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緑内障(犬)の症状と治療方法完全ガイド

緑内障の症状と治療方法

犬の緑内障 治療の要点
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早期発見が重要

急性緑内障では数日で失明に至る可能性があり、迅速な診断と治療開始が視覚維持の鍵となる

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内科的治療が基本

点眼薬による眼圧コントロールから開始し、プロスタグランジン製剤や炭酸脱水酵素阻害薬を使用

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外科的治療の選択

内科的治療が奏効しない場合、アーメド緑内障バルブ等による外科的治療で長期視覚維持を目指す

緑内障の初期症状と診断

犬の緑内障は眼圧上昇により視神経が障害される疾患で、人と同様に失明の主要原因となっています。特に犬では閉塞隅角緑内障が多く、急激な眼圧上昇により数日で不可逆的な視覚喪失に至ることが少なくありません。

初期症状として以下の兆候が認められます:

  • 眼球の拡張(目が大きく見える、眼球突出)
  • 眼瞼痙攣(目をしょぼつかせる、目を開けたがらない)
  • 角膜浮腫による角膜の白濁
  • 散瞳(瞳孔の拡張)
  • 結膜充血
  • 行動変化(元気消失、食欲不振)
  • 視覚障害(物にぶつかる、歩行異常)

診断には眼圧測定が不可欠で、正常犬の眼圧は10-20mmHgですが、緑内障では25mmHg以上の上昇が認められます。隅角検査では隅角の狭窄や閉塞を確認し、原発性と続発性の鑑別を行います。

眼底検査では視神経乳頭の陥凹や網膜血管の変化を評価し、視覚予後の判定に重要な情報を提供します。超音波検査やOCT(光干渉断層撮影)により、より詳細な眼内構造の評価も可能です。

緑内障の内科的治療方法

緑内障の内科的治療は眼圧下降を目的とし、点眼薬が第一選択となります。治療薬は作用機序により大きく2つに分類されます。

眼房水産生抑制薬:

  • 炭酸脱水酵素阻害薬:毛様体上皮での眼房水産生を抑制
  • ドルゾラミド塩酸塩点眼液
  • 1日2-3回点眼、副作用として局所刺激感
  • β受容体遮断薬:毛様体筋のβ受容体を遮断し眼房水産生を減少
  • チモロールマレイン酸塩点眼液
  • 心疾患や呼吸器疾患がある場合は慎重投与

眼房水排出促進薬:

  • プロスタグランジン製剤:隅角からの眼房水排出を促進
  • ラタノプロスト、トラボプロスト
  • 最も効果的な点眼薬の一つ
  • 1日1-2回点眼

急性期には全身投与も併用されます。マンニトールの静脈内投与は浸透圧利尿により15分以内に眼圧を下降させ、効果は6-10時間持続します。投与量は1-2g/kgで、腎機能や心機能を考慮して使用します。

治療の注意点:

点眼薬の効果は個体差があり、長期使用により耐性が生じることがあります。定期的な眼圧測定により治療効果を評価し、必要に応じて薬剤変更や追加を行います。

緑内障の外科的治療選択肢

内科的治療で眼圧コントロールが困難な場合、外科的治療が検討されます。治療選択は視覚の有無により大きく異なります。

視覚維持を目的とした手術:

  • アーメド緑内障バルブ(AGV)インプラント
  • 前房から結膜下腔への眼房水ドレナージ
  • 日本での報告では平均57ヶ月(4年9ヶ月)の視覚維持
  • 高度な技術を要するが長期予後良好
  • 毛様体光凝固術
  • レーザーにより毛様体を破壊し眼房水産生を抑制
  • 侵襲が少ないが効果が限定的
  • 濾過手術
  • 結膜下に新たな眼房水流出路を作成
  • 人医療で一般的だが獣医療では技術的課題

疼痛緩和を目的とした手術:

  • 眼球摘出術
  • 視覚喪失後の疼痛コントロールが困難な場合
  • 確実な疼痛除去が可能
  • 眼球内容除去術+義眼挿入
  • 外観を保持しつつ疼痛を除去
  • 術後管理が重要

緑内障手術の実際の症例報告と術後経過について詳細な解説

外科的治療の選択には、犬の年齢、全身状態、飼い主の希望、経済的要因などを総合的に考慮する必要があります。

緑内障の好発犬種と予防

犬の原発性緑内障には明確な犬種素因が認められており、遺伝的要因の関与が示唆されています。

高リスク犬種:

予防的アプローチ:

好発犬種では定期的な眼科検査が推奨されます。特に以下の点が重要です。

  • 隅角検査による早期発見
  • 健康時の隅角状態を把握
  • 年1-2回の定期検査
  • 家族歴の把握
  • 両親や兄弟犬の発症歴確認
  • 遺伝カウンセリングの重要性
  • 日常的な観察
  • 目の大きさや透明度の変化
  • 行動変化の早期発見

千寿製薬による犬の緑内障の詳細な解説と予防的観察ポイント

続発性緑内障の予防:

水晶体脱臼、ぶどう膜炎白内障などの基礎疾患の適切な管理により、続発性緑内障のリスクを軽減できます。

緑内障治療の予後と管理

緑内障の予後は診断時期と治療開始の迅速性に大きく依存します。視覚予後の改善には早期診断が不可欠で、発症から24-48時間以内の治療開始が推奨されます。

長期管理のポイント:

  • 定期的な眼圧モニタリング
  • 月1回から3ヶ月に1回の頻度
  • 治療効果の評価と薬剤調整
  • 点眼薬の適切な投与
  • 飼い主への十分な説明と指導
  • 投与時間の厳守と記録
  • 生活環境の調整
  • 視覚障害がある場合の環境整備
  • ストレス軽減と安全確保

治療耐性への対応:

長期治療により点眼薬の効果が減弱することがあります。この場合、薬剤変更、追加投与、外科的治療への移行を検討します。

飼い主教育の重要性:

緑内障は生涯にわたる管理が必要な疾患です。飼い主には以下の教育が重要です。

  • 疾患の理解と治療の必要性
  • 点眼薬の正しい投与方法
  • 緊急時の対応方法
  • 定期検査の重要性

最新の治療展望:

近年、幹細胞治療や遺伝子治療などの新しいアプローチが研究されており、将来的にはより効果的な治療選択肢が期待されます。また、人工知能を用いた画像診断技術の発達により、より早期の診断が可能になる可能性があります。

犬の緑内障は適切な知識と迅速な対応により、視覚維持の可能性を最大限に高めることができる疾患です。獣医療従事者には最新の診断技術と治療選択肢の理解、そして飼い主との密接な連携が求められます。