ヘマトクリット値と犬の健康状態
ヘマトクリット値の基礎知識と測定意義
ヘマトクリット値は、血液中に占める赤血球の容積の割合をパーセント(%)で表した重要な血液検査項目です。この値は「血液の濃度」を示し、犬の健康状態を把握するための基本的な指標として広く活用されています。
参考)【基準範囲と臨床判断値】基準値を超えていますが うちの子病気…
犬の正常なヘマトクリット値は一般的に37〜55%とされていますが、測定機器や検査施設により若干の違いがあります。この数値は、血液全体に対する赤血球の割合を示しており、酸素を全身に運搬する赤血球の量を間接的に評価することができます。
参考)全血球計算 参考基準値
血液検査では、ヘマトクリット値と併せて赤血球数やヘモグロビン濃度も同時に測定されることが多く、これらの数値を総合的に判断することで、より正確な健康状態の評価が可能となります。
参考)犬の貧血|原因や症状、治療法を解説!【獣医師監修】 – 犬と…
犬の品種による正常値の違いと個体差
興味深いことに、犬種によってヘマトクリット値の正常範囲に違いがあることが知られています。特に注目すべきはミニチュア・ダックスフンドで、健康な状態でもヘマトクリット値が60%近くまで上昇することがあります。
参考)https://ameblo.jp/minatomati9582/entry-12889629571.html
この品種特異的な差異は、遺伝的要因によるものと考えられており、基準範囲を超えていても必ずしも病気を意味するわけではありません。したがって、検査結果の解釈には品種差を考慮することが重要です。
参考)https://www.mdpi.com/2076-2615/10/7/1212
年齢による変化も重要な要因の一つです。幼犬では成犬とは異なる正常値を示すことが多く、成長に伴って徐々に成犬の値に近づいていきます。また、健診の重要性として、個体ごとの「普段の値」を把握することで、わずかな変化も早期に発見できる可能性があります。
ヘマトクリット値が異常を示す病気と原因
ヘマトクリット値の低下は貧血の主要な指標です。犬では37%未満、重度の場合は18%未満になると治療が必要とされます。貧血を引き起こす主な原因には以下のようなものがあります:
参考)貧血、健康診断のメリット – こんない動物病院のホームページ
🩸 出血性貧血:外傷、内臓出血、寄生虫感染による血液喪失
🧬 免疫介在性溶血性貧血(IMHA):自己免疫により赤血球が破壊される重篤な疾患
🦠 感染症:バベシア症、レプトスピラ症などの血液寄生虫感染
参考)https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC4727263/
☢️ 中毒:タマネギ類の摂取によるハインツ小体性貧血
一方、ヘマトクリット値の上昇は多血症を示唆します。これには脱水による相対的な増加と、赤血球が実際に増えている真性多血症があります。脱水以外では、慢性的な酸素不足や骨髄の異常などが原因となることがあります。
血液検査時の注意点と測定方法
正確なヘマトクリット値を得るためには、採血前の準備と注意点があります。検査前は激しい運動を避け、犬を興奮させない状態で来院することが重要です。また、食事の直後は血糖値などの他の検査項目に影響するため、空腹時での検査が推奨される場合もあります。
参考)犬と猫の血液検査について┃病気の早期発見に役立つ- 横須賀市…
測定方法としては、自動血球計算装置による測定と、ヘマトクリット毛細管を用いた直接測定法があります。毛細管法では、遠心分離により血液を血球層と血漿層に分離し、血球層の割合を直接測定します。
参考)フィラリア検査:ヘマトクリット法 / 清美どうぶつ病院
この検査は、フィラリア症の診断においても重要な役割を果たします。遠心分離後のバフィーコート(白血球層)と血漿の境界部分で、ミクロフィラリアの検出が可能となるためです。
ヘマトクリット値から読み取る犬の健康維持戦略
定期的な血液検査によるヘマトクリット値のモニタリングは、愛犬の健康維持において極めて重要です。特に以下の点に注意を払うことが推奨されます:
📅 定期健診の実施:年1〜2回の血液検査で基準値を把握し、異常の早期発見に努める
🔍 症状の観察:元気消失、食欲不振、歯茎の色の変化などの貧血症状に注意
⚠️ 緊急時の対応:赤色尿や黄疸症状が見られた場合は即座に獣医師に相談
また、ヘマトクリット値は他の血液検査項目と合わせて総合的に判断することが重要です。単独の数値だけでなく、赤血球数、ヘモグロビン濃度、白血球数、血小板数なども同時に評価することで、より正確な健康状態の把握が可能となります。
愛犬の品種特性を理解し、個体差を考慮した健康管理を行うことで、病気の早期発見と適切な治療につなげることができます。獣医師との定期的なコミュニケーションを通じて、最適な健康管理プランを立てることが、愛犬の健康で長い生活を支える基盤となります。