ブドウ膜炎犬の症状原因治療予防
ブドウ膜炎犬の初期症状と見分け方
犬のブドウ膜炎で最も特徴的な初期症状は縮瞳(瞳孔が小さくなる)です。片目に発症している場合は、左右の瞳孔の大きさを比較することで異常を発見できます。
初期症状として以下のような変化が現れます。
- 涙の量が増える – 普段より涙を多く流すようになる
- 白目の充血 – 黒目の周りの白目部分が赤くなる
- 羞明(眩しがり) – 明るい場所で目を細めたり、瞬きが増える
- 目やにの増加 – いつもより目やにが多く出る
- 目をしょぼしょぼさせる – 痛みにより目を開けたがらない
🔍 見分けのポイント
結膜炎との違いは、ブドウ膜炎では瞳孔の異常(縮瞳や散瞳不良)が見られることです。また、角膜が白っぽく濁る角膜浮腫も特徴的な症状の一つです。
進行すると虹彩の色や形の変化、前房(瞳孔の前の空間)が白くかすんで見える前房フレア、重症例では前房蓄膿(白い液体が溜まる)なども観察されます。
ブドウ膜炎犬の主な原因と発症メカニズム
犬のブドウ膜炎の原因は非常に多様で、特発性(原因不明)と免疫介在性が最も多いとされています。
感染性原因には以下があります。
非感染性原因。
🧬 遺伝的素因
ゴールデン・レトリーバーでは色素性ブドウ膜炎が特に多く見られます。また、秋田犬、ミニチュアダックスフンド、サモエド、シベリアンハスキーなどは遺伝的にブドウ膜炎を発症しやすい犬種です。
注目すべきは、混合ワクチン接種後数週間でブドウ膜炎を発症するケースがあることです。これはアデノウイルス抗原に対する免疫反応によるものと考えられています。
ブドウ膜炎犬の最新治療法と薬物療法
ブドウ膜炎の治療は原因治療と症状治療の両面から行われます。治療の成功には早期診断と迅速な治療開始が不可欠です。
抗炎症治療が治療の中核となります。
- ステロイド性抗炎症薬 – 点眼薬と全身投与
- 非ステロイド性抗炎症薬 – 点眼薬と全身投与
- 免疫抑制薬 – 点眼薬と全身投与
補助治療薬。
- アトロピン点眼薬 – 疼痛緩和と抗炎症作用
- 抗生剤 – 感染性原因への対応
- 抗真菌剤 – 真菌感染が疑われる場合
⚠️ 治療上の注意点
アトロピン使用前には必ず眼圧測定が必要です。なぜなら、アトロピンは緑内障を誘発または悪化させる可能性があるためです。
水晶体起因性ブドウ膜炎の特別な対応
白内障が進行して水晶体のタンパク質が漏出すると、それに対する免疫反応でブドウ膜炎が発症します。この場合、根本的な治療には白内障手術が必要になる場合があります。
治療効果は症例により大きく異なり、速やかに改善する場合もあれば、急激に悪化することもあります。そのため、治療中は頻繁な経過観察が必要です。
ブドウ膜炎犬の合併症と緑内障リスク
ブドウ膜炎の最も深刻な合併症は緑内障の併発です。これが失明の主要な原因となるため、予防と早期発見が極めて重要です。
緑内障併発のメカニズム。
- 炎症により房水(眼内液)の流出が阻害される
- 眼圧上昇により視神経が圧迫される
- 不可逆的な視覚障害が進行する
その他の重要な合併症。
- 網膜剥離 – 炎症が網膜に波及した場合
- 白内障の進行 – 慢性炎症により水晶体が混濁
- 角膜浮腫 – 角膜の透明性低下
- 虹彩萎縮 – 虹彩の形状変化
📊 合併症早期発見のチェックポイント
症状 | 重要度 | 対処法 |
---|---|---|
瞳孔の大きさの変化 | 高 | 即座に受診 |
角膜の白濁進行 | 高 | 眼圧測定必要 |
視覚反応の低下 | 最高 | 緊急受診 |
後部ブドウ膜への波及
前部ブドウ膜炎(虹彩・毛様体)が後部ブドウ膜(脈絡膜)に波及すると、脈絡膜網膜炎を引き起こします。脈絡膜と網膜は隣接しているため、脈絡膜の炎症は容易に網膜に波及し、視覚障害のリスクが格段に高くなります。
治療においては、後部ブドウ膜への効果を得るためには全身投与が必要になります。点眼薬だけでは後部ブドウ膜への薬物濃度が十分に得られないためです。
ブドウ膜炎犬の効果的な予防対策と日常ケア
ブドウ膜炎の予防には、原因に応じた包括的なアプローチが必要です。完全な予防は困難ですが、リスクを大幅に減らすことは可能です。
基本的な予防対策。
🧼 目の清潔管理
散歩後は洗眼用点眼液で湿らせたコットンや犬用ウェットコットンで目周りを清拭します。これにより細菌や異物による感染リスクを低減できます。
💉 適切なワクチン接種
- 狂犬病ワクチン – 法的義務があり、狂犬病による脳炎からの続発性ブドウ膜炎を予防
- 混合ワクチン – ジステンパーウイルス、アデノウイルス感染症などを予防
- レプトスピラワクチン – レプトスピラ感染による眼症状を予防
⚠️ ワクチン接種後の注意
混合ワクチン接種後数週間はブドウ膜炎発症のリスクがあるため、目の症状に注意深く観察することが重要です。
環境管理による外傷予防。
- 室内の角のある家具にクッション材を設置
- 散歩時の枝や草による目への刺激を避ける
- 他の犬との激しい遊びでの事故防止
- 車の急停車時の前方への衝撃防止
寄生虫予防。
フィラリア予防薬の定期投与により、フィラリアの眼内侵入によるブドウ膜炎を防げます。この予防対策は特に重要で、確実な実施が推奨されます。
早期発見のための観察ポイント。
- 毎日の散歩前後での瞳孔サイズの確認
- 涙の量や目やにの変化の記録
- 明るい場所での反応の観察
- 片側性症状の有無のチェック
高リスク犬種への特別な配慮。
遺伝的素因のある犬種(秋田犬、ミニチュアダックスフンド、サモエド、シベリアンハスキー、ゴールデン・レトリーバー)では、6ヶ月に1回程度の眼科検診が推奨されます。
参考:犬のブドウ膜炎の詳細な診断方法について
https://www.senju.co.jp/animal/owner/budou.html
参考:ブドウ膜炎の治療費用と保険適用について
https://www.fpc-pet.co.jp/dog/disease/25
参考:眼科専門医による詳しい診断と治療選択肢