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外耳炎(犬)症状と治療方法の完全ガイド

外耳炎(犬)症状と治療方法

犬の外耳炎の基本
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発症率が高い

外耳炎は犬がかかる一般的な疾患で、多くの犬が生涯に一度は経験する

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犬種による差

垂れ耳や耳道が狭い犬種は特に発症リスクが高い

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早期発見が重要

早期に症状を見つけて適切な治療を行うことで重症化を防げる

外耳炎の基本知識と犬の耳の構造について

犬の外耳炎は、外耳道に炎症が生じる一般的な疾患で、多くの犬が生涯のうちに一度は経験するとされています。外耳炎を理解するには、まず犬の耳の構造を知ることが重要です。

犬の耳は主に外耳、中耳、内耳の3つの部分から構成されています。外耳は外から見える耳介(耳の突出した部分)と外耳道(耳の穴から鼓膜までの管状構造)を含みます。外耳炎とは、この外耳部分に炎症が生じる状態を指します。

犬の外耳道はL字型の特徴的な形状をしており、耳の入り口から縦方向に伸びる垂直耳道と、その奥から鼓膜まで横方向に延びる水平耳道があります。この構造が、外部の空気の流れを制限し、湿度が高くなりやすい環境を作り出します。一般的に外耳道の長さは3〜7cm、太さは0.3〜0.8cmほどです。

外耳道の皮膚には耳垢腺と呼ばれる汗腺や脂腺があり、そこから分泌される汗や脂質が皮膚表面の角質と混ざり合って耳垢となります。健康な状態でも、この耳垢には少量の細菌や酵母菌(マラセチアなど)が含まれていますが、何らかの原因で外耳道内の環境が変化すると、これらの微生物が過剰に増殖して炎症を引き起こすことがあります。

外耳炎には急性と慢性の2種類があります。急性外耳炎は突然症状が現れ、適切な処置で比較的短期間で改善することが多いです。一方、慢性外耳炎はゆっくりと進行し、長期間にわたって症状が続くもので、完治が難しく再発しやすい傾向があります。

外耳炎の主な症状と早期発見のポイント

外耳炎の症状は様々ですが、早期に発見することで治療がスムーズに進み、犬の苦痛を軽減できます。以下に主な症状とチェックポイントをご紹介します。

【主な症状】

  • 耳をしきりに掻く、頭を振る動作
  • 耳を床や家具にこすりつける行動
  • 耳の中や周囲の赤み・腫れ
  • 黄色、黒色、茶色などの異常な耳垢の増加
  • 耳からの悪臭
  • 耳を触られることを嫌がる(痛みがある証拠)
  • 頭を傾ける動作(特に重症の場合)

【チェックポイント】

愛犬の耳の状態を定期的にチェックすることが大切です。特に以下のポイントに注意してください。

1️⃣ 耳の色:健康な耳の内側はピンク色で、赤みや腫れがないことが正常です。

2️⃣ 耳垢の状態:少量の薄茶色の耳垢は正常ですが、黒色や黄色の耳垢が多量にある場合は注意が必要です。

3️⃣ 臭い:健康な耳からは強い臭いがしません。不快な臭いがする場合は、細菌感染の可能性があります。

4️⃣ 痛みの反応:耳を優しく触った際に痛がる様子や不快感を示す場合は、炎症が疑われます。

特に注意すべきは、外耳炎が悪化した場合に起こる可能性のある二次的な症状です。

  • 耳血腫:耳を激しく掻くことにより、耳介(特に内側)に血腫ができることがあります。
  • 斜頸(首を傾ける状態):外耳炎が中耳まで進行すると、平衡感覚に影響を与え、首を傾ける症状が現れます。
  • 耳道の肥厚と閉塞:重度の外耳炎を繰り返すと、耳道の壁が厚くなり狭くなります。最悪の場合、耳道が塞がって手術が必要になることもあります。

これらの症状が見られた場合は、早急に獣医師の診察を受けることが重要です。外耳炎は放置すると悪化し、治療が難しくなるだけでなく、犬に大きな苦痛を与える可能性があります。

外耳炎の原因と犬種別の特徴

外耳炎の原因は多岐にわたり、単一の要因だけでなく、複数の要因が組み合わさって発症することも少なくありません。主な原因について詳しく見ていきましょう。

【アレルギー性要因】

犬の外耳炎の約半数はアレルギー性皮膚炎に起因しているという報告があります。アトピー性皮膚炎や食物アレルギー、接触性アレルギーなどが原因で、体全体の痒みと同時に両側の耳にも症状が現れます。アレルギーによって皮膚のバリア機能が低下し、細菌や酵母菌などの感染を繰り返すことが特徴です。

【感染症】

  • 細菌感染:外耳道に常在する細菌が環境変化により過剰に増殖することで炎症を引き起こします。
  • 真菌感染:特にマラセチア(酵母菌の一種)による感染が多く、黒色の耳垢増加と強い臭いが特徴です。
  • 寄生虫:ミミヒゼンダニなどの寄生虫が耳に感染すると、激しい痒みと黒色の耳垢が増えます(ミミダニ症)。

【異物】

草むらで遊ぶ犬では、イネ科植物の穂や小さな草、石などが耳に入り込むことがあります。これにより突然の頭振りや片方の耳を掻く行動が見られます。

【解剖学的・構造的要因】

犬種によって耳の構造が異なるため、外耳炎のリスクも変わってきます。特に以下の犬種は要注意です。

  • 耳道が狭い犬種:パグ、チワワなど
  • 外耳道に被毛が生えやすい犬種:プードル、シーズー、マルチーズなど
  • 耳垢腺が多い犬種:コッカースパニエル、ラブラドールレトリーバーなど
  • 垂れ耳の犬種:コッカースパニエル、シーズーなど

垂れ耳の犬種は特に通気性が悪く、湿度が高くなりやすいため、細菌やマラセチアの繁殖に適した環境になりやすいです。また、一部の犬種では遺伝的に耳垢の分泌量が多いことも外耳炎のリスク要因となります。

【その他の要因】

  • 不適切な耳のケア:過剰な洗浄や不適切な耳掃除により外耳道を傷つけることがあります。
  • 内分泌疾患:甲状腺機能低下症副腎皮質機能亢進症などが皮膚や免疫機能に影響を与えます。
  • 腫瘍や炎症性ポリープ:外耳道内に発生すると外耳炎の原因となることがあります。
  • 免疫介在性疾患:自己免疫疾患により外耳道に炎症が生じることがあります。

【犬種別の特徴】

コッカースパニエルは耳道内の腺が活発で耳垢の産生が多く、また垂れ耳のため通気性が悪いことから、特に外耳炎のリスクが高いとされています。シーズーやプードルなどの耳内に毛が生えやすい犬種も同様です。一方、ラブラドールレトリーバーはアトピー性皮膚炎を発症しやすく、それに伴う外耳炎のリスクがあります。

外耳炎の効果的な治療法と自宅でのケア方法

外耳炎の治療は、原因や症状の程度によって異なりますが、基本的な治療アプローチと自宅でできるケアについて解説します。

【獣医師による治療】

外耳炎の正確な診断と治療には獣医師の専門的な知識が不可欠です。治療の基本的な流れは以下の通りです。

  1. 診断:獣医師は耳鏡を使用して外耳道の状態を観察します。必要に応じて耳垢を採取し、顕微鏡で観察する耳垢検査を行います。重度の外耳炎や再発を繰り返す場合は、細菌培養検査や薬剤感受性試験を実施することもあります。
  2. 耳の洗浄:鼓膜の損傷がなく、重度の痛みや腫れがない場合、獣医師が専用の洗浄液を使用して外耳道の洗浄を行います。これにより耳垢や炎症物質、細菌などを除去します。
  3. 薬物療法。
    • 点耳薬:抗生物質、抗真菌薬、抗炎症薬(ステロイド)などが配合された薬剤を処方します。
    • 全身療法:重度の炎症や広範囲の感染がある場合は、内服薬や注射による治療を行うこともあります。
    • 特殊治療:ミミダニ症の場合は駆虫薬を使用します。
  4. 異物除去:外耳道に異物が確認された場合は、専用の器具を用いて除去します。難しい場合は、鎮静下または全身麻酔下で処置を行うことがあります。
  5. 外科的処置:慢性的な外耳炎で耳道が狭窄している場合や、腫瘍がある場合には外科手術が必要となることもあります。

【自宅でのケア方法】

獣医師の指導のもと、以下のようなケアを自宅で行うことができます。

  • 適切な耳の洗浄:獣医師から指示された洗浄液を用いて、定期的に耳のケアを行います。綿棒は奥まで入れず、外側の部分のみを優しく拭きます。
  • 薬の正しい使用方法。
  1. 犬を落ち着かせ、リラックスさせる
  2. 耳を優しく広げ、指示された量の薬剤を点耳する
  3. 耳の根元を優しくマッサージして薬剤を広げる
  4. 犬が頭を振るのを待ってから余分な薬剤をふき取る
  • 環境管理。
  • 耳を清潔で乾燥した状態に保つ
  • 水泳後は必ず耳を乾燥させる
  • アレルギーが原因の場合、アレルゲンとなる物質を避ける

【治療期間と注意点】

外耳炎の治療は通常、1〜2週間程度継続します。しかし、慢性的な外耳炎や根本原因(特にアレルギー)がある場合は、長期的な管理が必要になることがあります。

治療中の注意点として、以下のことが挙げられます。

  • 処方された薬は指示通りの期間、用法用量を守って使用する
  • 症状が改善しても、獣医師の指示なく治療を中断