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プロスタグランジンと犬の健康の関係性

プロスタグランジンと犬の健康管理

プロスタグランジンが犬の健康に与える影響
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体内バランス調整

炎症や痛みの調節、血流維持などの重要な生理機能を担う

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治療への応用

子宮蓄膿症などの疾患治療に医療用製剤として活用される

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過剰時のリスク

肥満細胞腫などで過剰分泌され様々な症状を引き起こす

プロスタグランジンが犬の炎症反応に果たす重要な役割

プロスタグランジンは犬の体内で炎症反応を調節する重要な生理活性物質です。この物質は痛みや発熱、炎症の原因となる一方で、正常な生理機能の維持にも不可欠な役割を担っています。

参考)「犬の痛み止めに革命が起きる」の話 – 南大阪動物医療センタ…

犬の体内では、シクロオキシゲナーゼという酵素によってプロスタグランジンが産生され、炎症や痛みの調節に関与します。特に関節炎や外傷などの炎症性疾患では、プロスタグランジンの産生が増加し、痛みや腫れなどの症状を引き起こします。

参考)犬に市販の痛み止め(鎮痛剤)が危険で致命的な理由|ヒルズペッ…

しかし、プロスタグランジンは単に悪影響をもたらすだけではありません。腎臓への適正な血流維持や正常な血液凝固といった重要な身体機能の維持にも必要な物質です。このため、プロスタグランジンの産生を完全に抑制してしまうと、犬の健康に深刻な悪影響を与える可能性があります。

犬の子宮蓄膿症治療におけるプロスタグランジンF2αの使用

プロスタグランジンF2αは、犬の子宮蓄膿症の内科治療において重要な薬剤として使用されています。この治療法は、手術を希望しない場合や麻酔リスクが高い場合の選択肢として位置づけられています。

参考)イヌの子宮蓄膿症

子宮蓄膿症は中年以降のメス犬に多く発症する疾患で、発情出血後2ヵ月以内に発症することが多いとされています。プロスタグランジンF2αやその類似体を投与することで、子宮内膜の環境を改善し、細菌の繁殖を抑制する効果が期待できます。

参考)【獣医師監修】疑ったらすぐに動物病院へ!犬の子宮蓄膿症?につ…

子宮蓄膿症の詳細な治療プロトコールについて(獣医師向け治療ガイド)
治療には通常4〜5日を要し、子宮の収縮力を高めて膿を排泄させる作用を発揮します。ただし、この治療法では再発のリスクがあることも理解しておく必要があります。最近では副作用の少ないアリジンという薬剤も使用されるようになっており、従来のプロスタグランジンF2αと比較して安全性が向上しています。

参考)子宮蓄膿症治療薬(アリジン)について

プロスタグランジン阻害によるNSAIDsの副作用リスク

犬にとって市販の鎮痛薬(NSAIDs)は極めて危険な副作用を引き起こす可能性があります。これらの薬剤は、プロスタグランジンの産生を阻害することで鎮痛効果を発揮しますが、同時に重要な生理機能も損なってしまいます。

参考)犬と猫における NSAID の毒性

イブプロフェンなどのNSAIDsは、犬の場合16〜50mg/kgという低用量でも消化管症状を引き起こし、100mg/kg以上では腎臓障害のリスクが高まります。胃への正常な血液循環に必要なプロスタグランジンの産生が阻害されることで、胃潰瘍が形成されやすくなります。

参考)犬と猫のイブプロフェン中毒

犬の痛み止めに関する詳細情報(獣医師監修)
さらに深刻な副作用として、腎臓への血流が減少することで腎臓組織の損傷や腎不全を引き起こす可能性があります。猫は犬よりも腎不全の影響に敏感であり、より注意が必要です。高用量では神経症状として震えや発作、昏睡に至ることもあります。

犬の肥満細胞腫におけるプロスタグランジン過剰分泌の影響

肥満細胞腫は犬に多く見られる悪性腫瘍の一つで、腫瘍化した肥満細胞がヒスタミンやプロスタグランジンなどの生理活性物質を過剰に放出することが特徴です。この過剰分泌により、様々な全身症状を引き起こす腫瘍随伴症候群が問題となります。

参考)犬の肥満細胞腫における尿中バイオマーカーの発見

最近の研究では、犬の肥満細胞腫患者の尿中でプロスタグランジンD2の代謝産物である15-deoxy-δ-12,14-PGJ2の濃度が有意に増加していることが明らかになりました。この発見は、診断バイオマーカーとしての活用可能性を示唆しています。
過剰に分泌されたプロスタグランジンは、嘔吐や下痢、皮膚の炎症といった症状を引き起こします。また、ヒスタミンによる胃酸の過剰分泌から胃潰瘍を生じたり、アナフィラキーショックなどの生命に関わる合併症を引き起こすこともあります。

参考)肥満細胞腫 – あいむ動物病院 西船橋

皮膚にできた肥満細胞腫を過剰に触ると脱顆粒が起こり、症状が悪化する可能性があるため注意が必要です。

参考)犬の肥満細胞腫 

犬における必須脂肪酸とプロスタグランジンの適切なバランス管理

犬の健康管理において、必須脂肪酸の適切な摂取はプロスタグランジンのバランス調整に重要な役割を果たします。特にω-6脂肪酸は、体内で炎症を引き起こすプロスタグランジンやロイコトリエンを生成するため、摂取量の調整が必要です。
ω-6脂肪酸の過剰摂取は、プロスタグランジンの過度な産生を引き起こし、炎症やアレルギーを起こしやすくする可能性があります。一方、ω-3脂肪酸は抗炎症作用を持ち、ω-6とのバランスを適切に保つことが重要です。
AAFCOの基準では摂取量の上限は設定されていませんが、適量の目安として小型犬で0.2g、中型犬でも0.5g程度にとどめることが推奨されています。魚の脂に含まれるω-3の過剰摂取により黄色脂肪症という疾患を引き起こすリスクもあるため、慎重な管理が必要です。
最新の動物薬では、プロスタグランジンE2受容体EP4を選択的に阻害するガリプラントのような薬剤が開発され、従来の消炎鎮痛剤と比べて副作用が軽減されています。これらの進歩により、犬の骨関節炎治療における安全性が向上しています。

参考)GALLIPRANT®