犬舌とは愛犬の健康を守る重要な器官
犬舌の基本的な役割と機能
犬の舌は、人間の指先のような器用さを持つ重要な器官です。舌のほとんどが筋肉で構成されており、複数の筋肉が組み合わさることで様々な方向に細かく動かすことが可能となっています。
犬舌の主な機能には以下があります。
- 体温調節機能:犬は人間のように全身で汗をかけないため、舌を出してハァハァと呼吸することで体温を下げます
- 食事機能:食べ物を口の中で動かしたり、噛んだりする際に重要な役割を果たします
- 水分摂取:舌をカップのようにして水をすくい上げることで効率的に水分を摂取します
- 情報収集:唾液に溶け込んだ化学物質から味やニオイといった情報を得ています
特に注目すべきは、犬が水を飲む際の独特な方法です。人間は舌の表面で水をすくうイメージがありますが、犬は実際には舌の裏側を使って水をすくっています。これは、舌の表面が滑らかな構造になっているため、表面では水が跳ねてしまうからです。
犬舌の色で分かる健康状態
犬の舌は「健康のバロメーター」と呼ばれるほど、健康状態を把握するための重要な指標となります。正常な犬の舌は濃いピンク色から少し赤みがかった色をしていますが、色の変化によって様々な病気の兆候を発見できます。
正常な舌の色と異常な色の見分け方
舌の色 | 健康状態 | 考えられる病気 |
---|---|---|
濃いピンク〜赤 | 正常 | – |
白っぽい | 異常 | 貧血、低血糖、酸欠 |
黄色 | 異常 | 黄疸(肝臓疾患) |
紫・青白い | 異常 | チアノーゼ(呼吸器・循環器疾患) |
チアノーゼは血中の酸素濃度が低下した際の症状で、呼吸器や循環器、神経系などに異常が起こり、正常に酸素を取り入れることができていない状態を示します。このような色の変化が見られた場合は、すぐに動物病院を受診する必要があります。
また、健康な犬でも舌斑(ぜっぱん)と呼ばれる青・紫・黒などの斑点がついている場合があります。これは生まれつきのもので、特に北海道犬や甲斐犬などの日本犬に多く見られる特徴です。
犬舌が出っぱなしになる理由
愛犬の舌がちょろっと出ていることを見たことがある飼い主さんは約6割にのぼります。この現象には様々な理由があり、必ずしも病気を意味するものではありません。
犬の舌が出る主な理由
- 口や舌の力が抜けているとき:リラックスしている状態や睡眠時によく見られます
- かみ合わせの問題:歯並びが悪い場合に舌が収まりきらないことがあります
- 歯がない場合:高齢犬で歯が抜けた場合に舌を支える構造がなくなります
- 骨格的な特徴:マズルが短かったり、舌が長い犬種では物理的に舌が出やすくなります
短頭種(フレンチブルドッグ、パグ、シーズーなど)では、マズルの短さによって舌が収まりきらず、常に少し出ている状態が見られることがあります。これは犬種特有の特徴であり、健康上の問題がないケースが多いです。
ただし、食事が食べづらそうな様子が見られる場合は、飼い主が配慮してあげることが重要です。ウエットフードに変更したり、ドライフードの粒のサイズを調整するなど、愛犬が食べやすい形状のものを選択してあげましょう。
犬舌の意外な特徴と人間との違い
犬の舌には、人間とは大きく異なる興味深い特徴があります。最も注目すべきは味覚の感度の違いです。
味覚の違い
犬の味覚を感じる「味蕾」というセンサーは、人間と比べてほんの5分の1程度の機能しかありません。しかし、すべての味に対して鈍感というわけではなく、特定の味に対しては敏感に反応します。
- 甘味:犬は甘いものに対して敏感で、甘いおやつを喜んで食べる理由がここにあります
- 苦味:苦みのある薬を拒否するのは、苦味に対する過敏な反応です
- 塩味:犬は塩味に対しては比較的鈍感です
この味覚の特徴は、犬が古来より生き抜くための手段として「なんでも食べる」「とりあえず食べる」という習性を持っているためです。舌は食事を細かく味わうよりも、食事を運び込む機能の方が優勢になっています。
コミュニケーション機能
犬は舌を使って様々な感情を表現します。
- 愛情表現:飼い主を舐めることで「大好き」という感情を伝えます
- 謝罪のサイン:何か悪いことをした後に手を舐めて「怒らないで」という気持ちを表現します
- ストレス発散:不安や困った時に自分の手を舐めて気持ちを落ち着かせます
犬舌に関する病気のサインと対処法
愛犬が舌を出している時に注意すべき病気のサインを理解することは、早期発見・早期治療につながります。
注意すべき病気とその症状
🔥 熱中症
特に5〜10月は熱中症になりやすい時期です。犬は体温調節が追いつかないため、ずっと舌を出した状態になることがあります。地面と近い距離にいる犬は、アスファルトの照り返しが強く、体温が上昇しやすいため注意が必要です。
💓 僧帽弁閉鎖不全症
心臓病は犬の死因のトップ2に入る重要な疾患です。小型犬がかかりやすい病気で、お座りをした状態で舌を出して荒い呼吸をしている場合は要注意です。心不全や肺水腫などの病気に繋がることもあるため、早期の診断が重要です。
⚡ てんかん
発作時に舌を出すことがあります。意識を失ったり、けいれんを起こしたりする症状と併せて観察することが大切です。
🫁 気管虚脱
特に小型犬に多い疾患で、気管が潰れることで呼吸困難を起こします。ガーガーという特徴的な咳と共に舌を出すことがあります。
日常的な健康チェックポイント
愛犬の舌の健康状態を日常的にチェックするためのポイントをまとめました。
- 舌の色を1日1回は観察する習慣をつける
- 舌を出している時間が異常に長くないかチェックする
- 食事の際に舌の動きに異常がないか確認する
- 水を飲む時の舌の使い方に変化がないか観察する
- 舌の表面に傷や腫れがないか定期的に確認する
犬の舌に関する獣医師監修の詳細な健康チェック方法については、こちらの専門サイトをご参照ください。
https://dog.benesse.ne.jp/withdog/content/?id=143609
犬の舌は単なる食事のための器官ではなく、健康状態を示す重要なバロメーターです。日頃から愛犬の舌の状態に注意を払い、異常を感じた場合は迷わず獣医師に相談することで、愛犬の健康を守ることができます。特に色の変化は緊急性の高い症状の可能性があるため、普段の舌の色を把握しておくことが大切です。