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サルモネラ症と犬の感染経路や症状と予防対策

サルモネラ症と犬

犬のサルモネラ症について
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感染症の概要

サルモネラ症は細菌性感染症で、犬だけでなく人間にも感染する人畜共通感染症です。

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犬の保菌率

健康な犬でも約10%がサルモネラ菌を保有していると言われています。

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感染リスク

子犬や免疫力の低下した犬は特に感染リスクが高く、注意が必要です。

サルモネラ症の犬における主な症状と感染率

サルモネラ症は、サルモネラ属菌による細菌性感染症で、犬の健康に深刻な影響を及ぼすことがあります。犬がサルモネラ症に感染した場合、様々な症状が見られますが、必ずしも全ての感染犬が症状を示すわけではありません。

犬のサルモネラ症の主な症状には以下のようなものがあります。

  • 血液や粘膜を含む下痢
  • 急性の嘔吐
  • 食欲低下
  • 元気消失
  • 発熱
  • 体重減少
  • 脱水症状

特に注目すべきは、多くの犬がサルモネラ菌に感染していても症状を示さない「無症候性キャリア」となることです。研究によれば、健康な犬のサルモネラ菌の保菌率は約10%程度とされています。このことは、見た目には健康そうに見える犬でも、実はサルモネラ菌を保有し、排泄している可能性があることを意味します。

米国の軍用犬飼育施設での調査事例では、80頭の犬のうち9頭だけが下痢などの症状を示したにもかかわらず、51頭の糞便からサルモネラ属菌が検出されたという報告があります。同様に、イタリアでの事例では、41頭中5頭が症状を示し、25頭の糞便からサルモネラ属菌が検出されています。これらの事例からも、多くの犬が無症状のまま菌を保有していることがわかります。

犬種によるサルモネラ感染のリスク差はあまりないとされていますが、子犬や病気などにより免疫力が落ちている犬は特に感染・発症しやすい傾向があります。また、サルモネラに感染した犬は、20~40日間(最大で100日間)にわたって菌を排出し続けるとされており、その間は感染源となる可能性があります。

犬のサルモネラ症の主な感染経路と原因

犬がサルモネラ症に感染する経路はいくつかありますが、最も一般的なのは経口感染です。具体的な感染経路と原因について詳しく見ていきましょう。

  1. 汚染された食物の摂取

サルモネラ菌が繁殖した生の肉や魚、卵およびその加工品を食べることで感染する可能性があります。サルモネラ菌は10℃~37℃の環境で生存・増殖し、特に20℃以上では著しく増殖します。これは、適切に温度管理されていない食材が感染源となる可能性が高いことを示しています。

犬用のドライフードからもサルモネラ菌が検出されることがあります。実際に、米国やイタリアでは、汚染されたドライフードによるサルモネラ症の集団発生が報告されています。これらの事例は、市販の犬用食品でも感染リスクがあることを示唆しています。

  1. 汚染された環境からの感染

犬が散歩中に汚染された物を拾い食いすることでも感染します。また、他の動物(特に爬虫類やカメ)との接触も感染リスクを高めます。カメなどの爬虫類は特にサルモネラ菌の保有率が高く、ミドリガメでは50~90%がサルモネラ属菌を保有しているとされています。

  1. 汚染された食器や水からの感染

サルモネラ菌が付着した食器や水を通じても感染します。不衛生な環境で犬を飼育していると、感染リスクが高まります。水槽内の水からもサルモネラ菌が検出されることがあり、特にカメなどの爬虫類を飼っている家庭では注意が必要です。

  1. 他の感染犬との接触

感染している犬との接触によっても感染が広がる可能性があります。特に多頭飼育の環境では、一頭が感染すると他の犬にも感染が広がることがあります。

サルモネラ菌の特徴として、環境中での生存力が高いことが挙げられます。適切な消毒や清掃が行われない限り、長期間にわたって環境中に残存し、感染源となる可能性があります。

サルモネラに感染した犬の治療法と費用

犬がサルモネラ症と診断された場合、適切な治療が必要です。治療法は症状の重さによって異なりますが、基本的な治療アプローチと、飼い主さんが知っておくべき費用について解説します。

基本的な治療アプローチ

サルモネラ症の治療は、主に以下のような方法で行われます。

  • 抗菌剤による治療:ニューキノロン系抗菌剤などが用いられることが多いです。ただし、軽度の症例では必ずしも抗生物質が使用されるわけではありません。
  • 対症療法:症状に応じた治療を行いながら回復を待ちます。特に脱水が懸念される場合は点滴などの処置が行われます。
  • 輸液療法:嘔吐や下痢によって脱水症状が起きている場合は、静脈点滴を行い、水分や電解質のバランスを整えます。
  • 食事管理:消化器官への負担を軽減するため、消化しやすい食事に切り替えることが推奨されます。

治療における注意点

サルモネラ症の治療において、特に注意すべき点があります。

  • 下痢止めの使用は避ける:一般的な下痢止めには腸の運動を抑える効果があるものがありますが、サルモネラなどの細菌性腸炎の場合、腸内で細菌や毒素がさらに増える可能性があるため、獣医師の指示なく使用するべきではありません。
  • 治療期間:通常、適切な治療によって1週間程度で回復が見込めますが、菌の排出は数週間続くことがあります。

治療にかかる費用

サルモネラ症の治療費用は、症状の重さや必要な検査・治療によって大きく変わります。一般的な費用の目安は以下の通りです。

  • 外来診療の場合:1回の通院あたり5,000~20,000円程度
  • 診察料
  • 糞便検査代
  • 血液検査代
  • レントゲン検査代(必要に応じて)
  • 注射代
  • 薬代(抗生物質、整腸剤など)
  • 入院が必要な場合:症状が重く、食事が取れない状況や脱水が進んでいる場合は、入院管理が必要になることがあります。その場合、入院費用や点滴代などが追加で必要となり、数万円~10万円程度かかることもあります。

症状が重い場合は、さまざまな検査や治療が必要となるため、費用も高くなる傾向があります。ペット保険に加入している場合は、これらの費用の一部がカバーされることがあるため、事前に確認しておくと安心です。

犬のサルモネラ症の予防対策と管理方法

サルモネラ症は適切な予防対策を講じることで、感染リスクを大幅に減らすことができます。愛犬と家族の健康を守るために実践できる具体的な予防法と管理方法を紹介します。

食事に関する予防対策

  • 適切な食材保存:肉や魚、卵などの食材は常温に長時間放置せず、必ず冷蔵庫で保管しましょう。サルモネラ菌は10℃以下では増殖が抑えられます。
  • 十分な加熱:生肉や生魚を与える場合は、中心温度が75℃以上で1分間以上加熱することでサルモネラ菌を死滅させることができます。生食は避けるべきです。
  • 安全な食品選び:信頼できる製造元のペットフードを選びましょう。また、ドライフードも汚染される可能性があるため、保存状態にも注意が必要です。

衛生管理による予防

  • 食器の衛生管理:愛犬の食器は使用後に洗浄し、定期的に消毒することをお勧めします。特に生肉や生魚を与えた場合は、必ず洗浄・消毒を行いましょう。
  • 犬の排泄物の適切な処理:犬の糞便にはサルモネラ菌が含まれている可能性があります。排泄物は速やかに片付け、処理後は手をしっかり洗いましょう。
  • 生活環境の清潔維持:犬のベッドや玩具も定期的に洗浄・消毒し、清潔に保ちましょう。

その他の予防対策

  • 定期的な健康診断:犬の健康状態を定期的にチェックし、消化器症状がある場合は早めに獣医師に相談しましょう。
  • 散歩中の管理:散歩中に不審な物を食べないよう注意し、拾い食いの癖がある犬はマズルガードの使用を検討しましょう。
  • 複数のペットを飼育している場合:カメや爬虫類などと犬を同時に飼育している場合は、それぞれの生活空間を分け、交差感染を防ぎましょう。

サルモネラ症に感染した場合の管理

もし愛犬がサルモネラ症と診断された場合は、以下の点に注意して管理しましょう。

  • 獣医師の指示に従い、処方された薬を適切に投与する
  • 他の動物や人への感染を防ぐため、感染した犬と他の動物との接触を制限する
  • 感染した犬の排泄物を扱う際は、使い捨て手袋を使用し、適切に処理する
  • 感染した犬が使用した場所や物品は徹底的に消毒する
  • 完治するまでは、特に子どもや高齢者、免疫力の低下した人と感染した犬との接触を避ける

サルモネラ症の予防は、日常的な衛生管理と適切な食事管理が基本です。定期的な獣医師による健康チェックも重要な予防策となります。

犬からヒトへのサルモネラ感染リスクと注意点

サルモネラ症は人獣共通感染症であり、犬から人へ感染する可能性があります。特に知っておくべき感染リスクと注意点について詳しく解説します。

犬から人への主な感染経路

サルモネラ菌が犬から人へ感染する主な経路は以下の通りです。

  • 直接接触:サルモネラ菌を保有している犬の糞便に触れた後、手洗いが不十分だと経口感染するリスクがあります。
  • 間接接触:犬の排泄物で汚染された環境(床、犬のベッドなど)を介して感染することもあります。
  • 過度な接触:犬との過剰なスキンシップ(キスや口移しでのエサやり、犬が顔を舐めるなど)によっても感染リスクが高まります。

特にリスクが高い人

全ての人がサルモネラ感染のリスクを持ちますが、特に以下のグループは注意が必要です。

  • 免疫力の低下した人:高齢者、慢性疾患を持つ人、免疫抑制剤を使用している人など
  • 乳幼児・小児:衛生習慣が未熟で、手を口に入れる習慣がある
  • 妊婦:妊娠中は免疫力が変化するため

実際に、7ヶ月の乳児が室内飼育犬からサルモネラ菌に感染し、敗血症になった症例も報告されています。この症例では、乳児の便や血液から検出されたサルモネラ菌と、飼育されていたペットの水槽内の水から検出されたサルモネラ菌が同一であることが確認されています。

人がサルモネラ症に感染した場合の症状

人がサルモネラ症に感染した場合、主に以下のような症状が現れます。

  • 下痢(場合によっては血便)
  • 腹痛
  • 発熱
  • 嘔吐
  • 頭痛
  • 倦怠感

通常、サルモネラ菌に曝露してから8~48時間後に症状が現れます。多くの場合、適切な水分補給と休息で回復しますが、乳幼児や高齢者、免疫力の低下した人では重症化し、菌血症や髄膜炎などの深刻な合併症を引き起こすことがあります。

予防のための具体的対策

犬からヒトへのサルモネラ感染を予防するために、以下の対策を実践しましょう。

  1. 徹底した手洗い:犬に触れた後、特に排泄物を処理した後は、石鹸と流水で念入りに手を洗いましょう。
  2. 衛生的な環境維持:犬の生活空間を清潔に保ち、排泄物は速やかに適切に処理しましょう。
  3. 適切な接触:犬とのキスや口移しでのエサやりなどの過度な接触は避けましょう。特に免疫力の低い人や乳幼児は注意が必要です。
  4. 食品取扱いの区別:ペットのエサを準備する場所と人間の食品を扱う場所は分け、調理器具も別にしましょう。
  5. 感染した場合の対応:愛犬がサルモネラ症と診断された場合は、獣医師の指示に従い、人への感染予防に特に注意しましょう。完治するまでは、特に免疫力の低い人との接触を制限することをお勧めします。

サルモネラ症は適切な予防対策を講じることで、人への感染リスクを大幅に減らすことができます。愛犬との健全な関係を保ちながら、適切な衛生管理を心がけましょう。

最新の研究では、ペットから人へのサルモネラ感染が以前考えられていたよりも一般的であることが示されています。米国のデータによれば、1~10歳児のサルモネ