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低アルブミン血症の犬の症状と原因と治療と食事療法

低アルブミン血症と犬

犬の低アルブミン血症の基本
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定義

血液中のアルブミンというタンパク質が正常値(2.5g/dL以上)より低下した状態

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主な症状

むくみ、腹水、元気消失、下痢、体重減少、傷の治りが遅いなど

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治療の柱

原因疾患の治療、低脂肪食の食事療法、必要に応じた薬物療法

低アルブミン血症の犬の症状とむくみの関係

低アルブミン血症は、犬の血液中のアルブミンという重要なタンパク質が正常値よりも減少している状態です。アルブミンは血液中のタンパク質の約60%を占め、血液の膠質浸透圧(濃さ)の80%を担っている非常に重要な成分です。このアルブミン値が2.5g/dL未満になると、低アルブミン血症と診断されます。

低アルブミン血症の犬によく見られる症状として、以下のものが挙げられます。

  • むくみ(特に足や顔)
  • 腹水(お腹に水がたまる)
  • 胸水(呼吸が苦しくなる)
  • 元気や食欲の低下
  • 下痢や軟便(必ずしも全ての症例で見られるわけではない)
  • 体重減少
  • 傷の治りが遅い
  • 血栓ができやすくなる

特に注目すべきはむくみと腹水の関係です。アルブミンは血液中の水分を血管内に保持する役割を担っています。アルブミン値が低下すると、血液中の水分を血管内にとどめておくことができなくなり、細胞や血管の外側に液体が漏れ出てしまいます。これが体のむくみや腹水、胸水といった症状として現れるのです。

重度の低アルブミン血症になると、これらの症状が悪化し、命に関わる状態になることもあります。特に胸水がたまると呼吸困難を引き起こし、緊急の治療が必要になることもあります。

低アルブミン血症の犬の原因と診断方法

犬の低アルブミン血症の原因は多岐にわたります。大きく分けると以下のような原因が考えられます。

  1. 肝臓での生産量の低下
    • 肝機能障害や肝不全によりアルブミンの合成能力が低下
    • 肝硬変や肝炎などの肝臓疾患
  2. 体外への漏出
    • 出血:体表からの出血、消化管内出血、血尿など
    • 尿からの漏出:腎臓の問題によるタンパク漏出性腎症(PLN)
    • 便からの漏出:腸の問題によるタンパク漏出性腸症(PLE)
  3. その他の原因
    • 栄養不良や消化吸収障害
    • 点滴による血液の希釈
    • 慢性炎症

特に犬では、タンパク漏出性腸症(PLE)が低アルブミン血症の主要な原因となることが多いです。これは腸からタンパク質が漏れ出してしまう状態で、腸リンパ管拡張症、炎症性腸疾患(IBD)、胃腸型リンパ腫などが背景にあることが多いとされています。

診断方法としては、以下のようなものがあります。

  • 血液検査:アルブミン値や総タンパク値の測定が基本
  • 尿検査:タンパク質が尿から漏れていないかの確認
  • 糞便検査:消化器系の問題がないかの確認
  • 画像診断:X線検査や超音波検査により、腹水や胸水の有無、肝臓や腎臓、腸の状態を確認
  • 内視鏡検査:腸の状態を直接観察し、組織サンプルを採取することも

超音波検査は特に有用で、タンパク漏出性腸症では小腸粘膜に特徴的な筋状の画像(striation)が見られることがあります。また、リンパ腫の場合はリンパ節の腫れや胃腸の壁の肥厚が確認できることもあります。

低アルブミン血症の犬の治療と食事療法

低アルブミン血症の治療は、原因となっている疾患の治療が基本となります。しかし、どの原因であれ、食事療法は重要な治療の柱となります。

原因疾患別の治療アプローチ

  • 肝疾患が原因の場合:肝機能をサポートする薬物療法と肝臓に優しい食事
  • 腎疾患が原因の場合:腎機能をサポートする治療と低タンパク・低リン食
  • タンパク漏出性腸症(PLE)の場合:腸の炎症を抑える治療と低脂肪食

特に犬のタンパク漏出性腸症(PLE)に対する治療は、以下の2つの柱で構成されます。

  1. 食事療法
    • 低脂肪食:腸のリンパ管を広げる(リンパ液を増やす)脂肪の摂取を極力制限します。市販の低脂肪ドッグフードは脂質含有量が7~8%程度ですが、症例によってはさらに低い「超低脂肪食」が必要になることもあります。
    • アレルギーに配慮した食事:食物アレルギーが関与している場合もあるため、アレルゲンを避けた食事が重要です。過去の食事歴を詳細に確認し、可能な限りアレルゲンを除去したレシピを作成します。
  2. 薬物療法
    • ステロイド薬:炎症を抑えるために使用されることが一般的です。
    • 免疫抑制薬:ステロイドだけでは効果が不十分な場合に使用されることがあります。
    • 抗癌剤:リンパ腫が原因の場合に検討されます。

食事療法の際の注意点として、極端な脂質制限によりリノール酸不足が生じることがあります。また、カルシウムやリンの絶対量不足や比率の乱れにより、長期給与は体にマイナスになる可能性もあるため、獣医師と相談しながら慎重に食事設計を行うことが重要です。

低アルブミン血症の基本情報と治療アプローチについての詳細はこちら

低アルブミン血症の犬の腸温活とアルブミン改善

低アルブミン血症の治療において、あまり知られていない重要なアプローチとして「腸の温活」があります。最新の研究と臨床経験から、腸の温度を上げることで低アルブミン血症の改善に効果があることが分かってきました。

なぜ腸の温活が重要なのでしょうか?その理由は以下のとおりです。

  • 現代の犬は腸が冷えやすい環境にあり、これが低アルブミン血症を引き起こす一因となっている
  • 冷えた腸は栄養吸収能力が低下し、特にタンパク質の吸収が悪くなる
  • 薬物治療だけでは体温がさらに下がり、早期の改善が期待できないことがある

腸温活のための具体的なアプローチ

  1. 温活食の導入
    • 体を内側から温める食材(生姜、ターメリックなど)を取り入れる
    • 消化のよい良質なタンパク質を適量含む手作り食
    • 温かい状態で給餌する(常温や冷たい食事は避ける)
  2. 血流改善
    • 適度なマッサージによる腹部の血流促進
    • 腹部を温める(ホットタオルなど、やけどに注意)
    • 適度な運動による全身の血流改善
  3. 筋肉量の増加
    • アルブミンはタンパク質の一種であり、体内のタンパク質代謝と密接に関連
    • 適切な筋肉量を維持することで、タンパク質代謝を正常に保つ
    • 低強度の筋力トレーニング(短い散歩、簡単な遊びなど)

腸を温めることで腸内環境が改善すると、摂取した食べ物の栄養をしっかり吸収できるようになります。栄養が全身に行き渡ることで体温が上昇し、さらに腸内環境の改善によって免疫力もアップします。この好循環が、低アルブミン血症の改善につながるのです。

腸温活によるアルブミン改善の詳細はこちら

低アルブミン血症の犬のタンパク漏出性腸症の対策

犬の低アルブミン血症の主要な原因の一つがタンパク漏出性腸症(PLE)です。これは一つの病気ではなく、腸からタンパク質が漏れ出る状態を指す総称です。効果的な対策を立てるためには、この状態についての正しい理解が欠かせません。

タンパク漏出性腸症の主な原因疾患

  • 腸リンパ管拡張症:腸のリンパ管が拡張して破れ、リンパ液が腸内に漏れる
  • 炎症性腸疾患(IBD):腸粘膜の慢性的な炎症により、タンパク質が漏れ出る
  • 胃腸型リンパ腫:リンパ球のがんで、腸の構造を破壊する

特に腸リンパ管拡張症では、必ずしも下痢などの消化器症状が見られないこともあるため、注意が必要です。

タンパク漏出性腸症の対策

  1. 早期発見・早期治療
    • 定期的な健康診断による血液検査
    • アルブミン値の経時的な監視(特にリスクの高い犬種)
    • 体重の急激な減少や軽度のむくみなど、早期の兆候に注意
  2. 品種別のリスク管理
    • ヨークシャー・テリアなど、タンパク漏出性腸症のリスクが高い犬種では特に注意
    • 若齢での発症は少ないが、胃腸のリンパ腫は比較的高齢で発症することが多い
  3. 長期的な管理
    • 定期的な血液検査によるアルブミン値のモニタリング
    • 体重の記録と変化の観察
    • 食事内容の記録と症状との関連性の確認
  4. 栄養管理の注意点
    • サプリメントの使用は獣医師と相談(アレルゲンが含まれている可能性がある)
    • 低脂肪食の継続と必要に応じた調整
    • 食事の変更は段階的に行い、急激な変化は避ける

タンパク漏出性腸症の治療は完治が難しい場合もあり、長期的に付き合っていく必要があります。症状が安定している場合でも、定期的な検査と食事管理を継続することが重要です。

また、タンパク漏出性腸症による低アルブミン血症では、アルブミン以外のタンパク質も漏出していると考えられています。そのため、むくみや腹水・胸水の貯留だけでなく、血栓塞栓症のリスクや、それに伴う突然の容態変化の可能性があることを理解して、適切なケアを行うことが重要です。

タンパク漏出性腸症の詳細な症状と検査・治療法についてはこちら

低アルブミン血症は、症状が進行すると命に関わる深刻な状態になる可能性もある病態です。しかし、早期発見と適切な治療、そして日々の食事管理と腸の健康維持によって、多くの犬たちの状態を改善し、生活の質を向上させることができます。愛犬の健康のために、定期的な健康診断と、少しでも気になる症状があれば早めに獣医師に相談することをお勧めします。