縄張り意識の犬との健康的な共生
縄張り意識の犬が見せる基本的な行動パターン
犬の縄張り意識は、オオカミの祖先から受け継がれた本能的な行動です。犬が自分のテリトリーと認識している場所に、よその人間や動物が近づいてきた時、縄張りの境界線付近で激しく吠えたてる行動は、縄張り意識からくる典型的な反応です。これは犬が群れと認識している家族を守ろうとする防衛本能の表れでもあります。
参考)犬が自分のテリトリー(縄張り)を持つ理由|いぬのきもちWEB…
縄張り意識の強い犬は、警戒心と同時に恐怖心も持っており、恐怖心を持っているからこそ警戒心が強くなり、縄張りを守ろうと激しく吠えるのです。この行動は、犬にとって本来は安心できる場所を守るための行動であり、背景には不安が存在していると考えられています。
縄張り意識の強い犬の特徴として、警戒心が強い、怖がり、自立心が強いという性格傾向が挙げられます。また、来客に対する反応は「吠える」「唸る」「攻撃する」「逃げる」などがありますが、その犬の縄張り意識の強さや侵入してくる人に対して持っているイメージによって反応は変わってきます。
参考)https://wanchan.jp/column/detail/22169?p=1
縄張り意識による犬の無駄吠え対策方法
縄張り意識による無駄吠えは、犬が家族や同居者以外の来客を敵と判断することが多く見られます。この問題を解決するためには、まず犬がなぜ吠えるのかを理解することが重要です。吠えなくて済む環境づくりや飼い主の考え方を変えることで解決できる場合があります。
参考)犬の無駄吠えはしつける前に対策を!具体的な対処法とは?
効果的な対策として、色々な環境に慣れさせることが挙げられます。縄張り意識の強い犬は、他の犬や他の人に慣れていない場合が多く、社会性が養われていないため、恐怖心を抱いてしまいます。様々な犬や人との交流を持たせ、社交性を身に付けることで、縄張りを荒さない犬がいることや、家族以外にも優しい人がいることを覚えさせることができます。
吠えたら無視をすることも重要な対策です。「ダメ!」と声をかけ、落ち着くのを待ち、落ち着いたら褒めてあげることで、吠えても無駄で、やめたら褒められると覚えさせることができます。ただし、褒めるタイミングには注意が必要で、吠えたすぐ後に褒めると、吠えたから褒められたと勘違いしてしまいます。
縄張り意識の犬に必要な社会化トレーニング
犬の社会化は、新しい場所、もの、ひと、風景、音、出来事などを犬に体験させていくことを指します。効果的に社会化を行うことは、犬の心と体の健康的な発育と将来に渡り大きく影響するため、非常に重要です。犬の社会化期は生後4週から12週ごろであり、この時期にほかの人や犬と触れ合い、刺激に慣れさせる社会化を行うことが最も重要です。
参考)犬の無駄吠えの理由とは?やめさせる方法を行動診療科獣医が解説…
社会化が不十分だと、人や犬に対し心を閉ざす、音に対して過敏に吠える、パニックになり逃げるなど過剰反応する、常同行動を示すなど、犬が問題行動を示すようになってしまいます。成犬でも学習のタイミングが遅いと思われがちですが、ゆっくり慣らしていければ、苦手な刺激でも克服できることがよくあります。
社会化を進める際の注意事項として、詰め込まない、少しずつ体験させる、犬の様子を見ながら進める、怖がっている時は無理強いしない、おやつやおもちゃも使って楽しみながら新しい環境に慣らすことが重要です。具体的には、学校、公園、歩道などの場所、車や自転車などのもの、他人や子供などのひと、ドライヤーや音楽などの音に慣れさせることが効果的です。
縄張り意識による犬の攻撃性とストレス管理
縄張り性攻撃行動は、犬が自分の縄張りと認識している領域が侵入された時に生じる攻撃行動です。軽く吠えるといったものから、唸る、歯を剥く、突進する、毛を逆立てる、咬みつくなどといったものまでさまざまな段階があります。この行動は、攻撃によって自分の縄張りを防御することに成功したという経験に大きく影響されると言われています。
縄張り意識が強い犬は、不安と緊張にさらされており、家の中にいても屋外の気配を常に探っていて強いストレスにさらされています。このような犬たちは、日々大きなストレスを抱えており、本来のリーダーたる飼い主がしっかりと頼りになる存在であれば、犬たち自身は縄張りを主張する必要はありません。
攻撃性を和らげるためには、恐怖や不安を増大させるような罰を与えると、その罰と攻撃しようとする相手とを関連付けてしまい、縄張りからその相手を追い払いたいという欲求がもっと増すようになってしまうため注意が必要です。飼い主自身が落ち着いて対応し、信頼関係を築くことで、犬に「縄張りを守らなければ」と考えるストレスから解放してあげることができます。
縄張り意識による犬のマーキング行動の理解と対処
犬のマーキング行動は、主に尿を使って周囲に情報を伝える行動で、特にオスの犬に多く見られますが、メスでもマーキングをする場合があります。縄張りを守るためのマーキングは、犬の縄張り意識が強く、自分のエリアを他の犬に知らせるために行われます。この行動は特に散歩中に顕著で、電柱や木、壁などに少量の尿をかけることで自分の存在を示します。
参考)トイレとは違う?犬のマーキングの基本的な意味と原因について詳…
マーキングには他の犬に対するメッセージが含まれており、尿には性別や健康状態、繁殖期の情報が含まれ、他の犬にとって重要な情報源となります。マーキングを通じて犬同士が交流することで、社会的なつながりを維持しているとも言えます。
縄張りを守るためのマーキングは、家の中では家具やカーテンに向けて行われることもあります。ストレスや不安を感じたときにもマーキングを行うことがあり、新しい環境や引っ越し、家族構成の変化などが原因で、不安を解消するためにマーキングをする場合があります。特に日常生活に大きな変化があった場合、マーキング行動が急増することがあるため注意が必要です。