老犬うんちの出し方と綿棒の使用法
老犬がうんちが出ない原因と症状
老犬のうんちが出にくくなる現象は、多くの高齢犬に見られる一般的な問題です。健康な犬の排便回数は食事の回数+1回程度とされており、2日間排便がなければ便秘と判断されます。
老犬が便秘になりやすい主な原因は以下の通りです。
- 筋力の低下:加齢により排便に必要な腹筋や肛門括約筋が衰える
- 消化機能の低下:胃腸の働きが弱くなり、食べ物の消化・吸収が困難になる
- 運動量の減少:体を動かす機会が減ることで腸の蠕動運動が低下
- 飲水量の減少:喉の渇きを感じにくくなり、便が硬くなる
便秘の症状として、排便があっても「コロコロしている」「絞り出したように細い」「量が少ない」「なかなか出ない」といった状態も含まれます。これらの症状が2日以上続く場合は、適切な対処が必要です。
老犬介護では、病気による排泄障害も考慮する必要があります。腎機能の低下や糖尿病による脱水症状、ホルモンバランスの崩れや認知症なども便秘の原因となることがあります。多飲多尿の症状や尿の色の変化が見られる場合は、獣医師への相談が重要です。
老犬うんちを出すマッサージ方法
マッサージは老犬の便秘解消に効果的で、愛犬とのコミュニケーションツールにもなります。正確なツボの位置が分からなくても、大体の場所をゆっくりと優しくマッサージするだけで効果が期待できます。
背中のツボマッサージ
背中には便秘解消に効果的なツボが複数存在します。
- 大腸愈(だいちょうゆ):背骨と骨盤が交差するところの少し上、第4腰椎と第5腰椎の間の左右両側
- 小腸愈(しょうちょうゆ):大腸愈の少し下、第6腰椎と第7腰椎の間の左右両側
- 胃兪(いゆ):最後の肋骨の付け根と背骨が交差した両脇
これらのツボを人差し指と親指で挟むようにして押し、ゆっくりと力を加えて10〜15秒かけて5回程度繰り返します。
お腹のマッサージ
お腹周りのマッサージは特に重要で、以下の手順で行います。
- おへその確認:お腹の中央付近の毛をかき分けて、毛のないところを探す
- 中脘(ちゅうかん):胸骨とおへその中間に位置
- 天枢(てんすう):おへそから左右1〜1.5センチの位置
- 関元(かんげん):おへそから犬の指4本分下の位置
これらのツボを通るように、手のひらでお腹を時計回りにゆっくり優しくなでます。反時計回りは逆効果になるため注意が必要です。
マッサージ実施時の注意点として、愛犬が嫌がる場合は無理強いせず、すぐに中止することが大切です。また、蒸しタオルで温めることも効果的で、肛門周辺やしっぽの付け根あたりを温めることで血行が促進されます。
老犬に綿棒を使ったうんちの刺激法
綿棒を使った刺激法は、老犬の便秘解消において最終手段として位置づけられています。この方法は効果的である一方、適切な知識と注意深い実施が必要です。
綿棒刺激の基本手順
綿棒による肛門刺激は以下の手順で行います。
- 準備:乾いた綿棒は肛門を傷つける可能性があるため、ぬるま湯、ベビーオイル、またはオリーブオイルを含ませて柔らかくする
- 刺激方法:綿棒を犬の肛門に少し入れ、小さく回すなどして刺激する
- 優しい接触:肛門をトントンと叩くように優しくマッサージする
ワセリンを使った指での浣腸法
より直接的な方法として、ワセリンを使った指での浣腸があります。この方法は老犬介護経験者から推奨されている手法です。
用意するもの。
- トイレシーツ
- 介護用手袋
- ワセリン
実施手順。
- 介護用手袋をはめ、人差し指にワセリンをつけてなじませる
- 肛門に第一関節あたりまで指を入れ、上下左右にこちょこちょと刺激を与える
- 中からモリモリっと便が押してくる感じを確認
- 指を便が押して抜くのと一緒に出させる
- 肛門まで来たら自然に出る、出ない場合は指で肛門を押し広げる
この方法では、便があることが確認できても、マッサージしていると奥に引っ込んでしまうことがあるため、横から押さえておくことが重要です。
綿棒刺激の注意点
綿棒刺激には以下のリスクが伴います。
- 常用の危険性:この方法を常用すると癖になり、綿棒での刺激がないと排便できなくなる可能性
- 物理的損傷:肛門や腸を傷つけてしまう可能性があるため、乾いた綿棒の使用は避ける
- 依存性:自力での排便感覚が鈍ってしまうため、使用頻度には注意が必要
そのため、綿棒刺激はやむを得ない場合を除き、食事やマッサージなど他の方法で便秘を解消できるよう努めることが推奨されます。
老犬のうんち介助で注意すべき点
老犬のうんち介助では、安全性と効果のバランスを保つことが最も重要です。不適切な介助は愛犬の健康を害する可能性があるため、以下の点に特に注意する必要があります。
してはいけない介助方法
以下の行為は老犬の健康を損なう危険性があります。
- 自己判断での便秘薬投与:便秘の原因が病気だった場合、症状が悪化する可能性
- 乾いた綿棒での刺激:肛門や直腸を傷つけるリスクが高い
- 誤った部位・方法でのマッサージ:逆効果になったり、病状を悪化させる恐れ
- 無理な体勢での介助:愛犬にストレスや痛みを与える可能性
適切な介助のタイミング
排泄介助は愛犬の排泄機能の状態に応じて方法を変える必要があります。
排泄機能が残っている場合。
- 外的刺激を与えて、最終的な排泄は愛犬に任せる
- 体を支えて排泄姿勢を取らせる
- 手や綿棒で肛門を刺激し、腸が肛門近くまで便を押し出すのを助ける
排泄機能が残っていない場合。
- 人の手で直接排泄を介助する
- より専門的な知識と技術が必要
介助時の環境整備
適切な環境を整えることで、介助の効果を高められます。
- 清潔な環境:トイレシーツを敷いて衛生的な環境を作る
- 愛犬の安心感:普段慣れ親しんだ場所で実施する
- 温度管理:体が冷えないよう適切な温度を保つ
- 時間的余裕:急がずゆっくりと時間をかけて行う
獣医師との連携
以下の症状が見られる場合は、必ず獣医師に相談することが重要です。
- 2日以上の便秘が続く
- 多飲多尿の症状がある
- 尿の色が薄いまたは透明
- 食欲不振や元気がない状態が続く
- 腹部の膨張や痛がる様子が見られる
慢性的な便秘は巨大結腸症などの深刻な病気を引き起こす可能性があるため、「たかが便秘」と軽視してはいけません。
老犬のうんち健康を保つ食事と生活習慣
老犬のうんち健康を維持するためには、日常的な食事管理と生活習慣の改善が重要です。介助に頼る前に、予防的なアプローチを実践することで、多くの便秘問題を解決できます。
食事改善による便秘対策
老犬は消化機能が低下するため、消化の良い食事を意識する必要があります。
フード選択のポイント。
- シニア用ドッグフードへの切り替え:成犬用より消化吸収が良く、カロリーも控えめ
- ドライフードをふやかす:水やぬるま湯でふやかして飲水量を増加
- 少量多回食:一度に大量ではなく、回数を分けて与える
整腸作用のある食材トッピング。
- バナナ:皮をむき、筋を取り除いて生で与える
- リンゴ:皮をむき、種と芯を取り除いて生で与える
- キャベツ:生または加熱して細かく刻む
- サツマイモ:ゆでたり蒸したりして加熱
- 大根:皮をむいて生または加熱、すりおろしも可
- プレーンヨーグルト:無糖のものを少量
これらの食材は便秘解消に効果がありますが、与えすぎると軟便や下痢を引き起こす可能性があります。ヨーグルトはカルシウムが豊富なため、与えすぎると尿石症の原因になることもあります。
水分摂取の促進
老犬は水分摂取量が減る傾向にあるため、以下の工夫で水分補給を促します。
- 複数の水飲み場:家の各所に水を置く
- 味付きの水:ささみの茹で汁やヤギミルクで味をつける
- ウォーターボール:水が美味しくなる専用ボウルの使用
- 定期的な声かけ:飼い主が意識的に水分補給を促す
運動と筋力維持
運動量の維持は腸の蠕動運動を促進し、便秘予防に重要です。
適度な運動の継続。
- 愛犬の体調に応じた散歩
- 室内での軽い運動やストレッチ
- 可能な範囲での立ち上がり練習
筋力維持のポイント。
- 若いうちからシニアに向けた筋力づくり
- 無理のない範囲での継続的な活動
- 理学療法やリハビリテーション
予防的ケアの習慣化
日常的な予防ケアを習慣化することで、深刻な便秘を防げます。
- 定期的な健康チェック:排便の回数、色、形状の観察
- 体重管理:適正体重の維持による消化機能のサポート
- ストレス管理:環境変化を最小限に抑え、安心できる環境作り
- 定期検診:獣医師による定期的な健康診断
食物繊維の適切な摂取
食物繊維は便秘解消に重要ですが、バランスが大切です。
- 水溶性食物繊維:便を柔らかくする効果(リンゴ、バナナなど)
- 不溶性食物繊維:便のかさを増やす効果(キャベツ、サツマイモなど)
適切な比率での摂取により、理想的な便の状態を維持できます。ただし、急激な食事変更は消化不良を起こす可能性があるため、段階的に変更していくことが重要です。