歯垢が犬の健康に与える影響
歯垢の犬への蓄積メカニズム
犬の歯垢は、食べかすと口腔内細菌、唾液の3つが結合することで形成される粘着性の物質です 。人間と同様に、食事から6~8時間後に歯の表面への付着が始まり、24時間経過すると完全に歯垢として定着します 。この歯垢は「プラーク」とも呼ばれ、透明で粘着性のある物質として歯の表面に蓄積していきます 。
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犬の唾液は人間と異なりアルカリ性であるため、虫歯にはなりにくい反面、歯垢内の細菌繁殖に適した環境となっています 。また、犬の口腔内細菌は糖質や炭水化物を好むため、甘いおやつを頻繁に与えることで歯垢の蓄積が加速します。
歯垢から歯石への変化プロセス
歯垢が歯に付着したまま放置されると、唾液中に含まれるカルシウムやマグネシウムなどのミネラル成分と結合し、石灰化が始まります 。この石灰化プロセスは犬の場合非常に早く、わずか2~3日間で歯垢が硬い歯石へと変化します 。
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人間では歯垢から歯石への変化に約20日間を要するのに対し、犬では3~5日という短期間で歯石が形成されるため、日常的なデンタルケアの重要性が格段に高くなります 。歯石の表面はざらざらとした構造をしており、新たな歯垢が付着しやすくなるため、歯周病リスクが急激に高まります 。
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歯垢が引き起こす犬の全身疾患
歯垢や歯石に蓄積した細菌は、歯周病を引き起こすだけでなく、血流を通じて全身に影響を与える可能性があります 。特に心臓、腎臓、肝臓への悪影響が報告されており、歯周病菌の毒素が血液循環によって運ばれることで、これらの臓器の機能を悪化させることが知られています 。
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重篤な歯周病では、口腔内の炎症により食欲低下や歯の脱落が生じるだけでなく、顔面に穴が開く(瘻管形成)や下顎骨折といった深刻な合併症も報告されています 。さらに、歯周病菌が脳や心臓に到達した場合、生命に関わる重篤な疾患に発展する可能性もあります 。
小型犬における歯垢蓄積リスクの特殊性
小型犬は大型犬と比較して歯垢が蓄積しやすい構造的特徴を持っています 。顎のサイズに対して歯が大きく、歯と歯の間隔が狭いため、食べかすが挟まりやすく、歯ブラシによる清掃も困難になります 。
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チワワ、トイプードル、ポメラニアン、パピヨンなどの小型犬では、乳歯遺残(乳歯が抜けずに残る状態)が頻繁に発生し、乳歯と永久歯が並んで生えることで歯並びが悪化します 。この歯並びの問題により、唾液による自浄作用が十分に機能せず、歯垢の蓄積がさらに促進されるという悪循環が生じます。
現代の犬特有の歯垢蓄積要因
野生時代の犬の祖先であるオオカミは、獲物を捕らえて引き裂く過程で自然に歯垢が除去されていました 。しかし、現代の飼い犬は柔らかく調理された食事が主体となり、歯と食物が擦れ合う機会が大幅に減少しています。
特にウェットフードを主食とする犬では、とろみのある食材が歯に付着しやすく、歯垢の蓄積速度が加速します 。また、硬い食べ物を噛む機会の減少により、唾液分泌量も低下し、口腔内の自浄作用が弱くなっています 。この現代的な食環境の変化が、犬の歯垢蓄積問題を深刻化させている主要な要因となっています。