜50万円程度の治療費を想定する必要があります 。これに加えて初診料、再診料、各種検査費用も別途必要となります 。
犬の免疫療法における治療期間は、がんの種類や進行度によって異なります。標準的なプロトコールでは、最初の2週間間隔での集中治療期間を経て、月1回のメンテナンス期間に移行します 。全体として6ヶ月から1年程度の継続治療が一般的です。
費用負担を軽減する方法として、動物病院によっては複数回分の治療を一括で契約することで割引が適用される場合があります 。また、ペット保険の中には免疫療法を補償対象とする商品もありますが、事前に保険内容の確認が必要です 。