酸素吸入と犬の治療効果
酸素吸入治療が犬に必要となる主な疾患
酸素吸入治療が必要になる代表的な疾患として、僧帽弁閉鎖不全症があります 。この心臓病は高齢の小型犬に多く見られ、心臓のポンプ機能が弱まって血液の渋滞を起こし、末期になると血液中の水分が肺に漏れ出て肺水腫を引き起こします 。肺水腫は溺れ続けるような苦しみを伴い、眠れない犬も多く存在しますが、酸素室に入ることで呼吸が楽になり、眠れるようになる効果が期待できます 。
参考)呼吸が苦しい犬のための緩和ケア|ご自宅での酸素室の使用につい…
呼吸器疾患による酸素不足も重要な適応症です。気道閉塞や肺炎、気胸などの疾患により呼吸困難になった場合、酸素を体内に取り入れることが困難となり低酸素血症を引き起こすため、高濃度の酸素吸入が必要となります 。また、貧血などで全身に酸素がうまく行き渡らない場合にも酸素室による治療が有効とされています 。
ショック状態における緊急治療としても酸素吸入は欠かせません。ショック状態では必ず低酸素血症となるため、酸素吸入が必須の治療となります 。さらに、昏睡などの意識障害や発作を起こす脳神経症状においても、脳が最も酸素を必要とし多くの酸素を消費する臓器であることから、酸素吸入治療が重要な役割を果たします 。
酸素吸入による犬の疲労回復と健康改善効果
酸素療法は特にシニア犬の健康サポートにおいて注目されており、体全体に十分な酸素を送り届けることで疲労回復やストレス軽減、エネルギーレベルの向上が期待されます 。酸素が体全体に供給されることで細胞が再生され、老犬でも体力が戻りやすくなる疲労回復効果が確認されています 。
呼吸器系に問題を抱える犬に対しては、酸素室に入ることで呼吸が楽になりストレスが軽減される効果があります 。酸素室を定期的に利用することで犬の免疫機能が向上し、疲労しにくい体を作り出すことができ、全体的な健康改善につながります 。
実際の症例では、15歳の柴犬が1回30分のセッションで酸素室を定期的に利用し、毎回リラックスして元気を取り戻している様子が報告されており、「若返っている」ような効果さえ観察されています 。酸素室は1回500円程度の手軽な価格で利用でき、長期のお泊まりの際のオプションとしても追加できるため、多くの飼い主が試しやすい治療法として普及しています 。
酸素吸入器と犬用酸素濃縮器の選択基準
ペット用酸素濃縮器は、お部屋の空気から高濃度の酸素を作り出し、酸素を溜めるケージと組み合わせてペットの酸素吸入を助ける装置です 。機器とケージをホースでつないでスイッチを入れるだけで簡単に利用でき、人と動物では酸素吸入方法が異なるため、CO2を排出できるようケージに隙間を設けても安定した酸素濃度を保てるよう独自に開発されています 。
参考)酸素ハウスレンタルの方へ
体重による機器選択も重要なポイントです。5kg以下の小さなペットから35kg以上の大型のペットまで使用できるモデルが揃っており、体重10kgの犬では2L/分の酸素流量でFIo2(吸入気酸素分圧)が約80%、1L/分で約60%、0.5L/分で約40%になることが報告されています 。
参考)Flow by酸素投与法は? Ⅱ型呼吸不全の場合、酸素濃度的…
酸素濃縮器は高濃度の酸素を発生させることが可能で、ペットの家庭用酸素室として利用でき、在宅での酸素機器として動物の健康・介護をサポートします 。約5,500の動物病院で飼い主様にご紹介されており、ペットの在宅ケアをする製品として多くの動物病院で認知されています 。レンタル方式を採用することで酸素ハウスすべての所在を把握し、性能不足の酸素ハウスが市場に流通しないよう管理されています 。
参考)本格屋 酸素濃縮器・酸素カプセル・ディスポーザー / 特集:…
酸素吸入治療における犬の安全管理と注意点
酸素中毒のリスク管理は酸素吸入治療において最も重要な注意点です。長時間高濃度の酸素を吸い続けると、活性酸素の量が増えて体の防御能力を超えてしまい「酸素中毒」を引き起こす可能性があります 。活性酸素が過剰に産生されると神経や肺を障害したり、遺伝子に傷をつけて癌の原因になることもあるため、60%以下の酸素濃度であれば長時間の酸素吸入でも安全とされています 。
参考)酸素中毒 – 横浜みどり動物医療センター しょうどうぶつ病院
適切な酸素濃度の維持も重要です。酸素濃縮器から供給される酸素は自動的に約30~38%の酸素濃度になるよう設計されており、ケージ内は酸素濃度35%前後に保たれ45%以上の高濃度にはならないよう配慮されています 。100%酸素のみを吸っていると肺胞を膨らませる役割を担う窒素が含まれないため、徐々に肺が膨らまなくなり呼吸ができなくなってしまうリスクもあります 。
温度管理とストレス軽減も安全な治療には欠かせません。ケージ内は動物の体温で温度が上昇し、体重1kg当り0.6℃温度が上昇するため、ペットボトルに水を入れ冷凍庫で凍らせてケージに入れる方法が推奨されています 。無理に閉じ込めてペットにストレスがかかるようなやり方は避け、ペットのにおいが付いているマットやおもちゃをケージ内に入れて新しい環境に対する抵抗を減らすことが大切です 。
参考)https://www.picono-te.com/entry15.html
酸素吸入による犬の在宅ケアと日常管理の実践方法
在宅酸素療法の実践では、まず酸素濃縮器の電源コードをコンセントにつなぎ、白ホースの一方を酸素濃縮器に、もう一方をケージに挿し込むだけで簡単に設置できます 。ケージは工具不要で簡単に組み立て可能で、持ち運び可能な酸素濃縮器も用意されており、通院や外出時の車内での酸素吸入にも便利です 。
参考)よくあるご質問|ペット用酸素ハウスのシステムラインズ 佐賀市
日常的な使用方法として、普段使用している鳥かごやペットキャリーをそのままケージの中に入れて使用することで、環境の変化が少なく違和感なく過ごすことができます 。酸素チューブをペットキャリーにつなげれば簡易的な酸素室にでき、機器から常に新しい酸素が送られるので長時間の移動も安心です 。
継続的なケアにおいては、舌の色が紫色(チアノーゼ)になった場合や呼吸が荒い、呼吸が速いなどの症状が現れた時に酸素室から離脱することは推奨されず、症状の改善を確認しながら徐々に酸素流量を調整することが重要です 。ケージに送り込まれる酸素・空気は無菌状態になっているため、ケージ内は清潔を保ち、中に入っている時間を長くすることで効果的な治療が期待できます 。床を濡らさないよう、ケージの中または下にペットシーツなどを敷くことも日常管理の重要なポイントです 。