予防接種と犬の健康管理
予防接種の必要性と健康効果
犬の予防接種は、愛犬を感染症から守るための最も効果的な方法です。ワクチン接種によって、犬の免疫システムが特定の病原体に対して抵抗力をつけることができ、病気の発症リスクを大幅に下げることが可能です。特に、子犬は成犬と比べて免疫力が低いため、感染症に対する予防が重要です。
現代では「狂犬病」や「レプトスピラ」のように人間にも感染する病気(人獣共通感染症)の予防にも役立ち、公衆衛生の観点からもワクチン接種の重要性は非常に高まっています。万が一、愛犬が病気にかかってしまった場合、すでに体内に病原菌が侵入しているため、治療には多くの費用と時間がかかり、犬自身の負担も大きくなります。
研究によると、適切なワクチン接種により、重症化を防ぎ、時には命を救うことも可能とされています。特に致死率の高い感染症に対する予防効果は、飼い主にとって安心材料となります。
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予防接種の種類と対象疾患
犬の予防接種は大きく分けて「狂犬病ワクチン」と「混合ワクチン」の2種類があります。狂犬病ワクチンは、犬だけでなく人間を含むすべての哺乳類に感染する可能性がある致命的なウイルスに対するものです。この病気は感染した動物の唾液が傷口や粘膜に接触することで伝播し、感染すると脳に障害を引き起こすなどの神経症状が現れます。
狂犬病は治療が不可能で、発症すると高確率で死に至るため、予防が極めて重要です。日本では1年に1回必ず接種することが法律で義務付けられており、最初の接種は生後3か月頃に行われます。公共の場での散歩やドッグラン、トリミング、ペットホテルを利用する際にも狂犬病ワクチン接種証明が必要になります。
混合ワクチンは、犬が罹患しやすい複数の感染症に対して同時に予防することを目的としたワクチンです。一般的には犬ジステンパーウイルス、パルボウイルス、アデノウイルス(感染性肝炎)、パラインフルエンザウイルスなどが含まれます。これらの病気は犬の健康に重大な影響を及ぼし、時には死に至ることもある感染症です。
予防接種の接種時期と費用
子犬の混合ワクチン接種は、一般的に生後6~8週齢で初回接種を行い、その後16週齢またはそれ以降まで2~4週間間隔で接種を行うことが推奨されています。具体的なスケジュール例として、1回目:生後8週齢まで、2回目:生後12週齢、3回目:生後16週齢となります。最後の接種が完了してから約1週間後にようやく十分な免疫がつくと考えられています。
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成犬の場合は1年ごとに1回の接種が推奨されていますが、使用するワクチンの種類や愛犬の体調、地域の感染状況によって適切な接種間隔が異なるため、かかりつけの獣医師と相談してスケジュールを決めることが大切です。国際的なガイドラインでは、成犬への核心ワクチンは3年毎の接種でも十分な免疫が維持されるとする研究結果もあります。
参考)https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC7167131/
混合ワクチンの費用は種類によって異なり、2種混合で4,000円前後、5種混合で5,900円前後、8種混合で7,800円前後、10種混合で8,600円前後が目安となっています。狂犬病ワクチンは3,000~4,000円程度です。動物病院によって接種できる混合ワクチンの種類に違いがあるため、希望がある場合は事前に確認が必要です。
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予防接種の選び方と生活環境
混合ワクチンの選択は、犬の生活環境やライフスタイルによって決定すべきです。感染リスクが少ない地域で外に出る機会があまりない犬は、5種か6種が適しています。5種と6種の違いは、コロナウイルスが含まれているかどうかなので、コロナウイルスも予防したい場合は6種を選択します。
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室内飼いで近所の散歩程度であれば5~6種混合で十分ですが、関西・九州方面への旅行やキャンプ場、ドッグランを利用する場合は7~9種混合が推奨されます。7種以上の混合ワクチンには「レプトスピラ感染症」の予防が含まれており、これは野生動物の尿で汚染された土壌や水辺から感染する細菌による人獣共通感染症です。
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超小型犬(体重3kg未満)や超高齢犬など体力に衰えが見られる場合は、5~6種混合が推奨されます。一方、自宅付近でドブネズミを見かける環境や、野外活動が多い犬は7~9種混合を選択することで、より広範囲な感染症から愛犬を守ることができます。アレルギー体質でワクチン接種後に体調を崩しやすい場合は、無理をせずに6種以下のワクチンを選ぶことが安全です。
予防接種の副作用と注意点
ワクチン接種後には副作用が現れる場合があり、代表的な症状として元気や食欲がない状態、発熱、注射部位の痛み、嘔吐、下痢、蕁麻疹、顔の腫れ、全身のむくみなどが挙げられます。これらの副作用は6時間以降から発症することが多く、遅い場合は接種後半日~1日程度で現れてきます。
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特に重要なのは「アナフィラキシーショック」と呼ばれる、接種後1時間以内に現れる重篤な副作用です。症状としてはぐったりする、チアノーゼ(口の粘膜が真っ白になる)、吐き気などのショック症状が出る場合があり、この状態を放置すると命に危険が及ぶため、すぐに病院での対応が必要です。
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また、接種数時間後に顔面の腫れや痒みが出ることもありますが、パグなどの短頭種は呼吸困難を起こす可能性があるため特に注意が必要です。副作用への対処として、予防接種は午前中に受け、接種後は様子を見ていられるように外出の予定を入れないことが推奨されます。狂犬病ワクチンは比較的副作用の発生率が低いとされていますが、万が一に備えて接種後30分間は愛犬の様子を注意深く観察することが重要です。
参考)狂犬病ワクチンについて
特別な意外情報として、犬のワクチン研究では、個々のワクチン成分を単独で接種した場合と比較して、複数の成分を混合したワクチンの方がリンパ球反応を抑制する傾向があることが判明しています。これは免疫系への複合的な影響を示唆しており、ワクチン選択時の考慮要素となります。
参考)https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC1255540/
獣医師による専門的な狂犬病予防の情報
混合ワクチンの科学的根拠に関する情報