消化不良になりやすい犬の症状と原因から対処法
消化不良で現れる犬の主な症状
犬の消化不良では、消化器系に炎症が起きるため主に消化器症状(嘔吐や下痢など)が現れます 。この症状は急激に始まることもあれば、慢性的に続くこともあります 。
参考)犬の胃腸炎|下痢や嘔吐が続く場合は病気が隠れている可能性も …
具体的な症状は以下の通りです。
- 嘔吐 – 食べたものや胃液、胆汁を吐く
- 下痢 – 軟便から水様便まで様々
- 食欲不振 – 普段の食事量が減る
- 元気消失 – 活動性の低下
- お腹がキュルキュル鳴る – 腸管の異常な動き
- 腹痛 – お腹を触ると嫌がる
症状が重くなるに従って元気や食欲の消失も見られ、重度になると脱水症状を引き起こす危険性もあります 。愛犬が未消化の物を嘔吐してしまう場合、食べ過ぎや季節の変わり目、環境の変化による一時的な消化不良が考えられますが、1〜2日経っても症状が改善しない場合や、下痢と嘔吐が同時に起こる場合には注意が必要です 。
参考)犬が未消化の物を嘔吐してしまう理由と正しい対処法 – 大阪梅…
消化不良を引き起こす犬の主な原因
犬の消化不良にはいろいろな原因が考えられますが、主に腸内細菌のバランスの破綻による腸内環境の悪化や、寄生虫の感染、アレルギー、急な食事内容の変更などが挙げられます 。
原因1:ストレスによるもの
犬は長時間のお留守番や運動不足、近所での騒音を伴う工事、新しいペットとの同居、ペットホテルでのお泊りなどでストレスを感じたときに、消化不良を起こすことがあります 。ストレスは犬の消化機能に悪影響を及ぼし、腸内の健康状態を悪化させます 。
参考)【獣医師監修】犬が消化不良を起こす原因について|症状別の対処…
原因2:食餌によるもの
食餌の食べ過ぎやフードの急な切り替え、フードが体質に合わないなど、食餌の影響によって消化不良を起こすことがあります 。また、食べてはいけない物を拾い食いすることによって下痢や嘔吐の症状が現れることもあります 。
原因3:病気によるもの
消化不良を起こす病気はさまざまで、細菌やウイルス、寄生虫などの感染症や消化管にできる腫瘍、肝臓疾患などが挙げられます 。食物アレルギーや拾い食いによる中毒が原因になることもあります 。
原因4:消化酵素の不足
犬の消化酵素が十分に分泌されていないと、食べたものをうまく分解できず、消化不良が起こります 。特に年を重ねた犬や、特定の疾患を抱えている犬は、消化酵素の分泌が少なくなるため、消化機能が低下することがあります 。
参考)愛犬も消化不良になる?症状や原因、適切な対処法について解説
消化不良になりやすい犬の年齢と特徴
1歳未満の若い犬は消化不良のリスクが高い
胃腸の病気になりやすいのは10歳以上のシニア犬かと思いきや、実は1歳未満の若い犬がなりやすいのです 。1歳未満の子犬は免疫機能がまだ不安定で、腸内寄生虫やウイルスへの抵抗性が弱い場合があります 。
参考)胃腸の病気になりやすい犬種|若い犬ほど注意!|いぬのきもちW…
ペットショップやブリーダーから飼い主さんの家庭に迎え入れられたばかりのタイミングなど、環境の変化によるストレスを感じた結果、消化不良になることがあります 。消化管が未発達な子犬は、食後40分〜2時間くらいで食べた物が便として排出されます 。
参考)【獣医師監修】犬の消化時間について|ライフステージで異なる消…
シニア犬も消化不良を起こしやすい
もちろん、7歳以上のシニア犬になると免疫力が低下しはじめ、寄生虫や細菌、ウイルスへの抵抗力が下がって感染性の胃腸炎になりやすくなるので注意が必要です 。老犬になると消化管の機能が低下してくるため、消化に時間がかかるようになります 。
犬種による差は少ない
もともと胃腸が弱い体質など、消化不良の起こしやすさには個体差がありますが、犬種による違いは無いとされています 。ただし、好奇心旺盛で何でも口にしてしまう犬種では、落ちている食べ慣れないものも口にしてしまい、胃や腸への刺激により胃腸炎や腸閉塞などを発症しやすい傾向があります 。
消化不良の犬への食事療法と低脂肪フード
低脂肪食事療法の重要性
消化器疾患があるとき、食事がとても重要になります 。病気の種類や症状に応じて、適切な食事を選ぶことが大切です 。例えば、膵炎(膵臓の炎症)がある犬には、低脂肪の食事が推奨されます 。脂肪が多いと膵臓に負担がかかり、症状が悪化するからです 。
参考)ペットの消化器疾患と栄養―愛犬と愛猫の健康を守るために―
食事療法食の特徴
VETインテスティナル/ローファット(消化器ケア/低脂肪)のような療法食は、消化吸収不良による下痢症状や、膵炎、高脂血症に対応した食事療法食です 。脂肪の含有量を低く制限し、高品質な高消化性タンパク質を使用することで、消化機能が低下している状態の愛犬の健康な栄養吸収をサポートし、消化器官への負担を軽減します 。
参考)VETインテスティナル/ローファット(消化器ケア/低脂肪) …
プレバイオティクスの効果
酵母由来のイヌリン、マンナンオリゴ糖(MOS)などのプレバイオティクスが腸内フローラのバランスを整え、水溶性食物繊維が便の安定を促します 。腸内には、たくさんの細菌が住んでいて、これらの細菌は善玉菌、悪玉菌、そして日和見菌に分かれます 。
食事の与え方の工夫
消化できずに吐き戻してしまうような場合は、ドッグフードを消化しやすいようお湯でふやかしたり、一日分の食事を小分けにして与える回数を増やすなどの工夫をして、消化管にかかる負担を減らしましょう 。普段、粒の大きなフードを食べている場合は、細かくしたり、ふやかしたりしてあげるのもオススメです 。
参考)【獣医師監修】愛犬の下痢の原因や対処法、食事などでできる予防…
消化不良の犬に効果的な腸内環境改善とプロバイオティクス
プロバイオティクスの重要性
腸内細菌のバランスを保つために、プロバイオティクスとプレバイオティクスが役立ちます 。プロバイオティクスは、腸内に良い影響を与える生きた細菌のことです 。一方、プレバイオティクスは、腸内の善玉菌のエサとなる物質のことです 。
最新の研究結果
ビフィズス菌G9-1および乳酸菌KS-13を健康な犬に6週間継続的に摂取させた研究では、摂取前と摂取後の腸内菌叢の有意な変化(p=0.019)が認められました 。このことから、これらの菌株の摂取が、犬の腸内菌叢に作用し、腸内菌叢が変化することが明らかとなりました 。
参考)ビフィズス菌G9-1と乳酸菌KS-13が 犬の腸内環境を改善…
子犬への効果
急性下痢は犬の獣医師への相談で最も多い原因の一つです 。1~4ヶ月齢の胃腸炎の子犬120頭を対象とした二重盲検プラセボ対照試験では、多菌株プロバイオティクス(Lactobacillus johnsonii CRL1693、Ligilactobacillus murinus CRL1695、Limosilactobacterium mucosae CRL1696、Ligilactobacillus salivarius)を投与したグループで回復が促進されました 。
参考)https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC10286135/
長期的な効果
プロバイオティクスとプレバイオティクスをバランスよく摂ることで、腸内環境を整えることができます 。腸内環境を整えるために乳酸菌入りのごはんやおやつを与えるのも良いでしょう 。毎日習慣的に与えることで効果を実感しやすくなります 。
消化不良を予防する犬の日常ケアと消化酵素サプリメント
消化酵素サプリメントの必要性
消化酵素不足により栄養吸収が滞ってしまっている状態では、たとえ良質なフードを与えても、犬の健康維持において効果的とはいえません 。そのため、消化酵素不足が心配な犬には、フードのほかに適切なサプリメントを与えると良いでしょう 。
参考)不足しがちな消化酵素の効果とは?サプリメントで犬の消化酵素を…
消化酵素の不足が疑われる場合、消化酵素サプリメントを獣医に相談の上、使用することが有効です 。愛犬のお腹の調子が気になるタイミングは、もともとお腹が弱い体質、胃炎や膵炎を起こした、老齢により消化吸収能力が衰えてきた、フードの切り替え時、気候の変化、ストレス時、草を食べたがるなど様々あります 。
日常的な予防対策
愛犬の下痢を予防するためには、普段から消化に良い食事を心掛け、ストレスのかからない生活を送れるようにしてあげましょう 。カギとなるのは、「消化に良い食事・腸内環境を整える」「ワンちゃんにとって居心地のいい環境を整える」です 。
具体的な対処法
- 食事は適量をあげる
- 犬に与えてはいけない食べ物をあげない
- 散歩・運動を定期的に行う
- 犬が過ごしやすい環境を整える
- 室温を調整する
愛犬にとって居心地のよい住環境を整え、ストレスのない生活を送らせてあげることも重要です 。季節に関係なくおなかを冷やさないようにしてあげるのもポイントで、温度管理はもちろん、ベッドやブランケットなども活用してみてください 。