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リンパ球と犬の健康に必要な知識

リンパ球と犬の免疫システム

リンパ球が守る犬の健康
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免疫の中心的役割

リンパ球は白血球の一種で、犬の免疫システムの重要な構成要素です

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血液中の存在

健康な犬では血液中のリンパ球の割合は約12~30%程度を占めています

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病気の早期発見

リンパ球の異常な変化は重篤な疾患のサインとなることがあります


犬の健康を維持するうえで重要な役割を果たすリンパ球について理解することは、愛犬の病気を早期発見し、適切なケアを行うために欠かせません。リンパ球は白血球の一種で、犬の免疫システムの中核を担う細胞として機能します。

参考)犬と猫の『免疫力』を知ろう

リンパ球は主にTリンパ球とBリンパ球の2つのタイプに分類され、それぞれが異なる免疫機能を担っています。Tリンパ球は異物細胞や異常細胞を直接攻撃する働きや、Bリンパ球が抗体を作るのを助ける働き、免疫反応を終結させる働きを担います。一方、Bリンパ球は抗原に出会うと抗体を作って他の免疫細胞が抗原を捕食するのを助けたり、細菌が作る有毒物質を不活性化したりして身体を守る役割を果たします。
犬のリンパ球の形態学的特徴は、直径約9-12μmで赤血球より少し大きく好中球よりは小さく、核は円形で細胞の中で少し端っこに偏在することが一般的です。核の色合いは結構黒がちで、クロマチン凝集という濃い点を認めることが多く、細胞質は狭くてうっすら青みがかっています。

参考)顕微鏡写真: 犬のリンパ球 – せがわ動物病院

犬リンパ球の基本的な機能と役割

犬のリンパ球は獲得免疫の役割を担い、未知の異物に遭遇したとき、次にすばやく攻撃できるようそれぞれの異物を記憶する働きがあります。獲得免疫はできるまでには時間がかかりますが、いったんできあがると素早く反応することができる特徴があります。
リンパ球は骨髄で生成され、胸腺やリンパ節、脾臓などの免疫器官で成熟し、血流に乗って体内を巡りながら異物を発見し攻撃する重要な働きをします。また、リンパ球は腸関連リンパ組織(GALT)にも多数存在し、免疫細胞の約70%は腸内細菌が作り出していることから、腸内環境の改善が免疫力向上に直結するとされています。

参考)犬や猫も免疫力がアップするのですか?

免疫系の正常な機能には、自然免疫と獲得免疫が相互に作用し合い、影響を及ぼし合うことが重要で、リンパ球は特に獲得免疫において中心的な役割を果たします。この免疫システムが正常に機能することで、犬は様々な病原体から身体を守ることができるのです。

参考)獣医師監修 : 免疫力を高めるためにできること

犬リンパ球増加症の原因と症状

犬のリンパ球増加症は様々な原因によって引き起こされ、その背景には感染症、免疫系疾患、腫瘍性疾患などがあります。特に注意すべきは慢性リンパ性白血病(CLL)による持続的なリンパ球増加で、これは成熟したリンパ球が腫瘍化した疾患です。

参考)https://www.mdpi.com/2076-2615/14/5/706/pdf?version=1708916089

慢性リンパ性白血病の場合、多くは無症状で気づきにくいことがほとんどですが、症状があるとしても軽度の貧血、食欲低下、嘔吐・下痢、嗜眠など他の病気でもみられる症状が現れます。好発犬種としてジャーマンシェパード、ゴールデンレトリバーがあげられ、小型犬でB細胞型が多くみられ、10歳以上の高齢犬で多く発症します。

参考)【解説】なんとなく元気がない!食欲もない!犬の白血病について…

リンパ球増加症の診断には血液検査が重要で、白血球数の増加や特定のリンパ球サブセットの割合の変化を確認します。骨髄検査では骨髄内の細胞成分や数、割合を確認し、どのタイプの白血病であるかを診断することができます。

参考)シニア犬のリンパ腫について|早期発見と適切なケアがカギ

運動などの生理的要因でもリンパ球数は変化し、激しい運動後には免疫調節指数が変化することが研究で明らかになっています。犬では激しい運動前後で免疫調節血液指数が2.1±0.1から1.7±0.13に変化することが報告されています。

犬リンパ球異常による疾患の種類

犬のリンパ球異常による主要な疾患として、急性リンパ芽球性白血病(ALL)と慢性リンパ性白血病(CLL)、そしてリンパ腫があります。急性リンパ芽球性白血病は骨髄でリンパ芽球が急速に増殖する疾患で、この腫瘍化したリンパ芽球が全身を循環し、肝臓や脾臓、腸などに侵入します。

参考)白血病|ペット保険のFPC

急性リンパ芽球性白血病の主な症状には、元気消失、食欲不振、体重減少、嘔吐や下痢、リンパ節の腫大、発熱、貧血などがあります。T細胞型とB細胞型があり、犬ではB細胞型が多いとされ、5~6歳以上の犬に多くみられますが若齢犬でも発症することがあります。
リンパ腫は犬に発生するがんのうち7~24%を占める重要な疾患で、リンパ球という白血球の1種が癌化して腫瘍性に増殖する疾患です。多中心型リンパ腫では体表のリンパ節(下顎・浅頚・腋窩・鼠径・膝窩)の腫れが特徴的で、飼い主が気づきやすい症状の一つです。

参考)https://reiwa-animal-hospital.com/2024/11/08/dog-not-lymphoma/

Large Granular Lymphocyte(LGL)白血病は極めて稀な疾患で、重篤な好中球減少症を伴うことが特徴です。この疾患では発熱と倦怠感を主訴とし、重篤な好中球減少症(好中球数の中央値0.07×109/L)を示しますが、末梢血でのリンパ球増加症は認められません。

参考)https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC9913808/

犬リンパ球検査と診断方法の詳細

犬のリンパ球に関する検査は多段階的なアプローチが必要で、まず血液検査で白血球数やリンパ球数、その他の血液成分を評価します。リンパ腫の犬では貧血や白血球の増加、高カルシウム血症などがよく見られ、リンパ腫が腎臓や肝臓に発生している場合、これらの臓器の数値に異常が現れることもあります。
骨髄検査は血液検査で白血病の疑いがあるときに行う重要な検査で、骨に針を刺し骨髄または骨髄液を採取して骨髄の中の細胞成分や数、割合を確認します。この検査は痛みを伴うため全身麻酔で行うことがほとんどで、どのタイプの白血病であるかを診断することができます。
細胞診では病変部に細い針を刺して細胞を採取し、リンパ球の異常な増殖を確認します。この方法は低侵襲で確定診断が可能で、リンパ節の腫れがある場合はリンパ腫との鑑別のために行われることがあります。

参考)犬のリンパ腫について┃犬に発生するがんのうち7~24%を占め…

クローナリティー検査は白血病の治療を進めるにあたり重要で、腫瘍化したものであるかを判断し、B細胞性かT細胞性か、また、リンパ球が単一に増殖している(モノクローナル増殖)か、複雑に増殖している(ポリクローナル増殖)かについても診断します。フローサイトメトリー解析ではCD3+CD8+腫瘍細胞の同定も可能です。

犬の免疫システムにおけるリンパ球維持の重要性

犬の健康維持においてリンパ球を含む免疫システムの正常な機能を保つことは極めて重要で、免疫力が低下すると病原体に対して抵抗力が弱くなり、風邪やアレルギー、ウイルス性疾患など様々な病気にかかりやすくなります。特に老犬では免疫低下によってガンなどにかかるリスクも高くなるとされています。
子犬の場合、母犬から母乳を介して得た獲得免疫が生後2ヶ月ごろで切れてしまうため、ワクチン接種を開始して免疫を一定に保つことが必要です。一方で免疫が過剰に反応すると、免疫自体が病気の原因になってしまうことがあり、自己免疫疾患やアトピー性皮膚炎などがその例です。
腸内環境を整えることが犬の免疫力向上に重要で、腸管の粘膜には腸特有のリンパ組織である腸関連リンパ組織(GALT)があり、多数のリンパ球などの免疫系細胞が存在しています。腸内細菌叢に善玉菌・悪玉菌・日和見菌がバランスよく存在することで、免疫系によい影響を与えるとされています。
適切な食事による栄養補給も重要で、免疫系に関わる細胞は常に新陳代謝を繰り返して生まれ変わるため、バランスの取れた栄養摂取が必要です。また、ストレスから守ることも大切で、自律神経系・内分泌系・免疫系のバランスが崩れると病気が生じるため、犬のストレス軽減にも配慮する必要があります。