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水晶体脱臼の原因と症状・治療法

水晶体脱臼の基本知識

水晶体脱臼の基本情報
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水晶体脱臼とは

犬の目のレンズが本来の位置からずれる病気

⚠️

緊急性

前方脱臼は緊急治療が必要

🐕

好発犬種

テリア種を中心とした特定犬種に多発

水晶体脱臼の基本的なメカニズム

水晶体脱臼は、犬の目の中にある水晶体が本来の位置からずれてしまう眼疾患です。水晶体は「チン小帯」と呼ばれる細い繊維によって支えられており、この繊維が断裂や緩みを起こすことで水晶体が外れてしまいます。

水晶体は通常、虹彩の後方および瞳孔の中心に位置しており、カメラのレンズのような働きをして光を屈折させ、網膜に像を結ぶ役割を担っています。しかし、チン小帯に異常が生じると、この重要な器官が正常な位置を保てなくなってしまいます。

興味深いことに、水晶体脱臼には「完全脱臼」と「亜脱臼」という段階があります。完全に脱臼せずに一部の支えを失って下方に沈んだ状態を水晶体亜脱臼と呼び、これは完全脱臼への前段階として注意深く観察する必要があります。

水晶体脱臼の症状と緊急度

水晶体脱臼の症状は、脱臼の方向によって大きく異なります。まず、水晶体が瞳孔より前にずれる「前方脱臼」と、瞳孔より後ろにずれる「後方脱臼」に分類されます。

前方脱臼は最も緊急性の高い状態です。犬は激しい目の痛みを感じ、目をしょぼつかせたり涙が多くなったりします。また、白目が赤くなり、角膜浮腫や緑内障を引き起こす可能性があります。この状態は視力を失うリスクが極めて高く、緊急での治療が必要です。

一方、後方脱臼は前方脱臼に比べて症状が軽度な場合が多いとされています。症状が出ないこともありますが、網膜剥離や眼内出血を引き起こす可能性があります。犬の水晶体脱臼の多くは後方脱臼であると報告されています。

飼い主が観察できる症状として以下が挙げられます:

  • 目の表面が白く濁っている
  • 白目が赤くなっている
  • 目が大きくなった
  • 目を気にしてこすったりかいたりする
  • よく物にぶつかるようになった
  • 元気や食欲がなくなった

水晶体脱臼の原因と好発犬種

水晶体脱臼の原因は「原発性」と「続発性」に大きく分けられます。

原発性水晶体脱臼は、遺伝的な要因によって引き起こされます。特定の犬種でチン小帯の断裂が生じやすい遺伝的素因があるとされ、多くは両目に発症します。テリア種を中心とした以下の犬種で好発が確認されています:

・テリア種

・その他の好発犬種

続発性水晶体脱臼は、他の疾患や外傷が原因となって発生します。主な原因には以下があります:

これらの原因疾患がかなり進行し重度の状態になった時に水晶体脱臼が発症することが多く、基礎疾患の管理が重要となります。

水晶体脱臼の診断方法

水晶体脱臼の診断には、複数の検査を組み合わせた総合的な評価が必要です。

最も重要な検査は「細隙灯検査(スリットランプ検査)」です。目に細長い光を当てて、水晶体の位置や眼球内の構造を詳細に観察します。この検査により、水晶体の脱臼の程度や方向を正確に把握することができます。

「眼圧検査」では、眼圧計を使用して眼圧を測定します。水晶体脱臼に伴って緑内障が併発している場合、眼圧の上昇が認められるため、治療方針の決定に重要な情報となります。

「眼球の超音波検査」は、目に超音波を当てて眼球内の状態を観察する検査です。特に後方脱臼の場合、水晶体が眼球の奥に移動してしまい肉眼では確認が困難なケースで威力を発揮します。

肉眼での観察も診断の手がかりとなります。水晶体の位置がずれていることを確認できる場合がありますが、犬が触られるのを嫌がることも多く、専門的な検査が必要となる場合が大部分です。

合併している疾患や疑われる疾患によっては、血液検査など追加の検査も実施されることがあります。

水晶体脱臼の治療選択肢と予後

水晶体脱臼の治療は、脱臼の方向、症状の重症度、併発疾患の有無によって方針が決定されます。

前方脱臼の場合は、基本的に外科的治療が第一選択となります。角膜浮腫や緑内障などの重篤な合併症を引き起こす可能性が高いため、緊急手術が必要です。手術では全身麻酔下で水晶体を摘出します。ただし、水晶体を元の位置に戻すことはできないため、完全な摘出が行われます。

後方脱臼の場合は、通常外科的な処置を必要としません。症状が出ないことがあるため経過観察となることが多いですが、前方脱臼への移行を防ぐために縮瞳薬(瞳孔を小さくする目薬)の点眼治療を行います。

内科的治療として、痛みがある場合には鎮痛剤を使用し、他の眼疾患がある場合にはそれに対する治療を並行して実施します。

手術後の視力について、多くの飼い主が心配されますが、水晶体を摘出しても完全に失明するわけではありません。水晶体がなくても「すりガラス越しのようなぼんやりとした状態」で物を見ることができるとされています。

一般的に眼内レンズは挿入せず、水晶体摘出のみを行う方式が採用されています。これは犬の生活において十分な視機能を維持できるためです。

予後については、早期発見・早期治療により良好な結果が期待できます。しかし、治療が遅れた場合は視力を失うリスクが高まるため、日頃からの観察と定期的な検査が極めて重要です。

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