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ベナゼプリルと犬の心臓病治療の完全ガイド

ベナゼプリルと犬の心臓病治療

ベナゼプリルの基本的効果と特徴
💊

ACE阻害による血管拡張

血管を広げて心臓の負荷を軽減し、血圧を下げます

🫀

心筋保護と利尿作用

心臓の線維化を防ぎ、体内の余分な水分を排出します

🎯

僧帽弁閉鎖不全に特化

犬の最も一般的な心臓病に対する第一選択薬です

ベナゼプリルの作用機序と犬への効果

ベナゼプリル塩酸塩は、犬の心臓病治療で広く使用されているACE阻害薬(アンジオテンシン変換酵素阻害薬)です 。この薬剤は、血中及び組織中のアンジオテンシン変換酵素(ACE)活性を特異的に阻害し、アンジオテンシンⅡの生成を抑制することで治療効果を発揮します 。

参考)https://vet.cygni.co.jp/include_html/pdf/attachment/DY019600.pdf

犬の僧帽弁閉鎖不全による慢性心不全において、ベナゼプリルは以下の効果を示します :

  • 血管拡張作用:血管を広げることで血流を改善し、心臓の負担を軽減
  • 利尿作用:体内の余分な水分を排出し、心臓への負荷を減少
  • 心筋保護作用:心臓の肥大や線維化を抑制し、心機能の悪化を防止
  • 心拍出量の増加:心臓のポンプ機能を改善

興味深いことに、ベナゼプリルは元来ヘビの毒(獲物に噛みついて毒液を注入し血圧を下げる)をヒントに合成されたユニークな薬剤です 。この特殊な起源により、他の薬剤にはない独特の薬理作用を持っています。

参考)心臓の薬|動物病院デーリー

ベナゼプリルの適切な投与量と犬の体重別使用法

犬に対するベナゼプリルの投与量は、体重1kg当たりベナゼプリル塩酸塩として0.25mg~1.0mgを1日1回経口投与することが標準です 。具体的な体重別投与量は以下のとおりです :

参考)ベナゼハート錠2.5/5

ベナゼプリル2.5mg錠の場合

  • 1.25kg以上2.5kg未満:1/2錠
  • 2.5kg以上10.0kg未満:1錠
  • 10.0kg以上20.0kg未満:2錠
  • 20.0kg以上30.0kg未満:3錠
  • 30.0kg以上40.0kg未満:4錠

ベナゼプリル5mg錠の場合

  • 2.5kg以上10.0kg未満:1/2錠
  • 10.0kg以上20.0kg未満:1錠
  • 20.0kg以上30.0kg未満:1-1/2錠
  • 30.0kg以上40.0kg未満:2錠

投与に際しては、特に初回投与後の降圧作用による虚脱やふらつきに注意が必要です 。飼い主への適切な観察指導が重要な要素となります 。

参考)https://www.vmdp.jp/products/benazeheart/pamphlet01.pdf

ベナゼプリルの副作用と犬での注意点

ベナゼプリルの投与により、犬では以下の副作用が報告されています 。主な副作用として:

参考)動物医薬品検査所/塩酸ベナゼプリル

  • 消化器系:嘔吐、軟便、下痢が時に見られる
  • 循環器系:薬理作用としての降圧により虚脱やふらつきが現れることがある
  • 全身症状:元気消失(報告例あり)

農林水産省動物医薬品検査所の副作用情報では、2001年2月に犬(雌、慢性心不全)で5mg投与後に元気消失の報告があります 。ただし、この症例は無処置で治癒しており、重篤な副作用ではありませんでした 。
特に注意すべき点として、ベナゼハート錠には魚由来のペプチドが含まれているため、魚アレルギーを持つ犬では注意が必要です 。また、他の血圧降下剤(利尿剤、ベータ遮断剤、カルシウム拮抗剤)や降圧作用のある麻酔剤と併用すると効果が高まる可能性があります 。

ベナゼプリルとピモベンダンの併用による犬心不全治療

現代の犬心不全治療では、ベナゼプリルとピモベンダンの併用が標準的な治療法となっています 。この2剤の組み合わせは、それぞれが異なる作用機序で心臓をサポートするため、相乗効果が期待できます。

参考)icon-expand

ベナゼプリルは血管拡張により心臓の負荷を軽減する一方で、ピモベンダンは心筋の収縮力を高めて血液を全身に送る効果を持ちます 。ピモベンダンは強心剤でありながら血管を拡げる作用も併せ持つため、心臓に負担をかけにくい「省エネ」な働きで心機能をサポートします 。

参考)犬の僧帽弁閉鎖不全症の薬による治療|ピモベンダンについて獣医…

日本初のベナゼプリル塩酸塩とピモベンダンの配合剤「フォルテコールプラス」も開発されており、犬の僧帽弁閉鎖不全による慢性心不全治療の選択肢が拡大しています 。この配合剤により、投薬の簡便性と治療効果の向上が期待されています。
QUEST研究では、自然発症した粘液腫様変性性僧帽弁閉鎖不全症によるうっ血性心不全の犬において、ピモベンダンまたはベナゼプリルの生存期間への影響が検討されており、両薬剤の重要性が科学的に裏付けられています 。

参考)https://www.semanticscholar.org/paper/4b06a0c1b311a3bced54a63e246a5872b0a1c5f1

ベナゼプリル治療における犬の独特な生理学的考慮事項

犬におけるベナゼプリル治療では、人間や他の動物とは異なる独特な生理学的特性を理解することが重要です。犬は人間と比較して、心拍数が高く(小型犬で毎分100-160回)、体表面積に対する心拍出量の比率が異なります。

犬の僧帽弁閉鎖不全症は、特に小型犬種(チワワキャバリアマルチーズ、プードルなど)で高い発症率を示し、7歳以上の高齢小型犬では約30%が罹患しています 。この高い罹患率は、犬種特有の遺伝的素因と関連していると考えられています。
興味深い点として、犬では猫と異なり、ベナゼプリルは主に心疾患治療に使用され、腎疾患への適応は限定的です 。これは犬と猫のレニン・アンジオテンシン・アルドステロン(RAA)系の活性度や、腎糸球体への影響の違いによるものです。

参考)イヌの腎臓病の際に使用する薬剤について

犬の心不全治療では、早期発見と適切な治療開始タイミングが予後を大きく左右します 。ベナゼプリルは症状の軽減だけでなく、進行を遅らせ寿命を延長する効果が確認されており、予防的投与の概念も重要視されています。
また、犬の心不全治療における食事管理の重要性も見逃せません 。減塩・低脂肪などの心臓に優しい食餌への変更や、激しい運動の制限など、薬物療法と並行した総合的な管理が治療成功の鍵となります 。

参考)https://dog-heart.info/con004.html