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心房中隔欠損症の犬における症状と治療方法

心房中隔欠損症の症状と治療方法

心房中隔欠損症の犬における重要ポイント
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症状の特徴

欠損孔の大きさにより無症状から重篤な呼吸困難まで幅広い症状を示す

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診断方法

心エコー検査と聴診による心雑音の確認が重要な診断手段

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治療選択肢

内科治療から外科手術まで症状の程度に応じた多様な治療法

心房中隔欠損症の犬における基本的な症状

心房中隔欠損症の症状は、欠損孔の大きさによって大きく異なります。小さな欠損孔の場合、多くの犬は無症状で健康な生活を送ることができ、定期健診の際の心雑音によって初めて発見されることがほとんどです。
しかし、欠損孔が大きくなると、右心房に過度な負荷がかかり、以下のような症状が現れます。

  • 呼吸困難 – 肺への血流増加により呼吸が苦しくなる
  • チアノーゼ – 粘膜が青紫色に変色する酸素不足の症状
  • 運動不耐性 – 散歩や遊びの際に疲れやすくなる
  • – 肺水腫の初期症状として現れることがある

特に注意すべきは、肺高血圧が進行した場合です。この段階では血液の流れが逆転し(アイゼンメンジャー症候群)、酸素の少ない血液が全身を巡るため、重篤なチアノーゼが発症します。
10ヶ月間の経過観察を行った柴犬の症例では、適切な治療により症状の進行を抑制できていることが報告されており、早期発見と適切な管理の重要性が示されています。

心房中隔欠損症の犬種別発症リスクと早期発見

心房中隔欠損症は特定の犬種で発症リスクが高いことが知られています。最も発症しやすいとされているのは。

  • 柴犬 – 日本での報告例が最も多い犬種
  • イングリッシュ・スプリンガー・スパニエル – 海外での発症率が高い
  • ミニチュアダックスフント – 小型犬での発症例
  • フレンチブルドッグ – 短頭種での報告例

犬の先天性心疾患全体における心房中隔欠損症の割合は6.2~15.2%と決して低くない数値です。そのため、これらの犬種を飼育する際は、子犬の時期から定期的な健康診断を受けることが重要です。
早期発見のポイントとして、ワクチン接種時の聴診で心雑音が発見される事例が多く報告されています。2歳の柴犬の症例では、ワクチン接種時の身体検査で心雑音を聴取し、その後の心エコー検査で心房中隔欠損症が確定診断されました。
柴犬の心房中隔欠損症の実際の診断・治療例についてはこちら

心房中隔欠損症の犬への治療方法と選択肢

心房中隔欠損症の治療は、症状の程度と欠損孔の大きさに応じて選択されます。治療法は大きく内科治療と外科治療に分けられます。
内科治療の特徴と薬物療法
内科治療では以下の薬物が使用されます。

  • 強心剤 – 心臓の収縮力を向上させる
  • 血管拡張剤 – 血管の負担を軽減する
  • 利尿薬 – 体内の余分な水分を除去し心臓の負荷を軽減する

これらの薬物療法により心臓の負荷を軽減し、症状の進行を抑制することが可能です。ただし、内科治療は根本的な治療ではなく、症状の管理が主な目的となります。
外科治療の適応と方法
根本的な治療として、外科手術による欠損孔の閉鎖があります。手術方法には以下があります。

  • 開心術 – 心臓を直接開いて欠損部を修復
  • 経皮的血管内治療 – カテーテルを用いて欠損部を閉鎖
  • 肺動脈バンディング – 肺への血流を制限する補助的手術

4歳のスピッツの症例では、開心術により欠損孔を自家心膜パッチで閉鎖し、良好な結果を得たことが報告されています。
外科治療には特殊な設備と技術が必要なため、大学病院や循環器専門病院での実施が推奨されます。

心房中隔欠損症の犬の予後と生活管理のポイント

心房中隔欠損症の予後は、欠損孔の大きさと適切な管理により大きく左右されます。小さな欠損孔の場合、多くの犬が正常な寿命を全うできることが知られています。
長期管理における重要な要素

  • 定期的な心エコー検査 – 病状の進行を監視
  • 運動制限の調整 – 過度な運動を避けつつ適度な活動を維持
  • 体重管理 – 心臓への負担を最小限に抑制
  • 環境温度の管理 – 暑さによる呼吸困難を予防

実際の症例では、診断から10ヶ月経過後も元気に走り回り、体重も10キロまで増加している犬の報告があります。これは適切な管理により、心房中隔欠損症の犬でも良好な生活の質を維持できることを示しています。
合併症の予防と対策
肺高血圧の進行を防ぐため、以下の点に注意が必要です。

  • 興奮や激しい運動の制限
  • 定期的な血液検査による心機能の評価
  • 早期の症状変化の察知

心房中隔欠損症の詳細な症状と管理方法についてはこちら

心房中隔欠損症の犬における飼い主が見逃しやすいサイン

心房中隔欠損症の犬では、飼い主が日常的に見逃しやすい微細な変化があります。これらの早期サインを認識することで、適切なタイミングでの医療介入が可能になります。
初期段階の見逃しやすいサイン

  • 階段の昇降時の休憩頻度の増加 – 以前より頻繁に立ち止まる
  • 睡眠時の呼吸パターンの変化 – 浅く速い呼吸が続く
  • 食欲は正常だが食事時間の延長 – 疲労により食事に時間がかかる
  • 遊びの持続時間の短縮 – 以前より早く疲れを示す

環境変化に対する反応の変化
健康な犬では問題とならない環境変化でも、心房中隔欠損症の犬では症状が悪化する可能性があります。

  • 気温上昇時の過度な開口呼吸 – 軽度の暑さでも呼吸困難を示す
  • 湿度の高い日の活動性低下 – 普段より動きたがらない
  • ストレス環境での症状悪化 – 来客時や病院での極度の疲労

行動パターンの微細な変化

  • 横臥位より座位を好む傾向 – 呼吸を楽にするための体位選択
  • 散歩コースの自主的な短縮 – 犬自身が疲労を避ける行動
  • 夜間の咳の頻度増加 – 肺水腫の初期症状の可能性

これらのサインを早期に発見し、獣医師に相談することで、より効果的な治療計画を立てることができます。特に、4歳のスピッツで報告されたような運動不耐性や失神などの症状が現れる前に、これらの微細な変化を捉えることが重要です。
心房中隔欠損症の症状チェック項目についてはこちら
定期的な獣医師との相談により、愛犬の生活の質を最大限に維持しながら、適切な治療を継続することが可能です。早期発見と継続的な管理により、多くの犬が心房中隔欠損症と共に充実した生活を送ることができています。