心臓超音波検査と犬の健康診断
心臓超音波検査が必要な犬の症状と特徴
愛犬の心臓病は初期段階では症状が現れにくく、飼い主が気づいた時には既に進行している場合が多くあります。特に以下のような症状が見られる場合は、心臓超音波検査を検討することが重要です。
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主な症状と注意すべきサイン 🚨
- 散歩中に疲れやすくなる、息切れが目立つ
- 咳が続く(特に夜間や早朝)
- 食欲不振や体重減少
- 腹部の膨らみ(腹水の蓄積)
- 失神やふらつきの症状
小型犬では10〜12歳頃から心雑音が検出されることが多く、定期的な聴診検査で早期発見が可能です。マルチーズ、シーズー、キャバリア、ポメラニアン、チワワなどの犬種は僧帽弁閉鎖不全症の発症リスクが高いため、特に注意が必要です。
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心臓超音波検査で診断できる犬の主要疾患
心臓超音波検査は犬の様々な心疾患の診断に欠かせない検査方法です。最も頻繁に診断される疾患が僧帽弁閉鎖不全症で、小型犬の高齢犬に多く見られます。
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僧帽弁閉鎖不全症の診断基準 📊
- LA/AO比(左房径大動脈径比):1.6以上で左心房拡大を示唆
- VHS(心拡大の指標):犬では10.5以上で心拡大を示す
- FS(左室内径短縮率):正常値は35〜45%
検査では心臓の4つの部屋(左右の心房と心室)のサイズ、心筋の厚さ、弁の動き、血流の状態を詳細に評価できます。特にドプラ法を用いることで、血液の逆流や流速を正確に測定し、病気の重症度を判定することが可能です。
心臓超音波検査の実施方法と犬への負担
心臓超音波検査は犬にとって非侵襲的で痛みを伴わない検査です。プローブと呼ばれる超音波発生装置を胸部に当てて実施し、検査中は横になって静かにしている必要があります。
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検査の実際の流れ 🏥
- 検査時間:15〜30分程度
- 保定:看護師による優しい固定
- 麻酔:基本的に無麻酔で実施
- 不安が強い場合:軽い鎮静剤を使用することもある
多くの犬は落ち着いて検査を受けることができますが、環境に慣れない犬や不安の強い犬には薬を使ってリラックスさせてから検査を行う場合があります。飼い主への事前説明と同意を得てから実施するため、安心して検査を受けることができます。
心臓超音波検査による犬の治療計画立案
心臓超音波検査の結果は、犬の心疾患の治療方針決定に直接的に活用されます。特に僧帽弁閉鎖不全症では、ACVIMステージ分類に基づいた段階的な治療アプローチが採用されています。
ステージ別治療アプローチ 💊
- ステージA:リスク因子のみ、経過観察
- ステージB1:心雑音あり、心拡大なし、無治療経過観察
- ステージB2:心雑音あり、心拡大あり、投薬治療開始
- ステージC:心不全症状あり、積極的な投薬治療
投薬治療の開始時期は、レントゲン検査と心エコー検査で心臓の拡大が明確に認められた場合とされています。ピモベンダンなどの薬物療法により病気の進行を遅らせ、愛犬の生活の質を維持することが可能です。
心臓超音波検査を活用した犬の予防的健康管理
心臓超音波検査は病気の診断だけでなく、健康な犬の予防的健康管理にも重要な役割を果たします。特に心疾患のリスクが高い犬種や高齢犬では、定期的な検査により早期発見と適切な管理が可能になります。
参考)心臓病の検査と診断
効果的な健康管理スケジュール 📅
- 7歳以下:年1回の健康診断時に実施
- 7歳以上:6ヶ月〜1年に1回の定期検査
- 心雑音検出後:3〜6ヶ月に1回の経過観察
- 治療開始後:1〜3ヶ月に1回のフォローアップ
心臓検診の費用は15,000〜20,000円程度で、所要時間は60分程度です。単独の心エコー検査では4,000〜8,000円程度の費用で実施できます。早期発見により重篤な心不全への進行を防ぎ、愛犬の健康寿命を延ばすことができるため、予防的な検査の価値は非常に高いといえます。
獣医循環器認定医による専門的な診断と治療により、心臓病で苦しむ愛犬の生活の質を大幅に改善することが可能です。定期的な心臓超音波検査を通じて、愛犬の心臓の健康を守り続けることが大切です。