オメガ3脂肪酸と犬の健康
オメガ3脂肪酸の基本知識
オメガ3脂肪酸は、犬の体内では合成できない必須脂肪酸の一種です。主にEPA(エイコサペンタエン酸)、DHA(ドコサヘキサエン酸)、αリノレン酸の3種類があり、特にEPAとDHAは魚油に豊富に含まれています。これらの脂肪酸は、細胞膜の構成成分として重要な役割を果たし、さまざまな生理機能をサポートします。
オメガ3脂肪酸とオメガ6脂肪酸のバランスが犬の健康には重要で、AAFCOの栄養基準では通常1:30の比率が推奨されています。しかし、アレルギーなどの皮膚炎症がある場合には、オメガ3脂肪酸の比率を1:3~1:10に高めることが効果的とされています。
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オメガ3脂肪酸の皮膚・アレルギー改善効果
オメガ3脂肪酸は、皮膚の炎症を抑制する強力な作用があり、特にアトピー性皮膚炎の改善に効果的です。研究では、オメガ3系のサプリメントを12週間摂取した犬において、かゆみや被毛の状態が有意に改善され、ステロイドなどの治療薬の減量にもつながったと報告されています。
皮膚のバリア機能を強化し、炎症誘発性化合物の生成を抑制することで、アレルギー反応そのものを軽減する効果も期待できます。特に、オメガ3脂肪酸の抗炎症作用は、オメガ6脂肪酸による炎症促進作用とのバランスを取る上で重要な役割を果たしています。
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オメガ3脂肪酸の関節炎・痛み軽減効果
関節炎を患う犬にとって、オメガ3脂肪酸は天然の痛み止めとしての効果を発揮します。EPA+DHA=69mg/kgを12週間摂取することで、変形性関節症の犬の不快感が有意に改善されることが研究で示されています。また、小型・中型犬では、オメガ3脂肪酸の補給により痛みスコアが改善し、従来の痛み止め薬の使用量を減らすことができたという報告もあります。
関節の炎症を抑制することで、軟骨の破壊を防ぎ、関節の可動性を維持する効果も期待できます。特にオキアミミール由来のオメガ3脂肪酸は、血中のオメガ3インデックスを効率的に上昇させることが確認されており、関節への効果も高いとされています。
参考)https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC9961762/
オメガ3脂肪酸の心臓・認知機能への効果
オメガ3脂肪酸は心血管系の健康維持において重要な役割を果たします。EPAには血液の性状を健康に保つ働きがあり、血管の炎症を抑制することで心疾患のリスクを軽減する効果があります。
認知機能の面では、DHAが脳の神経細胞を活性化させ、記憶力や学習能力の向上に寄与します。特に子犬の視力や脳の発達には不可欠であり、高齢犬の認知機能障害症候群の予防や改善にも効果が期待されています。プリナの研究では、MCTオイル、オメガ3脂肪酸、抗酸化物質などを組み合わせた食事により、認知機能障害症候群の犬の症状が90日以内に有意に改善されたと報告されています。
オメガ3脂肪酸を含む食材と適切な摂取方法
犬に最も推奨されるオメガ3脂肪酸源は魚油(フィッシュオイル)で、まぐろ、サーモン、サバなどの青魚に豊富に含まれています。植物性のαリノレン酸はアマニ油やシソ油に含まれていますが、犬の体内でのEPAやDHAへの変換効率は非常に低いため、海洋性のオメガ3脂肪酸が推奨されます。
適切な給与量はEPA+DHA=0.05%がドライフードに含まれるように調整することが推奨されています。体重10kgあたり1粒を目安としたサプリメントの場合、小型犬で0.2g、中型犬で0.5g程度に留めるのが安全とされています。オメガ3脂肪酸は酸化しやすいため、保存方法にも注意が必要です。
海洋性オメガ3脂肪酸の中でも、オキアミミールは最も効率的にオメガ3インデックスを上昇させることが研究で確認されており、魚油よりも高い生物学的利用能を持つとされています。ただし、過剰摂取は下痢や嘔吐、膵炎のリスクがあるため、獣医師と相談しながら適切な量を与えることが重要です。