ヨークシャー・テリアのかかりやすい病気
ヨークシャー・テリアの消化器系の病気と症状
ヨークシャー・テリアで最も注意すべきなのが消化器系の病気です。特にタンパク喪失性腸症は、腸の慢性的な炎症により腸粘膜からタンパク質が漏れ出し、低蛋白血症を引き起こす深刻な疾患です。
この病気の主な症状は以下の通りです。
- 慢性的な下痢が続く
- 食事量は変わらないのに体重が減少する
- 嘔吐や脱水症状
- お腹が膨れる腹水の蓄積
治療には抗炎症薬や免疫抑制剤の投与、低脂肪・高タンパクの食事療法が用いられます。年間治療費は約18万円と高額になることが多いため、早期発見が重要です。
また、ヨークシャー・テリアは胃炎や胃腸炎も頻発する犬種として知られています。下痢、嘔吐、血便などの症状が見られた場合は、ストレス性の要因も考慮する必要があります。
ヨークシャー・テリアの眼と泌尿器の病気
ヨークシャー・テリアは眼の病気にも注意が必要で、特に乾性角結膜炎(ドライアイ)の発症率が高いことが知られています。涙の分泌量が減少したり成分バランスが崩れることで炎症を引き起こし、重症化すると視力障害や失明の恐れもあります。
初期症状として以下の変化が見られます。
- 目をしょぼしょぼさせる仕草
- ねばねばした目やにの増加
- 黄緑色の目やにが出る(進行時)
治療には点眼薬や免疫抑制剤のシクロスポリン眼軟膏が使用され、治療費は約4万6千円程度です。
泌尿器系では慢性腎臓病が深刻な問題となっています。腎機能が数ヶ月から数年かけて徐々に低下し、初期段階では症状が現れにくいのが特徴です。進行すると以下の症状が見られます。
- 体重減少と毛艶の悪化
- 水を多量に飲む多飲症状
- 色の薄い大量の尿
実際に、ヨークシャー・テリアの死因第1位が泌尿器の病気であることからも、この疾患への注意深い観察が必要です。
ヨークシャー・テリアの皮膚病と関節の病気
皮膚疾患では膿皮症が最も多く見られる病気です。ブドウ球菌の異常繁殖により皮膚が化膿し、以下の症状が現れます。
- かゆみを伴う脱毛
- かさぶたや膿疱の形成
- リング状の赤い発疹
- フケの増加
特に背中、お腹、股、指の間、耳の後ろに症状が現れやすく、高温多湿の環境で発症しやすいため、適切な温度・湿度管理と定期的なシャンプーによる清潔維持が予防に効果的です。
関節疾患では膝蓋骨脱臼(パテラ)が小型犬特有の病気として知られています。膝の皿の骨が正常な位置から外れる疾患で、ヨークシャー・テリアでは膝蓋骨が内側に外れるケースがほとんどです。
症状の特徴。
- 後ろ足を地面につけない
- 関節が伸ばせない
- 歩行異常やびっこを引く
先天性の骨格異常のほか、肥満や高所からの転落などが原因となるため、体重管理と安全な環境作りが重要です。
ヨークシャー・テリアの心臓病と呼吸器の病気
ヨークシャー・テリアで特に注意すべき循環器疾患が僧帽弁閉鎖不全症です。左心房と左心室の間にある僧帽弁がうまく閉じなくなることで血液の逆流が起こり、心臓に負担をかける病気です。
シニア期に発症しやすく、初期症状として心雑音や軽い咳が見られますが、進行すると呼吸困難や失神を起こす可能性があります。薬物療法による管理が一般的で、肥満を避け激しい運動を控えることが予防につながります。
呼吸器系では気管虚脱が深刻な問題となっています。首の気管がつぶれた状態になり正常な呼吸が困難になる疾患で、小型犬に多発します。
特徴的な症状。
- 興奮時に「ガーガー」という乾いた咳
- アヒルや水鳥のような鳴き声
- 呼吸困難とチアノーゼ(舌や歯茎が青紫色に変化)
遺伝的要因、老化、肥満が原因とされており、特に肥満による脂肪が気管を圧迫するケースでは、ダイエットによる改善が期待できます。チアノーゼは命に関わる危険な状態のため、症状を確認したら緊急受診が必要です。
また、門脈シャントも1歳未満で発症することが多い先天性疾患です。本来肝臓で解毒されるべきアンモニアが全身に回ってしまい、食欲不振、下痢、嘔吐、けいれんなどの神経症状を引き起こします。
ヨークシャー・テリアの病気予防と早期発見のコツ
ヨークシャー・テリアの健康を守るためには、日常的な観察と予防的なケアが欠かせません。以下の健康管理ポイントを実践することで、多くの病気を予防または早期発見できます。
日常観察のチェックポイント:
- 排尿・排便の状態と回数の変化
- 食事量と体重の推移
- 目やにの色や量、眼の開き具合
- 皮膚の赤みやかゆみの有無
- 歩き方や関節の動きの異常
- 呼吸の状態と咳の有無
予防的ケアの重要項目:
- 適正体重の維持(肥満は多くの疾患リスクを高める)
- 床に滑り止めマットの設置(関節疾患予防)
- 定期的な歯磨きと口腔ケア
- 高温多湿を避けた室内環境の整備
- ハーネスの使用(首への負担軽減)
特に注目すべきは、ヨークシャー・テリアの平均寿命は13.8歳とされており、適切な健康管理により健康寿命を延ばすことが可能です。年2回の健康診断により血液検査や尿検査を実施し、無症状の段階での異常値検出が重要となります。
シニア期(7歳以降)では、心臓病や腎臓病のリスクが急激に高まるため、より頻繁な健康チェックと早期治療開始が愛犬の生活の質向上につながります。愛犬の小さな変化も見逃さず、気になる症状があれば迷わず獣医師に相談することが、長く健康な生活を送るための最も確実な方法です。